名誉ある、されど栄光なき戦い……
デルタグリーンはクトゥルー神話TRPG(以下CoCと略称)のサプリメントであり、ゲームにおいて中心的な役割を果たす秘密機関の名称でもある。本稿では、サプリメントの題名としてのデルタグリーンをDGと略称する。DGの版元は米国の出版社ペイガン=パブリッシングだが、アークドリーム=パブリッシング(1)からも関連書籍が刊行されている。DGの作者であるジョン=タインズは米国のTRPG界における第一人者であり、d20版CoCの作者としても知られている。
デルタグリーンは、旧支配者の脅威から人類を防衛することを目的とする抗神組織である。その隊員(エージェント)は政府の機関に勤務していることが多いが、組織自体は非公式・非合法の存在である。旧支配者の眷属や崇拝者だけでなく、マジェスティック12やカロテキアなど禁断の知識を弄ぶ勢力もデルタグリーンの大敵である。デルタグリーンの隊員たちは人類を守護するために身命を抛つが、犠牲にしなければならないものはそれだけではない。作戦を遂行する際には、無関係の人間を巻き添えにしたり、同志を見殺しにしたりするなど、非情な行為に踏み切らなければならないことも多いのだ。従来のCoCで探索者が犠牲にしなければならないものは己の正気だったが、DGで隊員が犠牲にしなければならないのは己の人間性であるといわれている。
米国では根強い人気を誇るDGだが、日本での知名度は高いとはいえない。本稿では手短ながらDGの紹介を行う。DGはCoCの愛好家でなくとも楽しめるものであり、日本のクトゥルー神話ファンがその魅力の一端に触れることができれば幸いであるが、より詳しいことを知りたい方は公式サイトを参照されたい。なお、DG関連小説で邦訳されたものとしては"Y.GOLO.NET"があり、湖の隣人の小屋に掲載されている(2)。
デルタグリーンの歴史については妖蟲世界が詳しいが(3)、本稿でも簡潔に説明させていただく。
デルタグリーンの前身は、超常現象の調査・研究を目的として1917年に創設された米国海軍情報部P課である。1928年、オルムステッドという人物の通報を契機として、連邦捜査局と海兵隊が合同でマサチューセッツ州インスマスの住民の一斉検挙を行った(4)。この作戦は「誓約」(COVENANT)と呼ばれ、P課の主任であるジェイムズ=ウェラン大佐が首席将校だった。
「誓約」作戦で得られた書類や石板の翻訳を担当したのが陸軍情報部第8課すなわち「機密室」(Black Chamber)である。『ダゴンの書』と呼ばれる石板の解読に機密室は成功したが、金融恐慌の最中に深きものどもの調査を続ける彼らにフーヴァー大統領は不信感を抱き、機密室の解散を決定した。そして、クトゥルーの眷属について探索する仕事は海軍情報部P課のもとに移った。海魔の存在は海軍にとって由々しき問題だったのである。
ラバン=シュリュズベリイ教授やハロルド=コープランド教授の著作を参考にして、深きものどもに関する調査が進められた。フィリピンやニカラグアで深きものどもの集落が発見されて殲滅されたが、やがて第二次世界大戦が勃発して別の脅威が現れた。カロテキアと呼ばれるナチス親衛隊(SS)の秘密機関が第三帝国のために旧支配者の力を利用しようと目論んでいることが判明したのである。これに対抗するためにP課の再編が行われ、戦略事務局(OSS)の一部門としてデルタグリーンが誕生した。1942年6月16日のことである。この時点では組織の正式名称はP課のままだったが、デルタグリーンという通称がもっぱら用いられるようになった。
SS長官ハインリヒ=ヒムラーに直属するカロテキアはほぼ無制限に活動の自由を認められており、異界の力を招喚して連合軍との戦いに役立てようと探索と研究を重ねた。マーティン=クック中佐に率いられるデルタグリーンはカロテキアを粉砕するために死闘を展開した。やがて戦争は終結し、第三帝国は滅びたが、カロテキアの残党は南米に逃れて組織を再建した。
第二次世界大戦が終結するとOSSは1945年10月1日に廃止され、デルタグリーンもいったんは解散した。しかし1947年6月24日に異星人の宇宙船がニューメキシコ州に墜落した。ロズウェル事件である。報告を受けたトルーマン大統領は事件の解明および隠蔽のためにマジェスティック12を発足させたが、同時にデルタグリーンが統合参謀本部直属の機関として復活した。このときからデルタグリーンが組織の正式名称となった。
「異星人の技術を諸外国に使わせないために必要な作戦の遂行」がデルタグリーンの主な任務とされたが、デルタグリーンの隊員たちは異星人にはほとんど注意を払わず、深きものどもやカロテキアとの戦いを自分たちの使命と心得ていた。やがて統合参謀本部はそのことに気づいたが、デルタグリーンは南米でカロテキアの残党狩りを行って成果を収めたので、当初の任務を免除されることになった。UFO関連の任務は完全にデルタグリーンの手を離れてマジェスティックの管轄となった。このときから、デルタグリーンとマジェスティックは互いにほとんど関わりを持たなくなった。マジェスティックにとって、デルタグリーンは二次大戦の栄光に浸っている与太者の群だった。そしてデルタグリーンにとって、マジェスティックは人類に対する真の脅威に眼を向けようとしない専門バカの集まりだった。かくして、両者が力を合わせたら解明できたかもしれない多くの謎は謎のまま残された。
1955年1月、デルタグリーンは深刻な痛手を被った。1929年に機密室で『ダゴンの書』を解読し、戦後もデルタグリーンの一線級の研究員として活動していたダニエル=フリースが発狂して、「誓約」作戦で押収された文書をすべて焼き払った上、石板を粉々に砕いたのである。1959年5月には、デルタグリーンの主任であるマーティン=クック准将が過度の心労のために入院した。クック准将は1963年に退院したが、その後はモンタナ州で余生を送り、1968年に自然死するまでデルタグリーンとは一切かかわりを持たなかった。
当時デルタグリーンの中核にあったのはデルタグリーン運営委員会だった。1961年、研究機関や軍から新たに26名がデルタグリーン運営委員会に迎え入れられたが、運営委員会が新規にメンバーを採用したのはそれが最後だった。1960年代のデルタグリーンは必要に応じて様々な政府機関の人間と個別に接触し、彼らに「協力者」の資格と情報を与えるようになったのである。その結果、デルタグリーンは中枢の統制力が弱まり、運営委員会の承認を得ないまま行動を起こす隊員が現れるようになった。
1969年11月、海兵隊のウェイド大佐がカンボジアでの作戦に独断で踏み切った。この作戦は〈黒曜石〉というコードネームで呼ばれ、赤色クメールによる邪神の招喚を阻止することを目的としていたが、無残な失敗に終わった。密林の中で邪神の寺院に突入した軍人たちが300人近く殉職し、生き残って退却に成功した者たちは、無謀な作戦で戦友の命を犠牲にしたウェイド大佐を血祭りに上げた。このことがきっかけとなって統合参謀本部は組織の廃止を決定し、1970年1月24日にデルタグリーンは解散させられた。
1970年の夏、デルタグリーンの元隊員40名がワシントンで秘密裏に会合を開いた。彼らは組織の廃止を不服としており、人類に対する脅威と戦う必要性を感じていた。1971年のクリスマスまでに、デルタグリーンは非公式に活動を再開した。インドシナ半島で数機の爆撃機が進路をはずれ、チョ=チョ族の村を爆撃するよう仕向けることが彼らの最初の作戦だった。司令部も予算もない状態でデルタグリーンは復活したのである。1970年代からごく最近まで、デルタグリーンの組織と呼べるようなものはまったく存在しない状態だった。隊員たちはFBIやCIAなどに務めながら、極秘裏にデルタグリーンの作戦を遂行していった。
当時のデルタグリーンは指揮系統をまったく欠いていた。作戦の過程で得られた情報を収集して組織全体に行き渡らせるための中枢は存在せず、連携の欠如や混乱から活動は多くの失敗を重ねることになった。にもかかわらず一定の成果が上がっていたらしいのだが、この時期のデルタグリーンの活動について知られていることはほとんどない。
二次大戦後、カロテキアに代わってデルタグリーンの最大の敵となったのがマジェスティック12である。墜落したUFOの残骸を調査するために設立されたマジェスティック12はやがてエイリアンと取引を行うようになり、科学・技術を提供してもらう見返りとして彼らの米国内での活動を黙認するようになった。エイリアンの活動は米国市民の拉致をも含むものであり、彼らのしていることに気づいたデルタグリーンの隊員たちはマジェスティックを祖国および人類に対する裏切者と見なした。
デルタグリーンの重鎮であるレジナルド=フェアフィールド陸軍少将はマジェスティックに対して積極的に戦いを挑み、マジェスティックとエイリアンの会見を妨害するなど戦果を収めたが、当然ながらマジェスティックの逆襲が待っていた。1994年、マジェスティックの戦闘部隊であるNROデルタの暗殺隊がフェアフィールド退役少将を襲撃した。フェアフィールド少将は貴重なデータを同志たちに送信し、邪神の眷属やエイリアンに対する徹底抗戦を呼びかけるメッセージを残して斃れた。このことを受けてジョゼフ=キャンプ博士は同志たちを説得し、デルタグリーンを再結成した。
復活したデルタグリーンはAからZまで26の細胞で成り立ち、各細胞にそれぞれ3人の隊員が所属することとなった。細胞の序列はABC順になっており、したがってA細胞が最上位である。また、以下の通りデルタグリーンの綱領が定められた。
デルタグリーンの隊員は78名に過ぎないが、他に多数の協力者を擁する。ただし協力者すべてがデルタグリーンのことを熟知しているわけではない。並の隊員よりも多くを知っているものもいれば、デルタグリーンのごく一部しか知らないものもおり、さらにデルタグリーンの存在自体を知らされていない協力者すらいるのだ。そういう協力者はデルタグリーンの側が一方的に協力者と見なしているだけで、実際にはコマである。第5節で紹介するパーク博士も最初はその種の「協力者」だった。
デルタグリーンはマジェスティックに対する抵抗を続けたが、マジェスティックは米国政府そのものともいえる組織であり、彼我の戦力差は絶望的なほどだった。1999年、マジェスティックの下部組織であるアウトルック=グループとデルタグリーンの間に本格的な衝突が発生し、デルタグリーンはアウトルックのプエルトリコ基地を壊滅させたものの、その代償として大きな痛手を被った。デルタグリーンの頭脳ともいうべきA細胞はマシュー=カーペンターを失い、キャンプ博士も重傷を負って半ば引退を余儀なくされたのである。
デルタグリーンが存亡の危機に立たされたとき、新しくA細胞に加わったのがマジェスティックの幹部ゲイヴィン=ロスである。マジェスティックは主流派と反主流派に分裂しており、ロスはグレイとの同盟を破棄しようとする反主流派の中心人物だった。したがって彼はデルタグリーンと共闘できる立場にあったが、同時に野心家でもあった。ロスがデルタグリーンを手駒として利用しようとしていることをキャンプ博士は見抜いていたが、もはや背に腹は代えられなかった。デルタグリーンは局地的には勝利を収めながらマジェスティックの傘下に入ることになり、D細胞のフォレスト=ジェイムズ大佐はマジェスティックに移籍した。
ジェイムズ大佐はマジェスティックでしばし雌伏の時を過ごしたが、特殊部隊の元指揮官である彼は兵士たちの信望が厚く、密かにマジェスティック内部で同志を得ていた。マジェスティックの実戦部隊であるブルーフライはたびたび神話存在と交戦しており、性格的にはデルタグリーンに近かったため、ジェイムズ大佐の理念に共鳴する者が多かったのである。折しもマジェスティックの最高指導者ジャスティン=クロフトが暗殺され、混乱に乗じて決起したブルーフライの兵士たちは幹部を一斉に拘束した。ジェイムズ大佐はマジェスティックを掌握し、次のように宣言した。
これより、マジェスティックは本来の使命に立ち帰る。本来の使命とは、祖国および市民の防衛である。
かくして、血で血を洗う抗争に一応の終止符が打たれ、デルタグリーンが主導権を握る形で両組織は連合することになった。2001年2月、全米同時多発テロが起きる少し前のことである。
マジェスティックという最大の敵を屈服させたデルタグリーンだが、表向きは解散したことになっているため、その本質は陰謀団に近い。彼らは、旧支配者の眷属や崇拝者と戦うという本来の使命だけでなく、政府やマスメディアから自らの存在を隠蔽することにも心を砕かなければならないのだ。いつの日かデルタグリーンが公的機関の地位に復帰し、人類を守る戦士として正当に認められることを夢見る隊員もいるというが、その夢が叶うときが来るのかは定かでない。
デルタグリーンに相当する組織として英国にはピスケスが、ロシアには参謀本部情報総局第8特務部(GRU-SV8)が存在する。ヴァチカンにも同様の抗神組織があるらしく、ペイガン=パブリッシングの社長アダム=スコット=グランシーがWorlds of Cthulhu の3号で詳細に論じている。また中国政府も神話存在について高度な知識を有しており、独自の機関を擁していると見るべきだろう。さらに、DGの公式設定に含まれるものではないが、デルタグリーンの日本版ともいうべき黒蜥蜴も無視できない存在である。黒蜥蜴についての具体的な説明は他稿に譲るが、DGの世界観を継承しつつ独自の物語を作り上げており、一読の価値がある。
米国政府の秘密機関。グレイと結託し、グレイから科学・技術の提供を受ける見返りとして、彼らが米国内で活動するのを黙認していた。未曾有の経済力・軍事力を有し、米国政府そのものであるともいえる組織だが、2001年のクーデターによってデルタグリーンの支配下に置かれた。なおマジェスティックに関する設定のために、DGはクトゥルー神話にX-FILESの要素を持ち込んだゲームと見なされがちだが、DGが世に出たのはX-FILESにマジェスティックが登場する以前のことなので剽窃ではないと関係者たちは主張している。
マジェスティックは軍隊を動かすこともできるが、その実戦部隊となっていたのは主に二つ、国家偵察局デルタ部隊(NROデルタ)とブルーフライである。NROデルタは凶悪なことで知られ、洗脳や暗殺といった残忍な手段も任務遂行のためなら厭わない。一方ブルーフライは旧支配者の眷属と交戦することが多く、その性格はむしろデルタグリーンに近い。また生体実験を行う研究機関アウトルック=グループなどもマジェスティックの下部組織だったが、非人道的な組織はクーデター以降は廃止されたものと思われる。
マジェスティックは1947年9月24日に誕生し、軍・情報部・学界の主導的な人物12名を中心として構成されていた。国家安全保障会議に直属するということになっているが、これは形式的なものに過ぎず、ジョンソン以降の大統領は通例マジェスティックの存在を知らされていない。マジェスティックは己の存在と活動を極秘の状態に保とうとしており、その一員だったジェイムズ=フォレスタル国防長官は口封じのため1949年5月22日に暗殺された。
1980年10月31日にエリア51でマジェスティックの代表とグレイの会見が行われた。この会見の内容はレーガン大統領に奏上され、米国政府とグレイの間に条約が締結された。市民の拉致を含む種々の活動を米国内で自由に行える見返りとして、グレイは各国の軍事力の詳細な分析結果を米国に提供し、これが冷戦における米国の勝利を決定的にした。米国市民の拉致は殺傷を伴うものであってはならないという当初の条件は頻繁に無視されていたが、新世界秩序実現の野望に燃えるレーガン政権はグレイとの友好関係を保ち、後継者のブッシュ(父)もレーガンの路線を継承した(5)。
グレイの背後にいるもののことをマジェスティックはまったく知らないが、グレイの正体はミ=ゴの開発したロボットである。彼らはミ=ゴが人類を研究するための道具であり、ミ=ゴの思念によって操られている。ミ=ゴは地球で採鉱を行う一方で、人間の精神に深い関心を抱いている。人間はしばしば非論理的に判断するが、それが却って正しい結論に至ることもある。これは人類に固有の特性であり、ミ=ゴにはないものなのである。
マジェスティックの中核となっていたのがマジェスティック運営委員会である。運営委員会は12名の委員から構成されているが、そのメンバーの中に大統領は含まれていない。マジェスティックにはMJ-1からMJ-12まで12の部門が存在し、運営委員会の12名のメンバーが各部門をそれぞれ率いる。予算配分を決定するMJ-1は他の部門に優越しており、その部門長は運営委員長が兼任する。クーデター以前に最後の委員長となったのはジャスティン=クロフトだった。
グレイのことを本心から信用する運営委員は稀だったが、クロフト委員長を始めとする多くの委員はグレイとの同盟に賛成していた。だが同盟関係の維持に公然と反対する委員もおり、委員会は主流派と反主流派に分裂していた。反主流派の筆頭は、MJ-5(6)の部門長を務めるユースティス=ベル空軍中将である。ベル中将はグレイを侵略者として警戒し、彼らに対抗するべく兵器開発を推進しようとしている。MJ-3(7)を率いるゲイヴィン=ロスは表向きは同盟に賛成していたが、実は反主流派として運営委員会の粛清を目論み、クロフトの一派を片づけるためにデルタグリーンを利用しようとしていた。
一時はデルタグリーンを圧倒したかに見えたマジェスティックだったが、内部では深刻な問題が生じていた。理由は不明だが、グレイとの連絡が途絶したのである。同盟は形骸化し、マジェスティックは己の存在意義を見失いつつあった。また、何者にも干渉されることのない絶対的な存在となったことは同時にマジェスティックの弱点でもあった。たとえマジェスティックに問題が発生しても上位機関が修正することができないのである。その結果がクロフトによる組織の私物化であり、そしてジェイムズ大佐によるクーデターだった。前述したように、2001年2月をもってジェイムズ大佐がマジェスティックの最高実力者となり、マジェスティックはデルタグリーンの盟友として再出発した。しかしマジェスティックという巨大な組織をジェイムズ大佐が制御しきれるかは定かでない。粛清を生き延びたロスは今のところジェイムズ大佐に協力しているというが、野心家の彼が新たな火種となる恐れもある。
マジェスティックは邪悪な目的のために発足した機関ではないということに注意しなければならない。それどころか、グレイと結託していた時期ですら、ある意味では国益のために行動していたのだが、デルタグリーンにしてみればマジェスティックは絶対に許されざる存在だった。だが、マジェスティックと自分たちにどれほどの違いがあるのかと悩んだデルタグリーンの隊員もいる。手段が目的と化した組織であるという点において、デルタグリーンとマジェスティックは左右の手のようなものであるともいえよう。
SSの秘密機関。その前身は帝国保安本部第7局に所属する特命部隊Hであり、カトリック教会に対する監視・弾圧が本来の任務だったが、徐々にオカルトの研究および実践を使命とするようになった。後にヒムラー直属の機関となる。おそらく当初はラインハルト=ハイドリヒに率いられており、ハイドリヒが死んだときに帝国保安本部から独立したのだろう。
カロテキアは組織全体の長を持たず、独自に構成するいくつもの班から構成されていた。その活動は多岐にわたっていた。たとえば1941年、コーンウォール沖の海底都市に住む深きものどもとカロテキアが接触した。この時、クラクフ近郊の強制収容所から運ばれてきた1000人のユダヤ人が深きものどもの生贄にされたという。深きものどもを第三帝国の英国進攻に協力させるのがカロテキアの狙いだったが、デルタグリーンは奇襲攻撃を行って計画を頓挫させた。
カロテキアは死者の再生に成功し、戦死した兵士を蘇らせて戦場に投入した。そのようなアンデッド兵は意志も知性も持たず、敵味方の区別なく近くの人間に襲いかかるのが常だったが、とりわけソビエト軍との戦闘で効果を発揮したという。また欧州各地で魔道書を集めてまわり、フォン=ユンツトの未発表原稿を求めてアレクシス=ラドーの墓を暴くなどした。そのようにして収集された文書の多くはソ連邦に持ち去られたらしい。さらに、古のものどもの超兵器を見つけ出すべく南極探検を行ったが、その成果が上がる前に第三帝国は滅亡した。
ヒトラーは死に臨み、カロテキアに対して最後の指令を発した。これは「神々の黄昏」作戦と呼ばれ、全世界を第三帝国の道連れにすることを目的としたものだった。カロテキアがいかなる手段を用いようとしているのかデルタグリーンは突き止められなかったが(8)、躍起になってカロテキアの残党狩りを行い、作戦を阻止しようとした。これを「狂気」(LUNACY)作戦という。結局「神々の黄昏」作戦は遂行されなかったが、カロテキアを殲滅することもできなかった。カロテキアに所属していた164名のうち37名が生き延びて南米に逃亡し、デルタグリーンはカロテキアの残党を殲滅するために「南部の歓待」(SOUTHERN HOSPITALITY)作戦を行った。作戦は1956年までに完了したものと思われていたが、オラフ=ビッテリヒ博士・ギュンター=フランク博士・ラインハルト=ガルト准将(9)の3人がまだ生き延びていた。そして彼らは今日なお生き続けており、カロテキアの三巨頭として知られている。
いったんは三巨頭を残して壊滅したカロテキアだったが、1975年から組織の再建が進められた。新生カロテキアはブラジルのラ=エスタンシアに総司令部があり、三巨頭に率いられている。ビッテリヒ博士の下には、強大な魔力を持つ12人の大幹部がおり、彼らは「僧正」と呼ばれている。また軍事・経済部門の指揮を担当する「騎士」という幹部が数百人いる。カロテキアの本体は総勢数百名に過ぎないようだが、「歩兵」と呼ばれる数千人の戦闘員を擁しているほか、世界各地のテロ組織や極右団体を陰で操っている。
ニューヨークを拠点とする秘密結社。スティーヴン=アルジスを総帥とし、ナイアーラトテップを崇拝するカルト集団だが、ネットワークと呼ばれる犯罪組織を使役することによって巧みに自分たちの正体を隠蔽している。アルジスをナイアーラトテップと同一視するが、自分がナイアーラトテップの化身であることを彼自身は否定している。
マダムAと名乗る謎の女性が1927年にニューヨークに現れた(10)。彼女がニューヨークの上流社会に作り上げたオカルト結社がフェイトの前身である。1930年代に組織の抜本的な改革が行われてフェイトが誕生したが、マダムAは1951年12月に失踪し、それ以後はアルジスがフェイトを率いている。フェイトはDGおよびCoCにおける最強の組織であり、フェイトに比べるとマジェスティックですら取るに足らない存在である。ほとんど無敵ともいえる力を有するフェイトだが、なぜかニューヨークの外側には勢力を拡大しようとしない。
1965年にCIAの外郭団体として創立された貿易会社。非合法の物資や技術をCIAが諸外国に供与する際に使われていた。米国に移住したチョ=チョ族が1980年代に乗っ取り、その資金源である麻薬を米国に密輸するのに利用されている。また、シュブ=ニグラスを崇拝するニューポテンシャル同胞団もタイガー=トランジットの運営に関与している。
チョ=チョ族は風の神々を崇拝し、その領袖ハスターの力の表象である黄の印を奉じるが、彼らが真に危険な存在となったのは実は近年のことである。インドシナ戦争のときに米国がチョ=チョ族を反共勢力として育成したことにより、彼らは力をつけたのである。DGの公式サイトに掲載されている長編小説『エンジェル』には、米国内におけるチョ=チョ族の暗躍が描かれている。なおタインズの解釈におけるハスターは神性というよりも宇宙の力であり、アザトースやヨグ=ソトースに近い存在ということができる。
デルタグリーンの指導者で、コードネームはアルフォンス。第二次世界大戦中は軍人としてOSSに勤め、中国や東南アジアでカロテキアと戦った。二次大戦終結時の階級は陸軍少佐。戦後はしばらくCIAで勤務した後、1947年に復活したデルタグリーンに戻った。解散に追いこまれたデルタグリーンを現在の形で再結成したのはキャンプ博士であり、A細胞の長として組織全体を統率していた。
軍から離れたキャンプ博士は米国議会図書館に司書として勤めていたため、デルタグリーンの総司令部も議会図書館の地下にある。総司令部が敵の攻撃にさらされたこともあるが、キャンプ博士は「光と闇の眼」を用いて議会図書館を守っている。卓越した知性と精神力の持ち主だが、ラバン=シュリュズベリイ教授のような超人ではなく、非情な決断を下さなければならないときは使命感と人情の板挟みになって苦悩することもあった。
アウトルック=グループとの戦いの最中に重傷を負った後は半ば引退を余儀なくされ、ゲイヴィン=ロスにデルタグリーンの運営をゆだねていた。しかしジェイムズ大佐がマジェスティックを掌握したことを知ると、彼やポオに後事を託して最後の戦いに赴き、凶人アドルフ=レプスをアザトースの宮廷へと連れ去ることによって自らの闘争を締めくくった。デルタグリーンの歴史における最大の功労者といえる。
FBI副長官。A細胞に所属し、キャンプ博士と共にデルタグリーンを率いる。コードネームはアダム。1999年、カロテキアのガルト准将に射殺され、アダムの名はゲイヴィン=ロスが引き継いだ。
デルタグリーンの各細胞は3人の隊員で構成されるのが原則である。A細胞も例外ではなく、キャンプとカーペンターの他に3人目の隊員がいるが、その正体は完全に不明である。本名や性別どころか、人間であるかどうかすら定かではなく、ただアンドレアというコードネームが知られているのみである。実は米国政府の高官であるとか、デルタグリーンの「掃除屋」として暗殺を担当しているのではないかといった説があるが、今日に至るまで素性は謎に包まれたままである。
デルタグリーンの隊員。N細胞に所属し、コードネームはナンシー。本名はデブラ=コンスタンス博士。FBIに勤務していたが、魔力を持つ書物『食屍鬼草稿』の呪いによって食屍鬼に変じた。普段は美少女の姿をしているが、戦闘が始まると本性を現して敵に食らいつく。『スタートレック』のファン。
食屍鬼ならではの特殊能力を有するジーンはデルタグリーンにとって最重要の戦力だが、通常の社会生活を営むことはもはや不可能になっている。現在、彼女はN細胞の仲間に面倒を見てもらいながら引きこもりの暮らしを送り、ネットで素性を隠しながら他のトレッキーと交流するのがささやかな楽しみとなっている。人間性の喪失に苦しみながらも人類のために戦い続けているが、隊員が作戦のために使い捨てられていると感じ、デルタグリーンの上層部に対する不信感を募らせている。
なお、DGにおける食屍鬼の扱いはおおむね次のようになっている。食屍鬼は幻夢境とニューヨークの地下を自在に行き来し、自分たちの神としてモルディギアン(11)を崇めるが、モルディギアンはナイアーラトテップの庇護下にある。食屍鬼は本来は中立的な種族だが、伝統派と異端派に分裂している。伝統派は死者の肉だけを食し、生きている人間に危害を加えることはない。異端派は麻薬を好み、ニューヨークで人間を襲っては人肉と麻薬を手に入れている。そしてモルディギアンの穏健な性格を嫌い、ナイアーラトテップがモルディギアンを更迭して別の有力な食屍鬼を自分たちの新しい神に選ぶことを期待している。デルタグリーンはニューヨークの地下で異端派の食屍鬼と戦いを繰り広げている。すなわち、「未知なるカダスを夢に求めて」と「地の底深く」を強引に融合させたような設定である。
デルタグリーンのD細胞に所属していた隊員で、コードネームはダレン。海軍特殊部隊シールのチーム7指揮官(12)だったが、深きものどもとの戦闘で重傷を負ったときの記憶がよみがえって錯乱し、傷害事件を起こした。そのためレヴンワース刑務所に送られたが、デルタグリーンとマジェスティック12の抗争でパーク博士が窮地に陥ったことを知り、アルジスの手引きで脱獄。プエルトリコに乗り込んでパーク博士を救出し、アウトルック=グループの基地を壊滅させた。その後マジェスティックに移籍したが、ブルーフライの同志たちとともに決起して組織を掌握し、新たな首領となった。
ジェイムズ大佐は海軍将校だが、前身が海軍情報部の一部門だった関係でデルタグリーンは海軍とのつながりが深いようである。海軍情報部長官のハーリー=パットン少将はデルタグリーンの協力者で、新しい隊員をスカウトすることもある。
デルタグリーンの隊員。T細胞に所属し、コードネームはテリー。環境保護局に勤務。ジェイムズ大佐に協力してカリフォルニアの集落を調査中、深きものどもの存在を知り、以後デルタグリーンの隊員となる。深きものどもと人間の間に生まれた赤ん坊が射殺される現場をいきなり目撃してしまうなど精神を消耗することが多く、自殺願望を抱くようになったが、それを克服してジェイムズ大佐と結婚。心を病むのはパーク博士に限らず、アルコール依存症や過食症に陥るデルタグリーンの隊員は少なくない。
デルタグリーンのM細胞に所属するアフリカ系の隊員。コードネームはマシュー。ウェストポイント陸軍士官学校出身の退役陸軍中佐。ウガンダでグラーキに遭遇して発狂寸前まで追い詰められたが、シャーマンの修行をすることによって正気を回復し、単身グラーキ教団に挑んで殲滅したという勇士。過去の戦いによって左眼を失い、その傷を隠すために黒眼鏡を着用している。身長2メートル、体重100キロを優に超える巨漢だが、その知性や教養はきわめて高く、精神の強靱さにおいても常人離れしている。アフリカの白魔術にも精通しており、種々の宝具や呪文を駆使して敵と戦う。デルタグリーン最強の戦士だが、敵を殲滅することよりも人間を苦しみから救うことを重視する。
NROデルタの統括指揮官。ゲイヴィン=ロスの部下だが、手を汚したことのない彼を侮り、マジェスティックの支配者になるという野望を抱いていた。筋金入りの殺人鬼であり、きわめて危険な人物。公的な組織だった頃のデルタグリーンに所属しており、〈黒曜石〉作戦の数少ない生き残りの一人でもある。たびたびデルタグリーンに煮え湯を飲ませてきたが、魔皇アザトースの住まう窮極の混沌に敵を自分もろとも連れ去るというキャンプ博士の最終奥義によって滅ぼされた。
デルタグリーンのC細胞に所属する隊員。コードネームはチャーリー。元FBI捜査官。デルタグリーンが公的な機関だった頃からの古参隊員で、〈黒曜石〉作戦の生き残り。その戦いぶりは容赦がなく、アドルフ=レプスですら彼の名前を聞いただけで震え上がるほどである。ジェイムズ大佐とともにキャンプ博士から後事を託され、デルタグリーンの指導者の地位を継承した。
カロテキア三巨頭の一人。1911年生まれ。大戦中アフリカに派遣され、ベルギー領コンゴのアンジック族の集落で終戦を迎えたが、そのときアンジック族と共に自分の部下を食らった。しばらくアンジック族のもとに滞在して彼らの秘術を習得した後、エジプトや中東などを転々としてから南米に赴き、カロテキアの残存勢力と合流した。人肉を常食することによって永遠の若さを手に入れ、金髪碧眼の美貌と超人的な能力を誇る。種々の武器の扱いや格闘術に精通している上、防御力を高めるアンジックの指輪を装着しており、火力による攻撃が通用しない。
三巨頭のうちフランク博士はいったん癌で死んでおり、現在は機械の力で半生者として生きている身なので、空調の効いたラ=エスタンシアの屋敷から一歩も外に出ることができない。またビッテリヒ博士も高齢のために動けないので、騎士たちを率いて実際に行動するのは必然的にガルトの役割となっている。その超人的な力と美貌ゆえにガルトはカロテキアの騎士たちからもっとも尊敬されているが、第四帝国の建設には興味を示さず、もっぱら己の若さの維持のみを心がけている。フェイトともつながりがあり、アルジスに依頼されて仕事を請け負うこともある。
フェイトの総帥。フェイトはナイアーラトテップを崇拝するが、アルジス自身はいかなる神も崇めない。その正体を知る者は誰もいないが、這い寄る混沌ナイアーラトテップの化身ではないかという噂がある(13)。至る所に現れるが、とりわけマンハッタンの高級クラブ・アポカリプスで頻繁に目撃されている。二次大戦後にニューヨークで活動を開始し、フェイトの支配者となった。1930年から15回も死亡が確認されており、1987年にも飛行機事故で死んだことになっている。ほっそりした美貌のアラブ人で、どこに現れるときも一人きりである。常に盛装しており、丸腰である。いつも携帯電話を持っているが、その携帯はどんな場所でも必ず通話できるらしい。
意外にもアルジスはデルタグリーンに敵対する存在ではなく、デルタグリーンの隊員に力を貸してくれることもあるが、彼の真意は不明である。またアルジスの助力を受けるものは、然るべき代償を支払わなければならない。謎に包まれているが、DGひいてはCoCの世界において最強の存在であるということができるだろう。タインズの長編小説The Rules of Engagement では、アウトルック=グループと戦うデルタグリーンの隊員たちに助太刀しつつ、新しい神を創出するという自分自身の目的を達成した。その神が旧支配者に連なる存在なのか、それとも旧支配者に刃向かう存在なのかは不明である。
フェイトの大幹部で、アポカリプスの支配人。ベリアルという通り名でも知られている。フェイトにおいてはアルジスに次ぐ実力者であり、アルジスがフェイトという暗黒帝国の帝王だとすれば、ヒューバートはさしずめ宰相である。ロバート=ヒューバートというのは偽名であり、本名はディーター=シェールという。かつてはSS隊員で、カロテキアに所属していた。
ヒューバートは実はグラーキの従者だが、普通の人間とまったく変わらない外見を吸魂呪文によって維持している。グラーキが降臨するための門をキャッツキル山中の湖に作ろうとしているが、ナイアーラトテップを崇拝する結社の大幹部であることから、他のグラーキ教徒に信仰心を疑われたりもする。Eyes Only 所収のシナリオ"Holy War"で彼の末路が語られている。
かつてペイガン=パブリッシングは『終末の時』というCoCのサプリメントの制作を企画したことがある。それはクトゥルー覚醒後の世界を舞台とした非常に特殊なサプリメントだった。結局ペイガンはこのサプリメントを発売しなかったが(14)、DGは多分に『終末の時』の影響を受けており、CoCと『終末の時』の橋渡しをする存在であると見なすことができる。したがってDGはきわめて終末論的な色彩が強く、人類に残された時間はもう少ないのだということを強く窺わせるものである。
デルタグリーンには戦闘や諜報のプロが揃っており、その力は相当なものである。しかしながらデルタグリーンの敵は途方もなく強大であり、彼らに比べたらデルタグリーンは80人足らずの敗残兵の群に過ぎない。デルタグリーンの戦いは基本的には負け戦であり、隊員たちはそのことを知っていながらも戦いを放棄するわけにはいかないのである。だが、私たちを勇気づけてくれる言葉がある。
異界の敵との長く破滅的な戦いに人類が敗北するようなことがあろうとも、人類の存在と苦闘の物語が無駄に語られたことにはなるまい──C.A.スミス(15)
下記のサイトについては本文中からもリンクを張ってあるが、印刷したときの便宜を考慮し、ここに列挙させていただく。
ペイガン=パブリッシング公式サイト
http://www.tccorp.com/pagan/
ジョン=タインズ氏の個人サイト
http://www.johntynes.com/
『デルタグリーン』公式サイト
http://www.delta-green.com/
湖の隣人の小屋
http://www5d.biglobe.ne.jp/~lake-god/
妖蟲世界
http://www2s.biglobe.ne.jp/~yochu/
黒蜥蜴
http://fairfieldproject.wikidot.com/kurotokage
ラインハルト=ハイドリヒ略伝
http://www7a.biglobe.ne.jp/~byakhee/bios/heydrich.html
デイヴィッド=ファーネル『エンジェル』
http://www.delta-green.com/?p=1807
クトゥルーML
http://groups.yahoo.co.jp/group/cthulhu/
DELTA GREEN
BY DENNIS DETWILLER, ADAM SCOTT GLANCY & JOHN TYNES, 1996
Pagan Publishing
$29.95(USA)
DELTA GREEN COUNTDOWN
BY DENNIS DETWILLER, ADAM SCOTT GLANCY & JOHN TYNES, 1999
Pagan Publishing
$39.95(USA)
DELTA GREEN EYES ONLY
BY DENNIS DETWILLER, ADAM SCOTT GLANCY & SHANE IVEY, 2007
Pagan Publishing
$39.95(USA)
DELTA GREEN TARGETS OF OPPORTUNITY
BY DENNIS DETWILLER & OTHERS, 2010
Pagan Publishing & Arc Dream Publishing
$39.95(USA)
DELTA GREEN ALIEN INTELLIGENCE
EDITED BY BOB KRUGER & JOHN TYNES, 1998
Armitage House
$11.95(USA)
DELTA GREEN DARK THEATRES
EDITED BY BOB KRUGER & JOHN TYNES, 2001
Armitage House
$19.95(USA)
DELTA GREEN THE RULES OF ENGAGEMENT
BY JOHN TYNES, 2000
Armitage House
$13.95(USA)
DELTA GREEN THROUGH A GLASS DARKLY
BY DENNIS DETWILLER, 2012
Arc Dream Publishing
$14.99(USA)
旧支配者の脅威に立ち向かう組織のことを本稿では「抗神組織」と呼んでいますが、これはクトゥルーML管理人・茅野剛史さんが命名したものです。デルタグリーンの正規メンバーは原書では"Agent"と呼ばれてますが、この言葉を本稿で「隊員」と訳したのは赤虫療養所の管理人・寺田幸弘さんの提案に基づいています。また本稿を執筆するに当たり、湖の隣人氏より多大なる御教示をいただきました。各氏の助力なくしては、本稿は完成しなかったことでしょう。ここに御礼を申し上げます。なお、本稿の不備や誤りについての責任はすべて私にあります。