06:オレとオマエ
〜偶然と必然と〜
出逢ったのはきっと偶然だった。
古い遺跡。
這入る度に形を変えるとその筋の人間の間では有名な遺跡。
俺はさらなる高みを目指し、強い魔導力を求めてそこへやってきた。
アルルに勝つ為に、サタンに勝つ為に、そして最強の魔導師になる為に。
我は永き時を独りで存在していた。
まず人の辿り着くことはできぬであろう遺跡の奥で。
だが、彼の者はやってきた。
我から力を奪う為に。
瞳に愚かな野望を抱いた男だと思った。
我から力を奪い、我に勝てると思っている愚かな人の子だと。
そして我は反対に彼の者の力を奪い取った。
彼の者は完全に我に力を奪われる前に逃げた。
その時抱いた印象は愚かだか考えていたよりは小賢しい者というものだった。
俺は辿り着いた遺跡の先で魔導力を奪われた。
吸収するつもりが返り討ちにあったんだ。
あんな屈辱的な経験は初めてだった(アルル達とのドタバタはまた別次元の問題)
悔しかった。そして憎かった。
魔導力を奪ったあの存在と、みすみす奪われてしまった俺自身が。
それから魔導力を取り戻すために動いていた俺は、再びあいつと出会うことになる。
魔王を唆して作ったテーマパーク。
我は塔で待つ。
彼の者の魔力を奪い、姿を、そして能力を写し取った。
今思えば予感があったのかもしれない。
彼の者は再び来ると。
我の前に現れると。
そして我らは再び相見える。
それはもしかしたら必然であったのかもしれない。
そして俺達は対峙する。
今度こそ雌雄を決する為に。
サタンがいつものようにアルルを誘き寄せるために作ったダンジョン。
それにはあいつが影で一枚噛んでいて、
俺は導かれるかのようにアルティメットタワーの最上階へ。
そこで待っていたのは過去の俺に姿を変えた彼の存在。
髪の色も背の高さもまるで姿見の鏡を見るかのように瓜二つ。
唯一つ、血のように紅い瞳を除いて。
驚かなかったと言えば嘘になる。
自分の魔導力を奪った存在が己の影となってこの目の前に現れるとは予想だにしなかった。
剣を振るう。魔導を放つ。対峙した我らは闘い続ける。
彼の者は我が考えている以上に強かった。
だが、我は彼の者より強いはずだった。
我は彼の者の最盛期の力を模したのだから。
負けるはずがなかったのだ。
そのはずだったのに・・・勝ったのは彼の者だった。
彼の者の剣が、魔導が我の存在を打ち砕く。
急速に我の存在が薄れていく。
いや、元々我は彼の者の姿を鏡のように写し取っただけの存在。
しかし、影である証明に瓜二つとなることもない。
オリジナルになりきれないただのドッペルゲンガー。
褐色の肌も紅い瞳も、そして彼の者と同じ銀の髪も、幻でしかないのかもしれない。
あいつは強かった。
俺の能力を写し取ったこともあるのかもしれない。
自分と戦ったことのある人間はいない。
だが、似たタイプの戦い方をする相手とは戦いにくいというのは良くあることだ。
闇の剣程ではないが、強い邪気を放つ魔剣。
同じ属性を持つ魔導力。
ならば自分と同様闇属性の魔導に耐久力もあるのだろう。
手強いとは思っていた。
ただでさえ、力を奪われた身。
このダンジョンの攻略が多少リハビリになったとはいえ、
あいつは自称俺の全盛期の力を持つ相手だ。
実際苦戦した。
だが、最後に勝ったのは俺だった。
確かに我は彼の者の最盛期の力を写し取った。
だが、人は常に成長する生き物だ。
我とは違う。
我は一つの場所に止まり動くことはない。
かつて遺跡にいたように。
己の存在に確証を持てぬ我は、虚ろの如き時空を漂う者。
過去を乗り越え未来を行く人の子の存在の強さに比べたら何と希薄なものか。
我はあの者が羨ましかった。
あの者の力を取り込んだ際、何割か記憶も写し取り、背負っている
哀れだと思った。
だが、悲しみに呑み込まれぬよう、それでも前を見る、
傷だらけだが強い精神を美しく感じた。
だから一層あの者と同じでありたいと願ったのだろう。
最早叶わぬ願いだが・・・。
ドッペルゲンガーはオリジナルになろうとする性質があるという。
己と相手を同一視し過ぎた故に、
自分を見失い、
相手に成り代わることで、自身のアイデンティティを確立しようとするらしい。
俺の姿を写し取ったドッペルゲンガーは元々時空の水晶という存在であり、
根幹にあるものは違うのだから、
厳密には俺の影とは言えないのかもしれない。
それでも戦っている内に、
何故かあいつの孤独とか寂しさとか憂いとかそういったものが伝わってきて、
勝ったはずなのに、どこか苦しかった・・・。
こうしてお互い出逢ったのは偶然なのかそれとも必然だったのか・・・
未だ答えは出ない。
<後書き>
自分にバトル物は無理だと悟る瞬間・・・(死) 因みに自分のイメージを重視して書いているので実際のゲームとは印象が異なる可能性があります。何かシリアスのようにも見えますが、この話は全体としてギャグなので。一部例外もありますが(苦笑)
文章にまとまりのない散文詩っぽくなってしまいました。一応シェゾサイドとDシェサイドの回想みたいな感じで展開されていて、最後だけ二人の想いということになっています。分かりにくく且つ見にくくてすみません(猛省中) ついでに『オレとオマエ』なのにどちらも相手のことを“オマエ”と呼んでいません。何てこった!
2006/08/06 UP