今日も里は平和です。〜陰口はほどほどに編〜

 

 

 

 

 

 一部の人々を除き、いつものように平和な木の葉の、いつものようによく晴れた日。下忍チーム七班(通称カカシ班)の所属、写輪眼の血系限界を持つ少年うちはサスケは、今日もまた集合場所である演習場にやってきた。因みに他のメンバーは誰も居ない。大抵の場合、一番に集合場所に来るのはサスケか、七班の紅一点でもある春野サクラだ。そしてうずまきナルト、担当上忍のはたけカカシと続く。ただしナルトは遅刻ギリギリ、カカシに至っては数時間遅刻というのもざらだ。そんなデコボコチームな四人だが、周囲の者から言わせると、結構仲睦まじく見えるらしい。

 さて、どうやら本日の一番乗りはサスケであるようだ。サスケは演習場になる木に背中を預け、どこか遠くを見つめている。思い描いているのは仲間達の顔かはたまた一族の仇でもある男の顔か。

「サッスケくーん!おはよー!!」

物思いに沈みかけたサスケの耳に少女の元気な声が届く。顔を上げれば、鮮やかな桜色の髪。彼女が七班メンバーの一人サクラである。

「・・・ハヨ。」

小声で挨拶を返すとサクラは花がパッと咲くように笑顔になった。チームを組んだ頃は鬱陶しい存在でしかなかったのだが、ある程度付き合いができて人柄を知るようになれば、その笑顔が自然と受け入れられるようになってくる。今では彼女の存在に充分助けられて癒されているような気がするから、世の中不思議だ。もっともサスケはその感情がどこから来ているか自覚してないのが、カカシ曰く笑える所らしい。

「今日も早いね。流石サスケ君だわ!」

「お前もな。」

「えへへ、ありがと。」

まるで自分のことのようにサスケを褒め称えるサクラにサスケは言った。彼の言葉にサクラは頬を少し染めてお礼を言う。サスケは基本的に自分にも他人にも厳しいタイプなので肯定的な褒め言葉と取れるセリフは滅多に聞けないのだ。そんな貴重な意味合いを込めた言葉を伝えられ、サクラは嬉しくなる。

「あ!そうそうサスケ君、あのね・・・。」

 

 

 

 その後サクラが一方的に話してサスケが極稀に返事をするといういつもの状態を繰り返すことおよそ一時間。

「サクラちゃーん!おっはよーだってばよー!!」

来た時のサクラ以上に元気な声を出して集合場所に姿を現したのはナルト。

「あら、ナルト。今日は遅刻しなかったのね。偉いじゃない。」

「へっへへ〜だってばよ!・・・あ、サスケの奴もいるじゃん。おはようだってばよ。」

「何言ってるのよ。サスケ君はいつもナルトより早いでしょ!」

「・・・。」

ナルトは珍しく集合時間に間に合うようにやってきていた。そして真っ先にサクラに挨拶をしてサスケに気付いていないのが何とも言い難い。そして挨拶されてもサクラに対してと違って返さないサスケにも。

 サスケとナルトは所謂ライバル同士である。一方的にナルトが敵愾心[てきがいしん]を起こして突っかかっていく場合も多いが、特にチャクラコントロール対決において二人揃ってサクラに負けたという経験から、二人のライバル意識は加速したものと思われる。そして別の意味でもライバル同士ということにナルトはともかくサスケは気付いていない。因みにサクラは一人だけ女の子ということもあり、ライバルとはまた違った位置にいるチームメイトとして二人には見られていた。

 そしてナルトが遣って来てから、さらに五分後。

「やあ、諸君。」

『!?』

ドロンと瞬身の術で姿を現したカカシに七班メンバー三人はビシリと音を立てて石化した。

「あれ?いきなりどうしたのお前ら。」

そんな彼らを不思議そうに眺めるカカシ。

「か、カカシ先生が・・・。」

ようやく硬直が解けたのか、震える声でそう口にしたのはサクラ。

「時間通りに・・・。」

サクラの言葉に続けるように声を漏らしたのはサスケ。

「来たってばよ!?」

そして最後に叫んだのはナルトだった。三人で一つの意味になるような言葉が紡げる辺り、彼らのチームワークは本物か。

「おいおい、そんなに驚くことかぁ?」

 三人の驚き方に呆れるようにカカシが言う。だが、彼のこれまでの所業を鑑みれば三人が驚くのも当然だった。

「明日はきっと大雨よ!」

「いや、槍が降ってくるかもしれないってばよ!?」

「木の葉が滅びる・・・。」

真剣な顔で失礼な発言をする教え子達にカカシの表情が引き攣った。そんな彼に気付くこともなく三人は恐れ[おのの]きながら問題発言を繰り返している。

「お前らね〜、いい加減にしないと・・・シメるよ?」

『!!』

地の底から這ってくるような低い声音でカカシが言う。慌てて三人が彼の方を見れば、カカシは澄ました顔で本日の演習メニューについての説明を始めた。

「・・・じゃあ、そういう訳で、今日の演習は鬼遊戯[おにごっこ]ね。あ、鬼は俺がやるから。その代わりに捕まった人にはたっぷりとお仕置きしてあげるからね☆」

『!?』

ニコニコしながらも怒りのオーラが出ているカカシに青褪めるナルト・サクラ・サスケの三人。

「楽しみだね〜。じゃ、今から百数えるんでさっさと逃げてね♪い〜ち、に〜い・・・。」

三人に反論する暇すら与えずカカシは数を数え始めた。もはや彼を止める術は無い。彼らは必死で演習場の森の中へと逃げ込むのだった。しかし・・・

「ギャー!」

「キャー!」

「わー!」

その日、演習場のある森では物凄い悲鳴が響き渡ったという・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 因みにその頃たまたま同じ森で演習をしていたある下忍達の様子は以下のようであったという。

「ねえ、何か物凄い悲鳴が聞こえた気がするんだけど・・・。ちょっとネジ、あんた白眼で確かめてみてくれない?」

「はあ?」

「いいから!この前任務の時に手伝ってあげたでしょ。」

「ぐっ・・・分かった。―――――――白眼!!・・・こ、これは!?」

ネジは白眼を発動させて森を除いた途端、驚愕の表情を浮かべた。

「何何、どうだったネジ?」

「―――――――テンテン。世の中には知らないほうが幸せなことがあるものなんだ・・・。」

「はあ?」

興味津々と言った顔で尋ねてくるテンテンに、ネジは彼女の肩に手を置き首を横に振るのだった。

「何をしてるんですかね、あの二人は。」

「まあまあ、リー。それもまた青春だ。」

 そんなネジとテンテンを見て、暑苦しいルックスの二人リーと彼ら下忍を束ねる立場にあるガイはむやみやたらと歯を輝かしている。

「ギャアアアアアアアアアァァァァァァ・・・」

森に木霊する少年の叫び。

「何だか今日は森が騒がしいですね。」

「そうだな。」

「何かさっきの声、ナルト君に似ていましたね。」

「それもまた青春さ!」

「なるほど!ナルト君も青春している訳ですね。流石ガイ先生!!」

 真実からどうにもこうにもずれた遣り取りをする彼らに『オイオイ、それはちょっと違うだろうよ』等と、親切にもツッコミを入れてくる人物は、やはりこの場には居なかった。今日も里は・・・多分平和です(七班を除いて)

 

 

 

 

 

<後書き>

 サブタイトルは『陰口はほどほどに』なんですが、別に陰口じゃないです。普通に本人の前で言ってます。そしてこのカカシ先生は短気です。何かイライラしてたんでしょうか。せっかく時間通りに来たというのに・・・。

 とにかく、久々にNARUTO小説を書きました。といってもノートに書き連ねた文章を加筆修正しただけなのですが。七月のサスケ誕生日を祝うためにも少しは頭をナルトモードにしておかないとな〜と思いまして。サスサクサイトさん巡りをしながら妄想してます(笑) 書き始めると結構ノリノリになるタイプなので自分。

 

 

2005/07/08 UP

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 森の中でカカシの教育的指導(?)によりボロボロになったサクラは、同じくボロボロになって木の幹に寄りかかっていたナルトを発見する。

「ナルト、生きてる〜?」

「な、何とか・・・。」

サクラが声を掛けると、弱弱しいが手を振ってナルトが返事を返してきた。

「サクラちゃん、サスケは・・・?」

「・・・。」

ナルトの問いかけにサクラは無言で俯く。

「ここだよ。」

『ギャアアアアア!?』

背後からした声にナルトとサクラが慌てて振り返ると、そこには目を回したサスケを抱えているカカシの姿があった。

「嫌ぁあああああ!サスケ君しっかりぃいいいいいいい!?」

「うわ〜!カカシ先生、御免なさい御免なさい御免なさいだってばよぉおおお!?」

 改めて上忍の凄さを思い知らされた三人でありましたとさ。

 

 

 

 

 

おしまい