四天演技

天の章〜 壱

 

 

 

 

 

 物心ついた頃には、俺はもうすでに自分が何者であるかを自覚していた。数年前俺が今住んでいる木の葉隠れの里を襲ったとされる九尾の狐。それは四代目火影の命と引き換えに一人の赤子の中に封印された。九尾の意識は封じられそのチャクラのみが人柱となった赤子に利用されるように。しかしその目論見は残念ながら成功しなかった。何故なら九尾は確かに赤子の体から出ることはできなかったが、その魂は赤子のそれと融合してしまったからだ。どうしてそんなことになったかは俺にもわからない。ただ、九尾自身の魂魄が弱っていたことと封印された相手がまだ赤子で無垢なる魂を持ち合わせていたことが原因ではないかと考えている。そして赤子の魂と九尾の魂はゆっくりとだが確実に統合されていった。その結果、俺うずまきナルトは九尾の情報・チャクラと人の体を持つどちらつかずな存在として成長していくことになる。

 

 

 

「お、おぬしはまさか・・・九尾なのか?」

「ハハハ、じじい、今更何言ってるのさ。俺はナルトさ・・・九尾でもあるがな。」

 俺の正体に初めて気づいたのは、形式上うずまきナルトの保護者でもある三代目火影のじじいだった。その時のじじいの面ときたら今思い出しても噴飯物だぜ?俺はじじいを見て笑った。それまでは少し成長速度が速くて呑み込みの速い子供くらいにしか思ってなかったんだろうがな。

「まあ、そう警戒するなよ。別に俺はこの里をどうかしようとは思っていないし、あんたにも結構感謝してるんだぜ?」

顔色を変えているじじいに俺はそう言ってやる。これは本当のことだからな。いくら九尾の知識があるとはいえ体の方は人間の子供。チャクラの許容範囲もわかりゃしない。しかも里の連中には俺のことを暗殺しろとかほざくのもいるからな。正直火影が庇護者というのは有り難かった。

「まあ、安心しなよ。他の連中には九尾の意識はちゃんと引っ込んでると思わせておくさ。その代わりこれまで通り好き勝手やらせてもらうがな。」

俺が喉で笑うとじじいは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「少なくともあんたが死ぬまでは人間ごっこに勤しんでやるよ。なあ、火影のくそじじい?」

 

 

 

 その後、じじいはどうせなら俺の力を有効利用しようという算段をつけたらしい。当時最高クラスの暗部を俺の教育係につけて、俺は修行三昧の日々を送ることになる。面白かったけどな。その結果、俺は五歳にして暗部デビューだぜ?それからは火影権限振りかざして山のように任務を押し付けてきやがる。本当逞しいじじいだよ。で、その教育係の暗部ってのが今の俺の相棒でもある蒼天なんだが、あいつは確かに教育者に向いてるよ。本人はあまり認めようとしないがな。少なくとも俺とは馬が合うね。まあ、親子っつうか兄弟っつうか・・・敢えて身内というカテゴリーを当てはめるならそんなもんだろうな。正直、俺はあいつを気に入っているよ。

 あいつのおかげで俺は人の中に紛れ込むことを覚えたね。殺気やチャクラの抑え方、様々な意味で人間というやつの許容範囲も学び取った。それから俺=九尾と思っているやつが結構いてよ、いい加減うざくて抹殺したくなってくんだよな。じじいと蒼天が駄目だししやがるから表立っては本性だせねえし。まあ、暗殺企てようなんて連中は返り討ち決定だけどな。どうせ殺したってじじいが裏から手をまわすだろうし。

 

 

 

 

 

「死ねぇええ!九尾!!」

 俺が結界から離れた森の中で珍しく歩いてたらやっぱりどこの誰かは知らないが、仕掛けてきやがった。いい加減しつこいんだよ。第一あれで気配隠したつもりか?木の上から降りてきた五人が振り下ろす刀を避けて、持っていたクナイで奴等の頚動脈を切断する。ざっと三秒って所か。こいつら断末魔の悲鳴ですら五月蝿いな。

「弱いくせにいちいち襲ってくるなよな。」

相手にする方が面倒だ。別に殺しは嫌いじゃないが獣は生きるために殺すんだ。無駄な殺しは滅多にしない。この辺が人間とは違うんだよな〜。周囲にはむせ返るような血の臭い。俺は慣れたけど、しょっちゅう嗅いでると飽きてくるな。五人の首から噴出す血液は水芸のそれのようだ。やれやれ、服が汚れたな。取った山菜は袋に入れてあるから平気だが。大事な夕飯のおかずが血で汚れたら堪らない。何か、味変わりそうだし。

「お〜い、ナルト。山菜は集まったか・・・て、こりゃまた凄いな。」

 そこへやってきたのは万年中忍と世間じゃ評判の海野イルカ。

「文句は先に仕掛けてきたこいつらに言ってくれ、蒼天。」

その正体は俺が任務のとき唯一背中を預けることができる人間だ。

「酷い返り血だな・・・。」

「何か不都合でもあるか?」

「血は洗っても落ちにくいからな。服が勿体無いぞ。」

「・・・確かにな。」

俺の後ろに転がる同じ木の葉隠れの里の忍。それには見向きもせず、生活地味たことを言う。

「じゃあ、汚れが残らないようにさっさと洗ってくるってばよ、イルカ先生。」

「死体の処理は俺がするよ。それから、俺が採った山菜持って帰れ。」

イルカが俺に山菜の入った籠を手渡す。ふ〜ん、俺の取った分と合わせれば結構な量になるな。

「時間があったら洗っておくぜ。」

「ああ、帰ったら早く飯にしような。」

そして俺は自分の拠点でもある『幻狐の館』へ戻るために歩き始めた。

 

 

 

 

 

<後書き>

 時間軸はランダムですが、黄天の章その1です。黄天誕生秘話・・・みたいなものでしょうか。今回はナルトの一人称です。でも次回は三人称かもしれません。一応、四天メンバーそれぞれの出会いのエピソードは考えてあるので、ちゃんと形にしていきたいな・・・とは思っています。

 

 

 

2005/05/23 UP