13、甘い手
日番谷君の手は甘い
あ、別に舐めたら甘いっていう意味じゃないんだよ?
何て言うのかな・・・優しいって言うのかな・・・
そっと髪を撫でてくれる手つきとか
不安な時手を握ってくれることとか
心が甘くてトロトロしちゃいそうになるの
こんなこと思っちゃう私っておかしいのかな?
日番谷君はよく私から甘い匂いがするっていうけど、それとは違うのかな?
香とは違う匂いだとは思うんだけど・・・
だって、日番谷君、匂いのキツイ香水とか好きじゃないみたいだし
よく分かんないよ
前に乱菊さんに聞いてみたら
『ご馳走様』
て、言われたし
一体どういう意味なんだろう・・・?
「日番谷君の手って甘いよね・・・。」
「は?」
思わず私の口からこぼれてしまった言葉に向かい合わせに腰掛けていた日番谷君が不思議そうな顔をした。今、私と日番谷君は非番を利用して甘味処に来ている。私が注文したのは餡蜜で、日番谷君が注文したのはみたらし団子。実際、日番谷君は私の目の前でお団子を食べている。というか、串を手に持っている状態だし。
「・・・ああ、タレか。」
そして日番谷君は私の呟きを手についたお団子のタレを指していると思ったらしく、手にしていた串をお皿に戻すと、指とかについたタレを舐め始めた。親指、人差し指、中指。先端から第二関節まで日番谷君がゆっくりと舌を這わせていく・・・。
どうしよう。どうしちゃったんだろう。日番谷君の動作から目を離せない。彼の舌の動きを、舐められていくその手を見つめてしまう。何で何で?ドキドキしてる。私、ドキドキしている。胸が熱いよ。溶けちゃいそうだよ。身体の奥がジンジンしてる。まるで夜に日番谷君に触れられた時みたいに。
そう、日番谷君と一緒の夜は甘い
彼の手が普段とは違う意味で甘い・・・気がする
頬のラインを辿る手の先
肌を探る手の平
重ねた手は熱くて
絡めた指は力強くて
日番谷君の触れる全てが熱くて甘くて
私はトロトロに溶けていく
思考が溶けて
身体の芯が溶け出して
グチャグチャになって
甘さに呑まれた私は彼の名前を叫ぶばかり
彼の手は私に甘さを植え付けて
さらにそれを広げて
何もかもを甘い感覚へと変えていく
「どうした、雛森、顔、赤いぞ?」
ベタベタしたタレを舐め終わり、またみたらし団子を食べるのを再開した日番谷君が私の方を見ていた。
「あ、あれ?私・・・顔赤い??」
「おう。それに何かボーっとしてるし・・・団子欲しいのか?まだ一本あるからやるぞ。」
「え!?ううん、いいよ。日番谷君が食べて。」
「そうか?ならいいが・・・。」
そして日番谷君はまた串に刺さったお団子に歯を立てる。こうして食べるのに集中している日番谷君はちょっと可愛いと思う。そうするとほんわか胸の辺りが暖かくなって、甘いお菓子を食べている時みたいに幸せだな〜って気分になるんだよね・・・。
ああ、そっかぁ・・・
私、何だか分かっちゃったかもしれないよ
日番谷君の手が甘いって思うのは
日番谷君の存在自体が甘いから
私にとって甘いから
幸せそのものだから
だからきっと日番谷君は甘いの
心が甘くて甘くて甘くなって
私は今日も溶けていく
彼の舌に
<後書き>
雛森視点です。若干フィーリングで書いている部分はあるので、分かりにくい文章であるかもしれませんね。とりあえず微エロっぽい描写も入れてみました☆
なお、この話では日番谷君は甘いものは割と平気です。でも毎日のおやつとかそういうのはいらなくて、たまに食べる分には構わないというタイプです。
2006/07/01 UP