*初めに・・・

 この話は春秋冬夏様によるキリ番400の代理リクエストである『四天演技シリーズでナル→サク←我』というものです。余り、ナルトと我愛羅の取り合いという感じじゃないような気もしますが、他にも書いてみた三つ程の話の内、二つはギャグ、一つは長編(未完)な展開になってしまったので、一番まともそうなこの話を献上いたします。

 やっぱり、ナルサク←我というか、朱天関係のお話を書くには、尾獣のスカウト話・・・もとい『契約』のエピソードを書いておかなければ!と思ったこともあるんですよね。そんな訳で一先ずはリクエストありがとうございました。公開が遅れ、四天シリーズそのものも久々の更新となってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。

 

・・・没になった話も機会があったら加筆修正して日の目を見させてあげたいんですけどね(苦笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注意:これは中忍試験終了後辺りを時間設定として想定しています。

 

 

 

イチビ  キュウビ  カムイ  コウケイ

一尾と九尾と神威の後継

 

 

 

 

 

「お〜い、黄天。我愛羅拉致って来たけど、これで良かったのか。」

「悪いな、蒼天。すぐ表に戻ってくれ。」

 死の森内某所にて、二人の青年と一人の少年がいた。青年の一人は狐面をつけた暗部姿。もう一人は金髪に赤い瞳の若者。そして彼らの足元に呪符付きの鎖でグルグル巻きにされた挙句猿轡噛まされた少年、通称砂の我愛羅と呼ばれたその身に一尾を宿す人物が転がっていた。蒼天と呼ばれた黒髪の暗部が立ち去ると、黄天と呼ばれた金髪の青年が我愛羅に近づいてきた。

「悪かったな、我愛羅。いきなりこんな所に連れてきてよ。」

そう言って黄天は我愛羅から猿轡を外す。

「・・・貴様は誰だ。」

「わからないのか、一尾。」

「!」

黄天の言葉に我愛羅は息を呑む。

「まあ、この姿じゃわからねえかもな。」

黄天は口の端を上げて解呪の印を組んだ。すると彼の姿のみならずチャクラの質そのものも変化を遂げる。我愛羅は現れたその姿に後ろから頭を殴りつけられたような衝撃を受けた。金の髪に空色の瞳、自分と同じように体内に化け物を宿し、同じように孤独と戦って生きてきた少年。

「うずまきナルト・・・。」

「ああ、俺だってばよ。」

「何故、お前が・・・?」

呆然としながら尋ねる我愛羅に黄天・・・いや、ナルトは鼻で笑ってみせた。

「俺の女に手を出そうとした身の程知らずに制裁を加えるためだ。」

「女・・・?」

「・・・なんてな。おい、サク。時間がないんだから早くしろよ。」

「わかってるわよ。」

「!?」

 気配も感じさせず現れた少女に我愛羅は驚愕する。桜色の髪に翡翠の瞳を持つ、非力な少女。それは春野サクラだった。

「大体文句なら三代目に言ってよね。わざわざ試験レベルに合わせて封印受けさせられたんだから。」

ブツブツ言いながら我愛羅に近づくサクラ。しかしナルトのみならず彼女までガラリと雰囲気が変化していたのだ。我愛羅は予想外の事態連続に混乱していた。いきなり謎の男に拉致されたこともそうだが、冷笑を浮かべるナルトにただの小娘だと思っていたサクラの存在が我愛羅には理解できない。

「それじゃあ、ちょっと失礼・・・。」

サクラの手がチャクラに包まれている。

「や、やめろ・・・!」

自由に身動きできないながらも抵抗しようとする我愛羅。

「心配するな。すぐ終わる。」

冷めた目でそう告げるナルトに我愛羅は悪寒を覚えた。サクラの手がそっと我愛羅の背に触れる。

「ぅぐおおおおおおぉぉぉ・・・!?」

我愛羅が呻き声を漏らす中、サクラの手はツプツプと彼の体内に沈み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 我愛羅は夢をみていた。ナルトと戦った中忍試験の記憶、無知故に幸せだと思っていた幼い頃の記憶、そして裏切られた記憶。不規則に浮かんでは消えていく記憶の欠片達。その間を泳いでいくような感覚。そして辿り着いたのは己の底にあった自分のものであってそうでない記憶達・・・。

 

 

 

『・・・そうか、お前も共に来てくれるか一尾。』

 そう言って自分の方へ微笑み手を差し伸べるのは一人の娘。年齢は十代後半といった所か。桜色の髪に翡翠の瞳、顔は違うが春野サクラの持つ色彩とよく似ていた。

『当然だ。我らは汝を護る為にここにいる。』

誰かが、知っているようで知らない声が、そう答えた。

『ありがとう。』

娘が華のように微笑む。

『礼には及ばぬ、天樹朔羅。汝が我らの支配者だ。』

 

 

 

(アマギサクラ・・・?)

 我愛羅が記憶の光景を眺めている間にも記憶の欠片は我愛羅の中へと溶け込んでいく。次第に分からなかったことが分かってくる。胸の中で何かが芽吹き、自分の中にいる化け物が咆哮を上げているのがわかった。

(・・・そうか、そういうことか・・・・・・。)

我愛羅は瞳を閉じる。自分の中にある忌々しい獣が自分と融け合っていくのが感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

「気分はどうだ、我愛羅。」

「・・・悪くないな。うずまきナルト・・・いや、九尾の狐。」

 気がつくと、すでに拘束は解かれていた。人の悪い笑みを浮かべているナルトに我愛羅はそう答える。ナルトはさらに笑みを深くした。我愛羅は少し離れた位置に佇むサクラに目を向ける。

「お前が“神威”の継承者か、春野サクラ。」

「真名は天樹咲羅よ。」

「そうか・・・。」

我愛羅は起き上がり、サクラの元まで歩み進むと、跪いて頭を垂れた。

「古の契約に基づき、汝を主と認める。」

我愛羅は恭しくサクラの手を取り、その甲に接吻した。その瞬間我愛羅の額とサクラの額に同じ幾何学紋様が浮かび上がる。今、再び、尾獣と天樹の者の間に『神威』の契約は結ばれた。

 

 

 

 

 

「・・・で、いつまでサクの手を触っている気だ?我愛羅。」

 いつまでも口付けた手を離そうとしない我愛羅にナルトはこめかみをヒクつかせている。サクラも不思議そうに離れようとしない我愛羅を見つめた。

「やはり主たる者の気は心地好いな。」

『!?』

どことなく幸せそうな表情を浮かべる我愛羅に、ナルトは無理やり二人を引き離しに掛かった。怒りのあまりに九尾のチャクラの象徴である赤黒い気が漏れ出している。

「サクに触るな!」

ナルトはサクラを抱きしめたままその紅い瞳で我愛羅を睨みつける。

「ちょっと・・・ナルト!?」

ナルトは尻尾が生えていたら逆立てて威嚇しそうな勢いである。

「まあ、今は良い・・・。俺は戻るぞ。では、また見えよう我らが主。」

「そうね。その内、詳しい事情も教えるわ。」

「わかった・・・。」

そして我愛羅は二人の前から姿を消した。

「ともあれ、契約は完了ね。無理やり従わせる必要がなくて助かったわ。」

「そうだな。」

 サクラの言葉にナルトが相槌を打つ。しっかりとサクラの体を抱いたままで。これでもかというくらい密着させた体にサクラは戸惑いを覚える。

「ねえ、ナルト。いつまでくっ付いてるつもりなの?」

「・・・絶対誰にも渡すか。サクは俺のものだ。」

「ナルト・・・?」

「いや・・・もう少しだけいいか?」

「仕方ないわね、好きにしなさい。」

サクラの言葉にナルトは彼女の項にそっと唇を寄せた。試験の時髪を切り落としたことで顕わになった首。

(長い髪も結構気に入ってたんだがな・・・。)

跡をつけないように優しく唇で触れた。狂おしいまでの愛しさを込めて・・・。

 

 

 

 

 

<後書き>

 スレ設定でナルサク&我サクです。そしていろいろ悩んだ結果初代様のお名前を公開ですよ。朔羅(サクラ)です、朔羅。朔の日(新月)の『朔』に羅刹の『羅』〜♪ 九匹の尾獣を支配した女王様(?)ですもの、これくらい凄い名前でもいいですよね☆

 スレナルは独占欲が強いのでサクラのことに関してはすぐ怒ります。というか殺気立ちます。俺様ナルト、書きやすい・・・!

 

 

2006/01/15 UP