2013' 08/04

プロローグ

オーディオ・ コンポであるアンプの性能の究極はケーブル・ウィズ・ゲインとされる。スピーカもオーディオ・コンポだ。同等の性能でありたい。

ケーブルの特性はどのようなものであろうか?UA101型の入出力を接続した目標となるケーブルのサイン・ショット応答波形と振幅特性だ。

ケーブル

 

ケーブル・サインショット応答波形

 

ケーブル振幅特性

MG100HR-S(fixed)スフェリカル・ スピーカ・システム

従来のフラットなアンプでドライブしたMG100HR-Sスフェリカル・スピーカ・システムのサイン・ショット応答波形と振幅特性だ。

波形が歪まないよう印加電力を絞ったが、サインショット応答波形も振幅特性も目標とは大きくかけ離れていることがわかる。

これらはスピーカのダイアフラム共振による固有の特性だ。このままでは音楽である入力信号と同じ音響出力は得られない。

MG100HR-Sスフェリカル・スピーカ

 

MG100HR-Sスフェリカル・スピーカ・サインショット応答波形

 

MG100HR-Sスフェリカル・スピーカ振幅特性

サイン・ショット比較

サインショット応答波形同志を重ねると僅かな違いもよく分かる。赤が目標、黒がスピーカだ。相似といえそうなのは172Hz〜1.74kHzの狭い範囲だ。

1kHz以下では左にシフトする。加えて80Hzの最低共振周波数の倍の172Hzから下では 周期がだんだん短くなり目標からどんどんずれてしまっている。

1.74kHzの立上りに高域共振成分が表れる。高域に行くに従い支配的になる。5.51kHzを超えると高域成分の振動が長引きいつまでも収まらない。

MG100HR-Sスフェリカル・スピーカ VS ケーブル

MG100HR-Sスフェリカル・ スピーカ振幅・位相表示

SSCーX Tool LauncherのMeasurement Main Windowで測定することで振幅特性に加えて位相特性や群遅延特性なども表示可能だ。

振幅カーブのピークの山やディップの谷が大きい部分では位相カーブも大きく変化するが、小さな部分でも急激に変化することがが分かる。

左右で異なるスピーカ固有の振幅や位相のズレがステレオ・イメージを損なう元凶だが、 いままで補正の手立てがなく改善は不可能だった。

MG100HR-Sスフェリカル・スピーカ 振幅特性(白)、位相特性(赤)

SSCーXによるコレクション設定

目標から大きくかけ離れたMG100HR-Sスフェリカル・スピーカ・システムが、SSC-Xドライブによってどのように改善されるのかを探った。

SSC-X Tool LauncherのSpeaker Correction Utility上で、 振幅カーブにブルーのボックスで示されるコレクション設定範囲を重ねる。

ここでは、周波数レンジ80Hz〜20kHz、カット&ブースト±12dB、センターレベル-30dB、スムースネス0、GD(グループ・デレィ)onとした。

周波数レンジ80Hz-20kHz,カット&ブースト±12dB,センターレベル-30dB, Smooth0, GDon

SSC-Xドライブ/コレクション(80Hz-20kHz,±12dB)

コレクションで設定した80Hz〜20kHzの広い周波数範囲でサインショット応答波形と振幅特性が目標と同じになった ことがわかる。

いままでスピーカ固有の ダイアフラム応答評価用のサインショット応答波形は改善が不可能だった。画期的な機能だ。素晴らしい。

SSC-Xドライブ・サインショット応答波形

*MySpeakerを独自に応用

 

SSC-Xドライブ振幅特性

*MySpeakerを独自に応用

サイン・ショット 比較/コレクション・エリア(80Hz-20kHz,±12dB)

80Hz〜20kHzの周波数範囲で目標のサインショット応答波形とぴったり重なる。入力信号とプロポーショナルな音響出力がスピーカから得られたわけだ。

SSC-X(80Hz-20kHz,±12dB)ドライブ VS ケーブル

*MySpeakerを独自に応用

振幅・位相特性/コレクション(80Hz-20kHz,±12dB)

スピーカ固有の振幅特性と位相特性が80Hz-20kHzの広い周波数範囲で理想的に改善されている。いままで改善が不可能だった物理特性だ。

SSC-X(80Hz-20kHz,±12dB)ドライブ 振幅特性(白)、位相特性(赤)

中間評価

聴いた瞬間、生の楽器を声を彷彿とさせる音と納得できる。音の客観評価が物理特性でスピーカも例外ではないのだと理解できる。

半世紀も昔に重要だと説かれていたのだが、 スピーカだけは何故か?あの手この手でこの命題から目を背けさせられて来たように思える。

手立てが無かった位相補正が理想に近いところまで改善できて瞬時に聴き比べてみて今更ながら位相特性の重要さが確認できた次第だ。

コレクション設定再検討

スピーカの最も重要な性能は振幅特性(周波数特性)だけだと知らず知らず思い込まされてきたのが災いしていたのだと思う。

振幅特性の改善にばかり目が行っていた。コレクション範囲を振幅カーブから大きく外しての設定はなかなか思い至らなかった。

 センターレベル-30dB、スムースネス0、GDonのまま、周波数レンジを10Hz〜20kHzに、カット&ブースト を±0dBに変更してみた。

コレクション・エリア; 10Hz-20kHz, ±0dB, -30dB, スムース0, GDon

振幅・位相特性/コレクション・エリア(10Hz-20kHz,±0dB)

スピーカ固有の振幅特性のまま、位相特性だけ独立に可聴帯域全域で理想的なリニア特性に改善される。 パーフェクトだ。

サインショット応答波形の改善は、位相特性そのものを改善しなければならないことが分かる。振幅特性だけでは片手落ちだ。

SSC-X(10Hz-20kHz,±0dB)ドライブ 振幅特性(白)、位相特性(赤)

サイン・ショット比較/コレクション・エリア(20Hz-20kHz,±0dB)

可聴帯域全域でスピーカからの音響信号が入力信号とプロポーショナルな周期と位相が得られた分かる。

SSC-X(10Hz-20kHz,±0dB)ドライブ VS ケーブル 

*MySpeakerを独自に応用

コレクション最適化

最適なコレクションは、@カット&ブーストとセンターレベルで振幅カーブ囲む、A周波数レンジを可能な限り広く、Bグループ・デレィをON、などだ。

センターレベル-30dB、スムースネス0、GDonのまま、周波数レンジを10Hz〜20kHzに、カット&ブースト を±12dBに変更した最終設定だ。

コレクションエリア10Hz-20kHz, ±12dB, -30dB,スムース0, GDon

振幅・位相特性/コレクション・エリア(20Hz-20kHz,±12dB)

可聴帯域全域で理想的なリニア位相が得られた。重要性は分かっていても具体的な改善や、ましてその音を聴くなど望んでも能わなかった夢の出来事だ。

SSC-X(10Hz-20kHz,±12dB)ドライブ 振幅特性(白)、位相特性(赤)

サインショット応答波形/コレクション・エリア(10Hz-20kHz,±12dB)

サインショット応答波形の重書きだ。可聴帯域全域で入力信号の周期と位相が保たれていることが一目で分かる。

SSC-X(10Hz-20kHz,±12dB)ドライブ サインショット応答波形(重書き表示)

*MySpeakerを独自に応用

コンクルージョン

SSC01ドライブで異なる構成のスピーカを振幅特性をフラットにして聴き比べたことがあった。スピーカを替えると振幅特性を同じに揃えても、「楽器や声の音色」や「空間に浮かぶ楽器の配置 」や「滲み」、「ホールトーン」などの印象は大幅に変わってしまった。

スピーカ・システム搭載の高次のネットワークの合成特性がフラットでも音楽信号は原型を留めないほどに劣化するのと同様に、ダイアフラム固有の共振や低音ポート、ホーンなどの共鳴による劣化は振幅特性をフラットにしただけでは原理的に元には戻らない。

SSC-Xを駆使して振幅特性をフラットにした上で、独立して位相特性を補正出来て瞬時に聴き比べて初めて、音の違いの原因が半世紀も前のオーディオ黎明期から 重要な物理特性との一つとされた位相特性であり、リニア・フェーズこそが鍵だとわかったわけだ。

SSC-Xドライブは人の声に、楽器の音に限りなく近い。今まで聴いたフラットなアンプによるスピーカシステム全てが前時代の遺物と色褪せる。最大入力の小さな小口径なので大音量は望 めないが、ハイ・サンプリングのスタジオ・クォリティーが眼前に展開する。

振幅特性を更に改善してケーブルと全く同じにできないものか?残る物理特性の歪率、S/N比も改善していこうと思う。 旅は、道は、さらに遠く険しく、そして楽しい。