四天演技
〜四天の章〜 壱
木の葉隠れの里には史上最強と呼ばれる暗部部隊が存在する。その名は『四天』。火影直属の部隊であり、その正体を知る者は里の上層部でもほとんど居ないと言われている。彼らは暗部のさらに裏とも言うべき存在であり、それと同時にメンバーは木の葉最強の忍と周囲に認識されていた。総員四名、皆『天』の名を持つことから、即ち『四天』と呼ばれる。任務達成率は九割を超える彼らは、それだけ多くの者を屠ってきたとも言えた。故に『四天』は『死天』、闇に生きる死の遣いなのである。
ザシュッ
鈍い音ともにクナイで喉笛を抉られた男が絶命する。彼に死をもたらしたのは黒装束に狐の面を被った人物である。体格からすると細身だが男のようだ。彼の周囲には先程の男のように物を言わなくなった躯が転がっている。周囲は血の海だというのに、手を下した本人は返り血一つ浴びていなかった。
「終わったか、蒼天。」
彼が振り返りもせずそう言うと、後方に音も立てず一人の男が姿を現した。どうやらこの男の名は蒼天というらしい。
「ああ、問題ない。黄天。」
蒼天は特に驚きもせず答えた。彼もまた黒装束に狐の面という出で立ちをしている。それは木の葉の暗部の者が纏う装束でもあった。
「こっちも終わったぜ。」
そんな言葉とともに木々の影から一人の男がまた現れる。やはり彼も木の葉の暗部らしい。
「遅いぞ、灰天。」
「後始末が面倒くせえんだよ。それにアカデミーに入る前から暗部の奴と一緒にすんな。」
黄天の言葉に灰天と呼ばれた男は言った。
「後は、朱天だけか・・・。」
蒼天は静かに告げる。その言葉に僅かにだが黄天が反応を示した。恐らくトップクラスの暗部でも分かるか分からないかのそれ。
「ああ、お前のお姫さんね。」
しかし灰天はそれを確実に読み取って口に出した。
「・・・何が可笑しい。」
普通なら仮面に隠されて判別がつかないはずなのだが、笑みを浮かべた気配を感じ取ったらしい。黄天は恐ろしいくらいに勘が鋭い。いや、この世界に生き残るためにはそれも必要だったのかもしれない。ピリピリと伝わってくる殺気に灰天は肩をすくめた。
「いや、別に。姫さんの事になると反応がいちいち分かりやすくなるなと思ってね。」
「煩い、あれは俺のものだ。」
黄天は切り捨てるかのように言い放った。
「相変わらずの独占欲だな、黄天。正確にはお前が姫さんのものなんだろ。」
「黙れ。殺すぞ。」
「やめろ、二人とも。」
戦闘体勢を取りかけた二人に蒼天が声をかけた。
「朱天が戻ってきたぞ。」
その言葉と同時にふわりと一人の女が舞い降りる。その姿は羽衣をつけた天女のよう。
「御免、少し手間取った。」
「少し返り血を浴びたな、朱天。」
現れた女に近づき黄天が告げる。朱天と呼ばれた女は自分の体を見回した。
「そう?」
「臭いが残っている。」
小首を傾げて見せた朱天に黄天が鼻を鳴らす。
「よく分かるわね。ここは血の臭いが濃すぎて分からないわ。」
「まあ、黄天のおかげでこの場は血の海だからな。」
「大体、そんなの判別つくのはお前だけだろ。」
口々に告げる仲間達に黄天は舌打ちした。
「さっさと戻るぞ、明日は表の任務がある。」
「そうだな。」
「私も念のために血の臭い消しておかないと・・・。」
「そうだな、彼も暗部経験者だ。忍犬のこともあるし用心に越したことはないだろう。」
黄天の言葉に灰天が答え、朱天の呟きを蒼天が肯定する。
その時、これまで雲に隠れていた月が周囲を照らし始めた。それは深い森の中にも光明をもたらす。そこで初めて四人姿が光に晒された。黄天の髪が金色に輝く。朱天の髪は艶やかな桜色をしていた。灰天と蒼天の髪は黒である。狐の面故にその容貌は定かではない。しかし彼らの存在を噂でも知っている者はこの四人の姿に恐怖するという。彼らこそが木の葉最強の暗部部隊『四天』。彼らと敵として会い見え生きて還った者はいないとされる最強の忍達。
「行くぞ。」
『了解、黄天隊長。』
黄天の声に他に三人が頷き、彼らは音もなく消え去った。後には血の臭いと動かぬ屍が転がるのみ。しかしここは人はまず訪れない深い森の中。証拠は全て獣の腹か土へ還ることだろう。全てを見ていたのはこの森のみである・・・。
<後書き>
生まれて初めて書いたスレナルです。通常のカップリングはサスサクなんだけど、スレはナルサクがいいんです。いや、某サイト様のスレナルがまた素敵でして・・・。見事なまでにハートを打ち抜かれました。因みにサスケがスレになる予定はありません。だって、奴がスレになっても面白くないし。スレナルだから面白いんじゃないですか。まあ別にサスケがスレてても悪いとは言いませんけど(どっちだよ)
実はこのシリーズ、通常版でナルサク話を考えた時出てきた設定が元ネタ。九尾ナルト×サクラで、スレらしい設定をプラスしたらこんな風になりました。ただイルカ先生とナルトの絆が偽りというのは嫌だったので、必然的にイルカ先生にもスレてもらいました。スレナルだともっと小さい頃から捻くれてますから万年中忍のイルカ先生なんて馬鹿にしちゃってますよ。そんな訳でイルカ先生はナルトの育て親なのです(正確には三代目も)そしてスレナルの相棒兼同年代の理解者はシカマルしかいないでしょう。彼はアカデミー時代偶然目撃した黄天をうっかりナルトと見破ってしまったばかりに仲間に引き込まれた経歴の持ち主です。でも性格は表でも裏でもあまり変わらないですね。面倒くさがりだから。
2005/05/09 UP