ある死神による護廷十三隊観察記録4

 

 

 

 今日はどうも、十番隊のナナシ・マツだ。最近、俺達の名前は漢字でどう書くかという質問があるらしいが、細かい事は気にするな。正確には後で控えているネタの都合らしいから、しばらく辛抱してくれると助かる。

 

 本日の天気は曇り時々晴れ、所により一時吹雪。まあ、これは実際の天候と言うより精神的な部分かもしれないけどな。平死神は格上の霊圧に当てられて大変らしいね。俺は平気だけど。因みに俺の今の仕事は八番隊に書類を届けることだ。こういった雑用よりは現世で魂葬でもしていた方がまだましだと思う。虚がいつ出現するか分からないから緊張感あるし。伝令神機の精度は今一つなのもあるけどさ。

「失礼します・・・て、あれ?誰も居ないじゃん。」

 八番隊の詰め所に行ったら中が空だった。たまたまかもしれないが、詰め所に誰も居ないのはまずいんじゃ?あ、ひょっとして隣の執務室(隊長用)に隊長か副隊長が残っているのか。なら、書類はそっちに預かってもらえばいいな。

「すみません、十番隊のナナシですけど・・・。」

「やあ、マツ君じゃないか!」

戸を開けるとそこにいたのは眼を輝かせた髭面のおっさん・・・もとい、京楽春水隊長だった。そして伊勢さん・・・じゃなかった、伊勢副隊長は不在のようである。

「久し振りだね、元気だったかい?」

「どうも、お陰様で。それにしても珍しいですね。あなたが真面目に机に向かっているなんて。」

何だかんだ理由をつけてはさぼろうとする当たり、うちの隊長や三番隊隊長と通じるものがある気がする。そんなことを口にしたら日番谷隊長本気でキレそうだから言わないけど。

「せっかくだからお茶でも飲んでいかないかい?最近発酵茶も購入してみたんだよ。」

「申し訳ありませんが、仕事がありますので。あ、これいつもの書類です。」

「マツ君が冷たい・・・シクシクシク・・・・・・。」

「何、泣き真似しているんですか、京楽隊長。」

まったくこの人は・・・。

「いいじゃないか、ちょっとくらい付き合ってくれたって・・・しかもそんなに他人行儀にしなくても・・・・・・。」

「少なくとも今の俺とあなたは赤の他人でしょうが。」

「酷い!君までそんなことを言うのかい!?僕は君をそんな子に育てた覚えはありません!!」

「何のネタですか・・・。」

毎度の事ながら、少々頭を抱えたい気分になってきた。

「だって最近七緒ちゃんもハツちゃんも相手してくれないんだよ〜。」

「ハツに振られたからって俺に当たるのはやめてください。」

そして抱きつくのも止めろと言いたい。生憎俺には中年男に抱きつかれて喜ぶ趣味はない。

「昔はハツちゃんもマツ君も可愛かったのに・・・。」

「いつの話をしてるんですか・・・。」

 確かに俺もハツも昔はいろいろと彼らの世話になったけど・・・子離れできない親みたいなもんか?まあ、最近はこうして話す機会はほとんどなかったよな。

「わかりました、今度非番が重なったら付き合いますよ。春水おじさん[・・・・・・]。」

久しく使っていなかった呼び名はどこか違和感がある気がしたけど、彼が嬉しそうだったからとりあえず良しとした。

「浮竹の奴も調子が良かったら一緒に飲みにいこう。」

「いや、酒はまずいんじゃ・・・?」

大分浮かれているらしい彼に一応突っ込んでおいた。

「京楽隊長!ちゃんと仕事して・・・。」

 あ、伊勢さん戻ってきたんだ。声のしてきた方向を見れば伊勢七緒八番隊副隊長が、戸を開け放ったまま立っていた。あれ?何か様子が変だな。

「七緒ちゃん?」

京楽隊長が話しかけても無反応(?)で・・・何ていうか、硬直してる!?

「もしもーし。」

「あの、伊勢副隊長・・・?」

どうしたんだろうか。四番隊呼んだ方が良いのかこの場合。・・・というか、いい加減

「手を離してくれませんか、京楽隊長。とりあえずは。」

「えー、せっかく愛のスキンシップの最中なのに・・・。」

このおっさんは本当に・・・。

「きょ、京楽隊長・・・。」

『?』

 鬱陶しくじゃれ付いてくるおっさん・・・もとい京楽隊長を何とか引き離そうとしていると、伊勢さんが言葉を発した。しかしその声は震えている。

「何だい、七緒ちゃん?」

「元々セクハラ紛いの事をなさる方だとは思っていましたけど、まさかそういう趣味があったなんて・・・。」

「は?」

「性癖なんていう個人の嗜好についてあまりとやかく言いたくはないですが・・・。」

ちょっと待ってください、伊勢さん。

「よりによって神聖なる執務室でそういった行為に及ばれるのでしたら、黙っているわけには参りません。」

貴方何か勘違いしてませんか・・・?

「今まで何だかんだ言っても隊長として尊敬できる部分のある方だと信じていましたが、そんな分別のない方にこれ以上私は着いていけません。総隊長殿に報告した後、速やかに辞表を提出させていただきます。」

おいおいおい・・・。

「ちょっと、七緒ちゃん?」

「近寄らないで下さい!不潔です!!」

伊勢さんの発言に俺から離れて京楽隊長が彼女に近づくとこの反応。

「偏見は持ちたくないですけど、やっぱり私は男でも女でも何股いい人というのは駄目なんです!」

 えーと、確か今、春水おじさん伊勢さんのこと口説いてるんだっけ?昔から軟派発言してるからどこまで冗談か本気かはわからないけど、この様子だと伊勢さん、半分くらい本気にしてたってことかな?いや、四分の一かな。それよりも、何か会話の流れと伊勢さんの反応からして、誤解が生じているようだ。・・・ひょっとして、俺とおじさんがデキてると思われてる!?うわ、ありえねえ!!

「何か、君、誤解してないかい?」

「別に隊長が誰と恋仲だろうが私の知ったことではありません!」

「七緒ちゃん妬きもち?」

「違います!」

「嬉しいな〜。」

「だから違います!!」

「でも安心してよ、マツ君は息子みたいなものだから。」

げ!?いきなり何さり気なく問題発言してやがりますかこの人は・・・!!

「別に私は関係ないで・・・はい?息子・・・さん、ですか・・・?」

「マツ君達の親が元死神でね、その人は結構個人的にも僕と仲が良かったんだよ。よく一緒にお酒を飲んでね・・・懐かしいなあ・・・・・・。」

「はあ・・・。」

まあ、これは嘘じゃないけどさ。仕方がない。俺もフォロー入れとくか。

「俺は覚えてないんですけど、京楽隊長は暇な時を見つけては子守を買って出てくれたらしくて・・・。それに早くに親は亡くなっているから、そういう意味ではかなり世話になっていますね。そのせいかどうかは知りませんけど、たまに鬱陶しいくらい親バカなんですよ。」

「う、鬱陶しいって・・・。」

「事実でしょうが。第一、俺はおっさんに抱きつかれて嬉しいと思う感覚は持ち合わせてません。」

「酷い!マツ君が反抗期だー!!」

「あー、はいはい。そんな訳ですから、伊勢副隊長、あんまり気にしないで下さい。この人病気持ちだからよく発作起こしますし。」

「病気!?」

「ちょっと七緒ちゃん、身を引かないでよ〜。というかマツ君、僕を変な病気持ち扱いしないでくれるかい?」

「何の病気なんですか!?」

「誰かに構ってもらいたい病。」

伊勢さんの真剣な問いにこれでも真面目に俺は答えたつもりだ。京楽隊長のスキンシップしたがり振りはある意味病気の域に達していると思う。

「な、なるほど・・・。」

「納得しないでよ、七緒ちゃん・・・。」

眼から鱗が落ちたような顔をする伊勢さんに京楽隊長は脱力していた。

「貴方も大変なのね、ええと・・・。」

「ナナシです。ナナシ・マツ。」

「ナナシ君、京楽隊長にお付き合いするの疲れるでしょう。」

「そうですね、でももう慣れましたから。伊勢副隊長こそ、いつもご苦労様です。俺と違って四六時中この人と一緒なんですから。」

 俺と伊勢さんはお互いに同情を込めた視線を交わしあい、ほぼ同時に溜息を吐いた。きっと今彼女と俺は脳内パルスが同じ波長を出しているはずだ。

「二人とも、ちょっと酷くない?」

『自分の胸に手を当てて聞いてみたらどうですか?』

うわ、ハモッたよ。京楽隊長に対するツッコミが。あ、京楽隊長ちょっとへこんでる。

「そういえば、ナナシ君は何故ここに?」

そうだ!書類の事忘れてた。伊勢さんが言わなかったらうやむやになる所だったかも。

「書類届けに来たんです。通常のなんですけど、詰め所に誰も居なかったんでこっちに持ってきたんです。伊勢副隊長、お預かり願えますか。」

「もちろんいいですよ。・・・ナナシ君は十番隊なのね。」

「はい。」

「実は間違えて届けられた書類があるの。日番谷隊長にまで届けてくれるかしら?」

「わかりました。」

伊勢さんに書類を渡し、俺は封筒(角2)に納められたそれを受け取った。最近書類の配送ミスが多い気がする。事実関係を確かめて報告書出しとくか。

「それでは、失礼します。」

 そう、頭を下げて部屋を出て行こうとすると、京楽隊長が未だにへこんでいるのが目に入った。ああ、面倒臭い人だなあ。

「春水おじさん、また今度。」

『!!』

それを捨て台詞にして俺はさっさと歩き出した。何か後ろの方で京楽隊長と伊勢さんがもめている気がするが、最早俺の知ったことではない。さーて、とっとと十番隊に戻るか。

 

 

 

 俺が十番隊の執務室までやってくると、戸の前で誰かが座り込んでいた。立ちくらみでも起こしたのか?

「どうかしたのか?」

「え!?えとあのその・・・。」

話しかけると大げさに思えるくらいビクついて、こちらを見たのは見覚えのある人物だった。外見はまだ少年といって差し支えない彼は、垂れ目で態度は常に気弱、オドオドしている。そして四番隊のくせに何故か顔色が悪く貧弱な印象を受ける彼の名は・・・

「山田花太郎・・・だっけ?四番隊の。」

「は、はいぃ!?そ、そうです!!」

声、引っ繰り返ってるし。こう見えて、こいつ第七席だったりするんだよな。でも性格なのか常に使われている状態にある気がするぞ。万年パシリ状態。そういえば、学院時代もそうなんだっけ?

「・・・て、ナナシ君じゃないですか。あ〜、びっくりした〜。」

「そんなに驚くことか?」

 俺と山田はそれなりに親しい。というか、しばらく前に他の隊員・・・二番隊だかの連中に苛められている所を助けたら、懐かれたみたいだ。まあ、十番隊は前線部隊で怪我人が出ることも多いから、四番隊のメンバーと仲良くしていて損は無い。俺は滅多に四番隊の世話になることはないけど、怪我人を運ぶ時とか知り合いが居ると頼みやすいし。余談だが、山田は初めは俺のことをサン付けで呼んでいたのだが、ハツと区別が付きにくいので今では君付けだ。というか、大体、他の連中もそう呼んでるし。同じ名前の奴が居るとこういった現象が起こるわけだ。身内だから仕方ないけど。

「それにしても、そんな所に座り込んでどうしたんだ。貧血?それとも腹痛とかか?」

「い、いや、違・・・。」

「何でそこで赤くなる。」

何で山田が赤面してるんだ?四番隊のくせに体調を崩したのが恥ずかしい・・・という訳ではなさそうだ。それより、おまえ、挙動不審だぞ、かなり。視線はあちこち彷徨ってるし、書類を抱えた腕を上下左右にワタワタと動かしたりして。

「まあ、いいや。俺、隊長に用があるから先行くぞ。」

「ちょっと待ってください!」

「は?」

 戸に手を掛けたら、慌てた山田に止められた。何するんだよ・・・と思って山田の方を見遣った瞬間、耳に入った声に脳神経機能が停止しかけた。

 

 

「・・・ん、やぁ、日・・・番谷、く・・・ん。」

「嫌じゃないだろ、雛森・・・。」

 

 

ひ、日番谷隊長―――――――――――!?ていうか一緒にいるの雛森さんですか!!?

 

 

「・・・あ、そこ・・・駄目ぇ・・・ァン・・・ああぁぁぁ・・・。」

「・・・ここか?」

 

 

 雛森さんの声は息も絶え絶えという感じなのに、どこか艶っぽくて。日番谷隊長の声色はどこか面白がっている感じで。・・・一体、何をしているんですかあんた等はー!?さっきの伊勢さんじゃないけど、ちょっといけないことを想像してしまいそうなんだけど・・・。でも、本当にそうだったらどうしよう。十番隊執務室で隊長と五番隊副隊長が不順異性交遊!?俺、重ジイに何て報告したらいいんだー!!

「な、ナナシ君・・・どうしましょう・・・?」

「ど、どうしようって・・・。」

滅茶苦茶入り辛いぞ、この状況。山田が動けないのもこのせいだったのか・・・。今入って二人の濡れ場だったりしたら本気で洒落にならないし、かといっていつまでもこうしているわけにもいかないし。しかも結果的に部屋の中の状況盗み聞き状態になってるのが情けない。何か起死回生の良い方法はないだろうか。

 

「お前らそんな所でなにしてるんだよ。」

 山田と二人で立ち往生していたら、新たなる来訪者が現れた。赤毛に眉の辺りの変な刺青とくれば当てはまる相手はただ一人、阿散井恋次だ。何かまた剃り込み部分が進行してないか?

「いや、ちょっと・・・なあ?山田・・・て、おい!?」

阿散井にツッコミを入れたいのを堪えつつ、隣の山田に何とか言い訳を振ろうとしたら、山田の方はエライ状態に陥っていた。まさに目ン玉グルグル状態とはこのことを言うのだろう。まさか、阿散井の登場に精神の許容量オーバーでも起こしたのか!?おまえ、ちょっと小心者過ぎるぞ、それは!

「大丈夫か?」

「はらひれはらほ〜・・・。」

うわ、駄目だこりゃ。辛うじてまだ立っているが、その内倒れそうだ。

「何か知らねーが、先に入らせてもらうぞ。」

「ちょ・・・待・・・・・・!」

山田に注意が向いていた隙に、阿散井はあっさりと執務室の戸を開け放った。今開けるのはまずいんだってばー!!

 

 

 

「・・・やだ、日番谷君てば、くすぐったいよぉ・・・。」

「いいから、そっちの手も寄こせ。」

『・・・・・・。』

 えーと、この場合、何てコメントしたらいいんだろうか。はっきりした事実から述べるとすれば、執務室内にいたのは日番谷隊長と雛森さんで、雛森さんはソファーに仰向けになった状態で、その上には隊長が乗っかっている。馬乗りと押し倒しの中間といった所だろうか。山田は相変わらずグルグルしていて、戸を開けた阿散井本人といえば、石化したかのように、固まってしまっている。

『あ。』

『!?』

あ、イチャこいていたらしい隊長たちがこっちに気がついた。その途端、阿散井の脳が作動し状況認識を果たしたらしい。顔色が一気に赤くなって青くなった。面白いな〜、これ。

「し、失礼しましたー!!」

「え?阿散井君!?」

雛森さんが止める間もなく、阿散井は脱兎の如く逃げ出した。足速いな〜。ていうか、書類出すの忘れてってるぞ。紙の束抱えたまま走り去ってるし。

「何しにきたんだ、あいつ?」

「さあ?」

ああ、この二人わかってないし!

「日番谷隊長、雛森副隊長。」

「ナナシか、どうした。」

どうした?じゃないだろ、隊長。それよりいつまで雛森さんに跨ってるんですか。

「ナナシ?ひょっとして五番隊のナナシ・ハツさんの親戚!?」

「はい、一応、双子の弟に当たります。ナナシ・マツです。」

「双子なの?うわ〜、道理で。前から似てると思ってたんだよ。」

 雛森さんは隊長を押しのけて起き上がり、俺の方をまじまじと眺めた。だけど、話の腰を折った上、嬉しそうに眼を輝かせないでください。日番谷隊長が怖いから。

「ナナシ。」

ほら、怒ってるまではいかなくても、不機嫌になり始めてるし。

「これ、八番隊に誤って配送されていた分です。」

隊長に伊勢さんから預かった封筒を渡す。

「それにしても、さっきから二人とも何やってたんですか。」

見たところ雛森さんの装束は肌蹴てないので、そういったことにはまだ及んでなかったらしい。・・・いや、事後という説もあるか。

「マッサージだけど?ねえ、日番谷君。」

「ああ。」

「マッサージ・・・ですか?」

マッサージ!?余りにもあっさりと返ってきた返答に俺は内心動揺しまくりだった。多分顔にも多少出ていたと思う。流石に声まではいかなかったけど。

「うん、さっきから日番谷君、書類仕事で首疲れたとか言うからやってあげたの。」

隊長、真面目に仕事してたんだ、今日は。

「んで、礼に俺もやってやろうとしたんだが、雛森の奴が抵抗してな。」

「だって、いいよって言ったのに日番谷君が・・・。」

「そんなこと言って、お前だって結構凝ってたじゃねーか。」

「だけど日番谷君のやり方、上手いけど時々くすぐったいんだもん!」

頬を染めて雛森さんは隊長に抗議する。それを仏頂面で流す日番谷隊長。でも、隊長。眼が笑ってますよ。これは内心面白がってるな。それにしてもこンの天然バカップルが!

「とりあえず、事情はわかりました。でも、阿散井さんは絶対誤解してると思いますよ。」

『誤解?』

「先程、入り口からだと、隊長が雛森副隊長押し倒してるように見えましたから。」

「え!?」

俺の言葉に雛森さんはさらに顔を赤くしたようだ。隊長は平然としてる。むしろお手つきの噂広がって大歓迎みたいだな。

「嘘!ヤダ、どうしよう〜・・・。」

「阿散井さんは言いふらすような人じゃないけど、誰かに相談したらわかりませんよね。」

十一番隊の連中とか結構口軽いし。特にこういった話題は。

「私、阿散井君捜してくる!じゃあね、日番谷君。」

「雛森!?」

 いってらっしゃ〜い。隊長の伸ばした腕は空振りし、雛森さんは執務室を飛び出していった。さて・・・。

「隊長。雛森副隊長との時間を邪魔したのは悪いと思いますけど、そろそろ松本副隊長が出勤してくる時間ですよ。からかわれなかっただけマシだと思ってくださいね。」

そう、むしろ感謝してもらいたい位だよ。松本副隊長は前日夜勤だった為、本日は午後からの出勤だ。彼女は最近退屈なのか、隊長と雛森さんの仲をあれこれ突っつくのが趣味になっているらしい。混ぜっ返したり、妙なこと吹き込んでみたり。これでも一応二人の仲を応援していると言って憚らないあたり、あの市丸と昔馴染みなだけあると思う。

「俺も阿散井さんに会ったらちゃんと説明しておきますから。」

「とっとと次の仕事に行って来い!!」

怒鳴る隊長。でも八つ当たりなのが見え見えだな。霊圧ビリビリきてるけど。

「失礼しました〜。」

さーて、詰め所に戻ろう・・・て、何か忘れているような?うーん・・・あ!

「山田!」

 慌てて後ろを振り返ると、執務室の戸の影に山田が倒れていた。しかも痙攣している。さっきの隊長の霊圧に当てられたのか。クソッ。

「隊長!これも頼みます!!」

「は?」

ノックもなしに戸を開けて、山田の持っていた書類・・・ざっと確認した限りでは全部十番隊宛だったそれを隊長の目の前に置いた。さっき出て行ったばかりの俺が戻ってきたのが疑問らしい。彼の視線に気づいて、俺は一気に言った。

「先程の貴方の霊圧に当てられて、これを出しに来た四番隊員がそこで倒れてました。今から俺はそいつ送ってくるんで後よろしくお願いします。」

そのまま隊長の意思確認もせず、おれは部屋を出て行く。相手が朽木とかなら別だけど、今回は言ったもの勝ちだぜ、隊長。

「山田〜、ショック死するなよ〜。」

そして俺は山田を背負うと、四番隊区画の救護室に向かって駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

<あとがき>

 マツ側の話は相変わらず伏線色が濃いですね。京楽さんが予想以上に変なおじさんと化しています。京楽ファンの方には申し訳ないです。そしてさりげなく京七入ってますね。七緒さんの話し方がよく分からないです。京楽の方も微妙ですけど。それからハツやマツの親についての話も機会があったら書いてみたいと思います。構想自体は大体ノートに書き出してあるので。実はすでに斬魄刀の名前まで考えてあるのです。お蔵入りにならないと良いですね。

 それにしても前半日桃要素が薄いな〜。うっかりマツが八番隊執務室を後にする所で、キリが良いから締めちゃいそうになりましたよ。元々その後に来る十番隊執務室のシーンを書きたくて、その前振り・・・つまり何でマツが執務室に来たのかという事情説明の為だったのに、やたらと長くなってしまいました。その分後半頑張ってみたんですけど、どうでしょうか。そしてまたもや、恋次登場。何か他のキャラと比べると書きやすくてつい・・・。花太郎が出てきたのは自分の趣味です。

 

 

2005/06/04 UP