*おまけ

 

 

 

 

 

「・・・クシュンッ」

 アルルが突然くしゃみをした。いくら夏とは言えパジャマで風呂上りに外をウロウロすれば体の一つも冷えると言うものだ。

「アルル?もう家に戻った方がいい。こんな遅くにすまなかったな。」

「ま、待ってシェゾ!」

アルルから離れて帰ろうとするシェゾをアルルは呼び止めた。

「あ、あのさ、聞きたいことがあるんだけど・・・。」

「何だ?」

「何でボクの携帯の番号知ってたの?今日貰ったばかりなのに。」

「ああ、それはD・シェゾがメールで送ってきたんだよ。」

「じゃあ、この番号はシェゾの携帯?」

「まあ、そうなるな。俺の携帯からかけたんだから。」

シェゾの答えにアルルは嬉しさがこみ上げてくる。

(シェゾの番号・・・。)

「ねえ、ボクからかけてもいい?」

「それはかまわんが・・・。」

アルルがリダイヤルを押すとシェゾの携帯が鳴った。

「またかけてもいいよね。」

「かけてくるのはかまわんが、普段は大抵留守録だぞ。実験の邪魔にならんよう。」

「あう・・・。」

彼の回答にちょぴりへこまされたアルルであった。

「そうそう、忘れる所だった。誕生日過ぎちまったがこれがお前らへのプレゼントな。」

そういってシェゾは鞄から二つの包みを取り出した。

「この、細い方がお前。大きい方がD・アルルのだ。D・アルルにはお前からあとで渡しておいてくれ。」

「う、うん・・・。」

「じゃ、おやすみアルル。」

「あ、シェゾ!」

プレゼントを渡しそのまま歩き出したシェゾの背中にアルルが声を掛ける。

「何だ。」

「あ、ありがとう!」

首だけ振り返ったシェゾにプレゼントを抱きしめたアルルがとびっきりの笑顔を向ける。シェゾはそれを見て口だけで笑うとそのまま前を向き彼の家へと戻っていった。時計の針は十二時を回り、誕生日は終わってしまったけれど、幸せな余韻がいつまでもアルルを包んでいた。

「あれ、アルル。外に出てたんだ。」

「!? ど、D・アルル!起きてたの!?」

 外から戻ってくると後ろから声をかけられアルルはとても驚いた。振り向けば廊下にはD・アルルが立っていた。アルルは気づかないがかなり含みのある笑みを浮かべている。どうやら彼女はアルルが何をしに外に出たかわかっているようだ。

「私も今から寝る所。お休み、アルル。いい夢を。」

D・アルルはそう言って階段を上がっていった。

(あ〜、びっくりした。)

「あ、シェゾからのプレゼント渡すの忘れちゃったよ。」

(まあ、いいや。)

アルルもゆっくりと自分の部屋に戻っていく。

「プレゼント、何だろう・・・。」

 アルルは自室に戻ると慎重に包装紙を開けた。角の丸い長方形のケース。ドキドキしながら蓋を開ける。

「あ、可愛い。」

中に入っていたのは可愛らしい意匠をした銀色のネックレスだった。中心にある石は色からしてブルーレースだろうか。

「あれ、これ確か・・・。」

アルルはかつてシェゾと街を歩いた時の会話を思い出していた。

 

 

「あ、これ可愛い。ねえねえシェゾ見てよこれ!」

「あ?何だ一体。」

「ほら、この青い石のやつ。可愛いでしょ?」

「結構値が弾むな、本物か?」

「いいなあ、欲しいなあ・・・。」

「働くようになればもっと良いのが買えるぞ。」

「そんなのずっと先だもん。ボクは今欲しいの。シェゾ買ってよ、社会人でしょ?」

「お前がもう少し大人になったらな。」

「ボクもう高校生だもん。」

「充分子供だろ。今こんなもの身につけても逆に飾り負けするだけだ。」

「そ、そんなことないもん!」

「お前が宝石の似合ういい女になったら考えてやるよ。」

「何それ!?」

「俺が石贈りたくなるような女に育ってみな。」

 

 

アクセサリー店のウィンドウに飾られていたネックレス。石はサファイアだった。シェゾからのプレゼントは石は違うけどネックレスのデザイン自体はあの時の物と良く似ていた。

「シェゾ・・・覚えていてくれたんだ・・・・・・。」

先程と違い嬉しくて涙が溢れてくる。

「シェゾ・・・ボク、絶対絶対シェゾのいうようないい女になるからね。」

アルルは決意を新たにした。

(最終目標は指輪だしね。)

目指すは左手の薬指を飾るそれ。

「頑張るぞー!」

アルルは握った拳を振り上げた。

 一方その頃隣の部屋ではD・アルルが溜息をついていた。彼女としては妹の様子に苦笑いを浮かべるしかない。

(全く、夜中にあんな大声上げて近所迷惑じゃない。)

そこへ携帯からメール着信があった。もちろんサイレント設定になっているので音はない。D・アルルが確認するとD・シェゾからだった。無言でメールを開く。

『シェゾ、帰宅。アルルにプレゼントは渡した模様。』

彼からの報告だった。

「本当、世話の焼ける子達・・・。」

まだまだお子様なアルルに色恋沙汰にはとことん鈍いシェゾ。この二人が恋人同士になるには障害がありすぎるというくらいあった。愛する双子の弟妹の為、D・シェゾとD・アルルのやきもきする日はまだまだ続きそうである。

 

 

 

 

 

<おまけについて>

 書き残したことを書いておこうと思いつらつらと書き出してみました。ちょっとどころか大分シェアルですよ、こっちは。DシェDアルもシェアルを応援してるみたいですね。でもああ見えてDシェは子供の頃はシェゾ至上主義だったのですよ。特殊スキル究極の兄馬鹿発動状態でした。それがどうやって今のDシェゾになったものやら・・・書いてる方にも謎ですね(単に何も考えてないともいう)。

 それにしても今回長すぎです。前回は短かったので余計にそう感じます。次は短くできる・・・かな?

 それからブルーレースは別名青色縞瑪瑙といい危険回避のお守りにもなるパワーストーンです。あと心を鎮め安らぎをもたらす効果があるとか。

 

 なお、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。