2015年 新春企画

オーディオ・ルームの測定

 

同じ音楽ソースでもスピーカを変えると音は音楽の印象は全く異なってしまう。 一説によればスピーカ・システムが音質に占める割合は大きく30%とされる。

リスニング・ルームのそれは、はるかに大きく50%とされる。これらこそが改善対象の筆頭のはずなのだが不思議と取り上げられることは少ない。

あってもスピーカ ・システム込の改善後の特性は言葉を失う程で不満が残る。せめて、リスニング・ルームの本当はわからないものか・・・。

音質に占める割合

 

理想スピーカ

振幅特性に偏差が無く位相特性が直線的な、いわゆる理想スピーカがあれば、リスニング・ ポジションのデータはそのままリスニング・ルームのデータになるはずだ。

位相特性の面ではシングル・コーンが有利だ。ピュア・マグネシウム・ダイアフラムの100倍以上と大きな内磁型磁気回路を装備したMG130HRをチョイスしてみた。

ダイアフラムのリアクションによりバフルは固有振動する。スピーカ ・システム固有の音の元凶の一つだ。重い磁気回路はしっかりと受け止めてくれるはずだ。

MG130HF

エンクロージャ

エンクロージャに定在波対策に有利といわれるティアドロップ型のデイトン・オーディオ製のTWC-0.25型7リッタ、エンクロージャをチョイスした。

エンクロージャの理想は真球形状なのだが、ここでは上下・前後の平行平面の影響を予め確認したい。

デイトン・オーディオ社製TWC-0.25型ティアドロップ・エンクロージャ

 

バフル加工

スピーカ・ユニットとバフル面の段差は振幅特性の乱れに直結する。スピーカ固有の音の元凶のひとつだ。NCルータ加工よるサーフィス・フラッシュとした。

スピーカ固有の音の元凶のひとつ、パスレフ・ポートやプレッシャ・バランス、ドロンコーンなどの低音共鳴器の無いシールデッド(密閉)構造とした。

バフル加工図

吸音材なしの特性

振幅特性の中域に鋭いディップが認められる。上下・前後の平行平面による反射による結果だ。音楽信号とは 無縁のエンクロージャ固有の音といえる。

ボーカルや楽器の音質やステレオ・イメージなどを大幅に損なってしまう。平行平面は避けなければならない。

100mm軸上で測定


吸音材無しの振幅特性

 

 

定在波対策

完璧な対策が期待できる50mm厚のホワイト・キューオンを充填した。

 

カットしたホワイト・キューオンと充填の模様

ホワイト・キューオン充填特性

スピーカ・ユニット本来の滑らかなの特性に改善される。同時に最低共振周波数も10%低く共振峰も低く改善される。平行平面の対策は重要だ。

振幅・位相特性改善

20Hzから20kHzの可聴帯域で40dBもの振幅偏差をパラメトリック・イコライザとSSC-Xのアナログ・プロセスとデジタル・プロセスを併用して理想化する。

パラメトリック・イコライザ

あらかじめFBQ2496型搭載のパラメトリック・イコライザ機能によりおおまかにフラット 化する。

 

補正量 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
Gain(dB) 15 11 3 3 2 -1.5 -3 -3 9 3 -3 -8 3 -12 -12 -13 5 15 10 -7
Freq(Hz) 20 20 53.8 83.3 115 1.48k 3.09k 4.32k 5.26k 5.83k 9.35k 12.3k 13k 13.6k 14.1k 15.1k 16.8k 17k 18k 20k
B.W(oct) 1.5 2 0.2 0.5 0.2 0.2 1 0.2 0.2 0.2 0.5 0.16 5/60 5/60 0.1 0.14 5/60 1/60 3/60 4/60

 

 

SSC-Xコレクション

その上で10Hz〜27kHzの範囲で±12dBのSpeaker Correctionを設定した。

理想スピーカといえるフラットな振幅特性と直線的な位相特性が得られる。
 

SSC-X Speaker Correction 

 

 

振幅特性(白)、位相特性(赤)

部屋の特性例

床はフローリング仕上げ。壁天井ともに12.5mm石膏ボードにクロス張りの洋間の特性だ。内寸 348cm x 258cm x 255cmの6帖相当だ。

測定マイクはスピーから1mに設置した。理想スピーカによるドライブなのでリスニング・ルーム固有の特性と言える。

6帖洋間  

 

6帖洋間音響特性

エピローグ

この状態で聞く音楽はひどく実に耐え難い。音が汚いばかりか、楽器やボーカルの定位が不明瞭で不自然極まりないのだ。

原因は床、壁、天井などからの反射やそれら平行平面による定在波だ。

ようやくリスニング・ルーム固有の特性が得られた。 対策の有効性や効果の可視化が期待できるはずだ。