2016年 新春企画

オーディオ・ルーム施工

フラッターエコー対策を施したオーディオ・ルームのスケッチだ。 フラッターエコーは天井や壁が硬く相対する平面が平行だと生じてしまう。効果的な対策の一つは平行な平面を無くすること、すなわち可能な限り平面の広い面積を斜めにすることだ。

天井は全体を前方に向かって斜めに低くした。左右の壁は前方を対称に絞り込んでスピーカー設置部で広げた。リスナー席前面の壁は、左右部の上方を手前にせり出している。左側壁前方上部に明り取りの窓が、後方には2m高の掃き出し窓がある。入口は右側後方だ。

オーディオ・ルーム

施工の模様

床下のベタ基礎工事の模様だ。耐震外壁の内側に遮音壁で囲ったオーディオ・ルームを施工してもらい、斜めの天井や斜めの壁はさらに内側に作りこんでもらった。明かり取り窓や掃き出し窓はダブルの2重ガラス仕様を、入口ドアは防音仕様を選んで遮音につとめた。

床下ベタ基礎と耐震壁工事の模様

 

斜め天井の桟工事の模様

 

左前方斜め壁面の模様

 

右前方斜め壁面の模様

 

後方上部室外プロジェクター格納庫の模様

対策の効果

センターにピアノを設置した施工直後の状態で理想スピーカを設置して音を聴いてみた。曲によっては音楽ソースに含まれる以上の響きが重なるが、施工直後の6畳洋間にあった音の不明瞭さや定位の不自然さは見事に払拭された。元々の音を知らなければ十分に楽しめそうだ。大昔に提案されたこの手法は確かにフラッターエコー対策の決め手といえそうだ。

フラッターエコー対策の効果を確認

オーディオ・ルームのエコー

オーディオ・ルームのエコー(残響)は適度に必要とする説がある。「音楽のジャンル別に、生演奏や録音スタジオと同じ残響時間が望ましい」とされる 。これでは、音楽ソースに含まれるスタジオやホール本来の美しいエコーにオーディオ・ルームの固有の残響が被ってしまう。なによりも音楽ジャンル毎に別々のオーディオ・ルームが必要になってしまう。

もう一つの説は、オーディオ・ルームの残響は不要とする説だ。1960年代、記憶に残るスピーカ・メーカの視聴室は例外なく幾重もの分厚い緞帳で囲まれていた。オーディオ・ルームはスピーカから耳までの最後の伝送路だ。情報伝送の建前からすると反射(残響)はご法度だ。スピーカからの音を劣化なしで聴く環境の理想は「自由空間」だ。

エコーの元となる反射はどのぐらいだったら振幅周波数特性に影響を与えないのか?単純で極端な例だが音源からリスナーまで1.8m、壁まで3.6mの場合のシミュレーションだ。壁からの反射がどの周波数でも一様に50%まで吸音できたとしても10dBもの偏差となる。3dB以内に収めるには19%、実に81%もの吸音が必要だ。

一次反射の影響

 

オーディオ・ルームの反射対策

今回やりすぎと思えるほどの大量の吸音材で室内を包んでみた。天井ほぼ全面に20mmの発砲ウレタンゴムを、前方スピーカ設置部は50mmホワイト・キューオンをそれぞれ貼り付けた。コルク床の中央に10mm発砲ウレタンゴムを2枚重ねしシャギーのカーペットを重ねた。リスニング・ソファを囲む左右と後方の壁は50mmホワイト・キューオンを立てかけた。

悩ましい説に「吸音しすぎると音の潤いが損なわれる」がある。それほどに吸音材はダメダメなのか?音の潤いは本当に損なわれるのか?

天井全面に20mm発砲ネオプレンゴムを貼付け

 

リスニング対抗面にホワイトキューオン50mmを貼付け

 

ホワイトキューオン50mmとリスニングソファ

 

コルク床中央にシャギー・カーペット(下に発砲ネオプレンゴム10mmx2)