2013年 新春企画

3ch プレシジョン・システム

オーディオのテーマ「何も足さない、何も引かない」の実現は難しく、もっとも高度な「マルチ・チャネル・システム」を導入しても従来のテクノロジでは入力の音楽信号通りの音響出力をスピーカ・システムから得ることは極めて難しく叶わない夢でした。

3chデモンストレーション・システムは画期的なアプローチで難しかった入力信号と相似な音響出力が波形レベルで実現していますが、最新のSSC-X/R2とチューニングで ぐんとひずみ率を下げ音響出力を入力信号にさらに近づけてみたいと思います。

デレイ・チェッカ(タイム・メジャメント)
ウーファを基準にミディアムとトィータそれぞれのユニットの相対遅延時間とその等価位置情報が得られます。 正しく合成するにはおのおののユニットは物理的に奥行き方向に位置合わせしなければなりません。

相対遅延 (id0:ウーファ, id1:メディアム, id2:トィータ)

ウーファ用イコライジングLPF
SSC-X/R2のFIRフィルタ群とUA101型のミクサ機能によるデジタル・イコライザでウーファ・モジュールの低域特性を改善します。耳につくメタル・ダイアフラムの高域共振をカットオフ250Hz、120dB/octのFIRフィルターでノイズレベル 以下に減衰させます。

ウーファ用クロスオーバ・パラメータ

UA101mixer / Mon out

 

ウーファ裸特性  

 

イコライジング・ネットワーク特性

ミディアム用タイムアライメントBPF
250Hz及び3kHzの120dB/octの急峻なFIRフィルタ でミディアム・モジュールのダイアフラムの低域と高域のレゾナンスをノイズレベル以下に減衰させます。同時に遅延時間をダイアフラム相対位置位置7cm後退相当に設定しクロスオーバ周波数 のレスポンスをフラットにします。

メディアム用クロスオーバ・パラメータ

 

メディアム裸特性  

 

イコライジング・ネットワーク特性

トィータ用タイムアライメント・イコライジングHPF
トィータ・モジュールのダイアフラムの低域レゾナンス500Hzも同様に3kHz、120dB/octの急峻なFIRフィルタでノイズレベル 以下に減衰させます。 遅延時間をダイアフラム相対位置9cm後退相当に設定しクロスオーバ周波数のレスポンスをフラットにします。同時に超高域のトィータ固有のピークもイコライズしています。

トィータ用クロスオーバ・パラメータ

 

トィータ裸特性  

 

イコライジング・ネットワーク特性

 

合成特性
綿密なチューニングにより周波数特性は20Hz〜20KHzの可聴帯域全域で±3dB以内に、サインショットから伺えるようにクロスオーバ周波数で完璧につなげられている様子が分かります。さらにSSC-X/R2の±12dBコレクション範囲 に12Hz〜23kHzの広範囲を収めて低域と高域のダイアフラム応答を改善します。

インプルーブド・ウーファ インプルーブド・ミディアム インプルーブド・トィータ

合成特性とコレクション設定

 

サインショット


*MySpeakerを独自に応用しています。

パワー・アンプ/高周波スイッチング電源
フル・オーケストラの超低域では最大100Wのドライブ出力でも不足を感じることがあります。ウーファ・モジュールのドライビング・パワーはどのぐらい必要か?

ウーファモジュールの最低共振周波数におけるドライブ波形に見られるように単発サイン波を連続サイン波相当のバースト波中央部分と同じにするにはそのドライブ信号は4.3div/2.5div=+5dBになります。20Hzではレベル偏差15dBを 補償する必要がありトータルで20dB、パワー・レシオでは100倍にもなることが分かります。

波形レベルで精密にドライブするために新たに250Wx2出力をスペックするIRS2092型DクラスPWMアンプを4Ω負荷用にチューニングし、800kHz高周波スイッチング電源を組み合わせてウーファ用パワー・アンプを構成しています。ミディアム、トィータ用TK2050型DクラスPWMアンプ も同様の高周波スイッチング電源に置き換えています。

ドライブ波形(上)、スピーカ再生波形(下)

バースト波

単発サイン波

3chプレシジョン・システム

ブロック・ダイアグラム

総合周波数特性
可聴帯域全域を超えてフラットでパーフェクトな周波数特性が得られています。

周波数特性(3chプレシジョン・システム)

ひずみ率
ファンダメンタル全域でアンプ並みの低い歪率が得られています。MySpeakerを独自に応用しています)

ひずみ率(3chプレシジョン・システム)


*MySpeakerを独自に応用しています。

単発サイン波
20Hzにおける振幅の低下やダイアフラム共振特有の周期が短くなる縮退が改善されました。可聴帯域20Hz〜20kHzすべての周波数領域でダイナミック型スピーカ固有の共振が改善され演奏や楽器の微妙な音質そのままに再生できるようになっています。

3chプレシジョン・システム単発サイン波 20Hz,400Hz,20kHz (上:入力信号、下:スピーカ音響出力)

20Hz 3.2div p-p

400Hz 3.3div p-p

20kHz 2.8div p-p

 

3chプレシジョン・システム単発サイン波 (上:入力信号、下:スピーカ音響出力)

20Hz

25Hz 32Hz 40Hz 50Hz 63Hz 80Hz 100Hz 125Hz 160Hz
200Hz 250Hz 320Hz 400Hz 500Hz 630Hz 800Hz 1kHz 1.25kHz 2kHz
2.5kHz 3.2kHz 4kHz 5kHz 6.3kHz 8kHz 10kHz 12.5kHz 16kHz 20kHz

 

大太鼓再生波形

JAS評価用音源「直径3m大太鼓」再生波形です。 マレットがスキンを捉えた1/5秒に満たないアタックの瞬間です。ウーファ、ミディアム、トィータからのそれそれのスペクトラムが空間で正しく合成され入力信号と同じ波形であることがわかります。

バスレフやバックロードホーンなどの大型の共鳴器を備えたいわば楽器を範とした大型のエンクロージャに高次のアナログネットワークで同一平面上ににマウントされるスピーカ・システムをフラットなアンプでドライブする従来のオーディオ・システムでは決して得られない応答です。

3m大太鼓 (上:入力信号 、 下:スピーカ音響出力)

エピローグ
ようやく複雑なマルチチャネルシステムの各スピーカユニットからのスペクトラム合成が音楽である入力信号そのままにコントロールできるようになりました。 ペアリングした測定用マイクによるハイビット・ハイサンプリングのレコーディングはマイクの偏差さえ厳密にキャンセルして楽器そのもの演奏そのものを再現という表現が相応しい再生をしてくれます。

あの日あの時がようやく再現できた気がします。半世紀以上昔にこのシステムがあってアートペッパーやビルエバンスの収録に使われていたら、あの頃描いた夢、自分の部屋に今彼らを呼ぶことができたに違いありません。

本年もよろしくお願い申し上げます。

3ch Precision System

2013年 新春企画