フェイト(デルタグリーン概説補遺2)

竹岡 啓

必然も偶然も私には近づけぬ。私の意志こそは運命(フェイト)である──ミルトン『失楽園』


1.フェイトとは

 フェイトはDGにおいて重要な役割を果たす秘密組織であり、ニューヨークを根城とする犯罪結社である。自ら犯罪を行うよりは、報酬と引き換えに他の組織の仕事を手伝うという形をとることが多い。ほとんど無敵ともいえる力を有し、CoCおよびDGにおける最強の存在であるが、DGのルールブックにおいては未知の部分が多かった。しかしながら追加設定集『フェイト』でその全貌が明かされている。本稿ではフェイトの内幕をかいつまんで説明することにする。

 なお、厳密にいうとフェイトはごく少人数から成るグループであり、ネットワークと呼ばれる犯罪組織をその下に従えている。フェイトとネットワークをひっくるめてフェイトと呼ぶことも一般化しており、本稿ではフェイトという呼称を広義の意味で用いることにするが、本来の意味ではアルジスと大幹部だけがフェイトの正規メンバーである。また、本稿における大幹部・中堅幹部・幹部候補生という呼称は私が便宜的に用いるものであり、実際にそう呼ばれているわけではないということを御了承いただきたい。


2.フェイトの歴史

 フェイトの歴史は二次大戦前まで遡る。1927年、マダムAと名乗る若い女性がニューヨークに現れた(1)。マダムAはその才知と美貌でニューヨークの上流社会の人々をたちまち魅了し、オットー=シュミット博士の協力を得て、オカルトの探求を行う同好会を作り上げた。すなわちフェイトであり、現在の犯罪結社の前身となる組織である。

 1930年10月30日、アマンダ=ドナヒュー=リースという女性がフェイトの本部で切り刻まれて殺害され、その下手人として現行犯逮捕されたチェスター=ウォルシュはフェイトの一員だった。ウォルシュは少なくとも12人を殺しており、1932年に死刑になったが、この事件がフェイトに与えた打撃は大きかった。世論の糾弾や司直の捜査を逃れるために多くの者がフェイトから去ったが、あくまでもマダムAに忠実な一握りの者だけは秘密裏にフェイトの会合を続け、マダムAはその人々に真実を打ち明けた。フェイトの崇拝する神は這い寄る混沌ナイアーラトテップに他ならず、旧支配者の解放を助けて彼らの帰還に備えることこそがフェイトの使命だったのである。しかしながら、希少な書物や品々を得るためには莫大な金が必要であり、フェイトは資金を捻出するために犯罪に手を染めるようになった。

 フェイトが勢力を拡大していくにつれて、他の犯罪組織との軋轢が生じるようになった。神秘的な魔術を駆使するフェイトは畏怖の対象だったが、1951年12月に幾つかの犯罪組織が共謀してマダムAを亡き者にしようとした。彼女の乗った自動車を襲撃した15名のうち11名が死亡、2名が発狂したが、それ以降マダムAは二度と姿を見せなかった。首領を失ったフェイトは急速に衰退し、離脱するものが続出した。シュミット博士は組織の弱体化を食い止めようとしたが、彼にはマダムAの代わりは務まらなかった。

 1953年の春、シュミット博士はスティーヴン=アルジスと邂逅した。どこからともなく現れたアルジスの素性は完全に不明だったが、シュミット博士は彼にフェイトの運営を委ね、自らは相談役の地位に退いて、魔道書の翻訳を行いながら余生を送った。アルジスは速やかに組織を再建すると共に、マダムAの襲撃を画策した者たちに報復し、またフェイトを見限った者たちに制裁を加えた。フェイトは程なく威信を回復し、ニューヨークの暗黒街において不可侵の存在となった。

 現在、フェイトが旧支配者とりわけナイアーラトテップに仕えていることを知っているのは、組織の中枢にいる者だけである。フェイトは他の組織から依頼を受けて仕事をするが、完全に公正を保ち、いかなる組織からの依頼であろうと報酬が支払われれば拒まない。フェイトは闇の中の闇ともいうべき組織であり、その存在を知っている者は多くないが、知っている者は絶対に刃向かおうとしない。アルジス以外のフェイトの構成員は、眼のような形をした痣が左の掌か手首にある。


3.総帥

 フェイトの頂点に君臨するのはスティーヴン=アルジスである。フェイトはナイアーラトテップを崇拝するが、アルジス自身はいかなる神も崇めない。フェイトの構成員の多くはアルジスをナイアーラトテップの化身と見なしているが、アルジスはそのことを認めていない。彼は途方もない大富豪であり、あらゆる言語を流暢に話せるようである。また、電子機器の取り扱いにも精通している。

 アルジスはいずこからともなくニューヨークにやってきたが、そのときの姿のまま今日まで歳をとらずにいる。彼はほっそりとした美貌のアラブ人で、常に盛装している(2)。顔には微笑みを絶やさず、どこに現れるときも一人きりである。いつも携帯電話を持っているが、その携帯はどんな場所でも必ず通話できるらしい。1930年から15回も死亡が確認されており、1987年にも飛行機事故で死んだことになっている。その住所は不明だが、マンハッタンの高級クラブ・アポカリプスで頻繁に目撃されている。彼は誰かに制裁を加えるということはしないが、アルジスの機嫌を損ねてしまった人間は失踪したきり二度と現れなくなる。

 アルジスの正体はDGのルールブックでは不明のままだったが、『フェイト』では明らかになっている。アルジスはナイアーラトテップの化身であり、「終末の時」の到来を準備する存在であるが、彼自身はそのことを知らない。彼は万能ともいえる力の持主であり、現在のことなら一切を熟知しているが、自分自身の過去については200年足らず前までの知識しかない。自分の存在と行為の意義が彼にはわからず、そのため彼は理由を問われることを極度に嫌う。彼の前では「なぜ?」という言葉は禁句なのである。アルジスは己の過去を少しでも確かなものにしておくためにアルバムを常備し、自分が写っている写真をそれに片端から貼っている。

 しかしながら、これはあくまでもひとつの解釈に過ぎないと『フェイト』では断られている。アルジスをいかなる存在にするかは各自が好みに応じて決めてよいということになっており、『フェイト』ではいくつかの例を提示している。たとえばアルジスは『黄衣の王』における「真実の幽霊」であり、ニューヨークがカルコサに吸収される前兆として出現したという解釈である。アルジスは人間の大魔道士であるという解釈もあり、彼の正体がシモン=マグスだというのは人気のある説である。アルジスが旧支配者に仕える存在であるかどうかも確定しているわけではなく、彼はむしろ旧支配者に挑戦する存在であるという解釈も有り得る(3)。


4.大幹部

4.1.ベリアル

 クラブ=アポカリプス(4)の支配人であり、アルジスの片腕ともいうべき存在。「生命の王」の称号を持ち、中堅幹部の任命および監督に当たる。また、バンド「死夢」のマネージャーでもある。もちろんベリアルは通り名であり、本名はロバート=ヒューバートということになっているが、実際はそれも偽名に過ぎない。彼はフェイトの大幹部であると同時にグラーキの従者であり、その中でも最強の存在であるが、彼の素性を知っているのはラインハルト=ガルトやアルジスなど少数の者だけである。

 ベリアルは本名をディーター=シェールといい、1903年にドイツのトルガウで生まれた。彼の父親はトゥーレ協会の一員で、ハインリヒ=ヒムラーと親交があった。ナチスの大物たちと頻繁に交流する環境で育ったシェールは1935年にSSに入隊し、帝国保安本部の下部組織である特命部隊Hに配属された。特命部隊Hはカトリック教会に対する監視・弾圧政策の一環として創設された機関で、異端審問に関する資料の収集を目的としていた。しかし調査が進められるうちに、魔術が本当に力を持つものであることが判明したので、組織の再編が行われて特命部隊Hはカロテキアとなり、魔術の研究を行って第三帝国のために役立てる機関へと生まれ変わった。

 1941年12月、ハンガリーのゾルタという小さな町でドイツ軍の工兵が行方不明になった。その工兵たちはすぐに発見されたが、生命活動が完全に停止しているにもかかわらず動き回っているという奇妙な状態になっていた。その不死の謎を解明するために研究チームがすぐさま結成され、300余名から成るチームの指揮を執るのはシェール上級曹長だった(5)。だが、実はゾルタの近くにある湖にグラーキが現れ、工兵たちを従者にしていたのである。研究チームのメンバーは次々とグラーキの夢引きによって湖へと引き寄せられ、従者に変えられていった。

 1944年12月、ついに研究チームは壊滅した。その時までシェールは夢引きに屈していなかったが、ソビエト軍が進撃してくるのを見て取ると荷物をまとめ、グラーキの待つ湖へと独り歩いていった。シェールは湖のほとりで野営し、それが人間としての最後の晩になった。グラーキの従者になったシェールは渡米し、ロバート=ヒューバートなる人物を殺害して彼になりすました。やがて彼はアルジスに巡り会う。彼から素性を打ち明けられてもアルジスは動じることなく、彼にクラブ=アポカリプスの経営を任せると共にベリアルの異名を与えた。

 現在のベリアルはアルジスの代理としてネットワークを統括する傍らグラーキに仕えており、過去25年間で40人以上の人間をグラーキへの貢物にした。しかしグラーキの従者になってから60年が経過したものは、強すぎる光を浴びると「緑の崩壊」を起こすようになってしまうので、そのことを警戒するベリアルは日中の外出を避けている。彼は異常なほど身だしなみに気を遣い、「崩壊」を連想させるものを激しく嫌う。アントン=メリウェザーによると、ベリアルの目の前で絨毯に飲物をこぼしたばかりに消された人間がいるそうである。またベリアルはSS隊員の制服や装備品を大切に保管しており、たまに眺めては昔日を偲んでいる。

4.2.エマニュエル=ハッチンス

 アルジスと同様にハッチンスも謎の存在である。彼は1950年代にアルジスが連れてきたのだが、それ以来ずっと十代の少年のままである。見た目はごく普通のヒスパニック系の少年だが、370キログラムという有り得ない体重の持主で、高いところに登りたがる癖がある。何週間も服を着替えないことがしばしばだが、彼の体から異臭がするのはそのせいではない。ハッチンスが放っているのは、アンモニアや塩素など薬品の臭いなのである。感情を抑制することができず、己の内心をいつも表情に出しているので百面相のように見える。

 ベリアルはハッチンスの正体を垣間見たことがある。ある時クラブ=アポカリプスのダンスフロアの端にハッチンスが立っていたとき、ストロボが一瞬だけ彼を照らし出した。ハッチンスの背後の壁に映し出された影は少年の影ではなく、もつれ合った巨大な触手の影だった。だが、ベリアルはそのことを誰にも話していない。

4.3.オマー=シャクティ

 『ニャルラトテップの仮面』に登場したオマー=シャクティも現在はフェイトの大幹部になっている。いま彼はエミール=アグデシュと名乗り、フェイトにおいてアルジスに次ぐ地位を占めている。かつてオマー=シャクティが所有していた企業は後述のWEEにすべて買収され、その見返りとして彼はWEEの会長に就任した。

 オマー=シャクティは数千年の探求と研鑽を経た大魔術師であるが、その生涯はことごとくナイアーラトテップに捧げられてきた。這い寄る混沌の意志に従うことのみが彼の生き甲斐である。アルジスがナイアーラトテップの化身だと信じている限り、オマー=シャクティはアルジスに忠誠を誓い続けるだろう。だが、もしもアルジスがナイアーラトテップに挑戦する存在であるならば、そのことを知ったとき彼は死力を尽くしてアルジスに立ち向かうはずである。


5.中堅幹部

 フェイトの中堅幹部は「王」(the Lords)の称号を持つ。フェイトにおいては中堅幹部であるが、ネットワークにおいては頂点に君臨する存在である。魔術や超能力を駆使し、常人にはおよそ不可能なことをやってのける。しかし禁断の知識を究めようとする彼らの人生は破滅と隣り合わせであり、命を落としたり精神が崩壊したりして脱落するものが後を絶たない。後者の場合は最下級の構成員に格下げされ、雑用をしながら一生を終えるのが普通である。一時は8人の「王」がいたが、現在はわずかに4名を数えるのみである。「王」の称号はアルジスから与えられるものだが、人選はベリアルが行う。ベリアルは自分自身も「生命の王」の称号を持ち、「王」の指導および監督を担当している。

5.1.アントン=メリウェザー

 ミュージシャンで、バンド「死夢」のリーダー。「眠りの王」の称号を持ち、ベリアルの高弟である。16歳の時に行った儀式で最初の殺人を経験してナイアーラトテップの崇拝者となり、今日に至るまで無貌の神に生贄を捧げ続けている。彼にとって、それは己の芸術的才能を保つための大事な行為なのである。

 メリウェザーの率いるバンド「死夢」は主にクラブ=アポカリプスで活動しており、少数ながら熱狂的なファンを持つ。彼はミュージシャンとして今以上に有名になることは望まず、フェイトと師のベリアルに仕えることを最大の喜びとする。優秀な暗殺者だが、ベリアルは彼に招喚魔法を教えてやるだけであり、従属魔法は教えてやろうとしない。メリウェザーが魔物を招喚したときに何かヘマをすれば、呼び出された魔物は標的ではなく彼に襲いかかってくることだろう。

5.2.ロジャー=ユル

 「夢の王」の称号を持つ。ベリアルを熱烈に尊敬し、フェイトの大幹部に昇格できる日を夢見ているが、ベリアルが人々から畏怖される存在であるのに対して、ユルは嫌悪される存在でしかない。しかしながらアルジスは彼のことを気に入っているらしい。

 ユルは驚異的な記憶力の持主であり、ペンシルバニア大学とコロンビア大学でいくつもの学士号と学位を取得している。大学在学中にフェイトの幹部候補生となり、短期間で幹部に昇格した。フェイトの所蔵している魔道書をすべて読破しており、幹部候補生に対する魔術の講義を担当する。不眠症と偏頭痛に悩まされており、自らの血を使う魔術を多用するため手は常に絆創膏だらけである。

5.3.アレム=キートリー

 「思考の王」の称号を持つ。あらゆるものには守るべき適切な手順が存在するという考えの持主である彼は一切の物事について厳密な計画を立て、その計画を絶対に崩さずに行動しようとする。また、自分の体を極限まで清浄にしておくという考えに取り憑かれており、ひっきりなしに消毒薬でうがいをする癖がある。さらに週3回の腸洗浄を欠かさず、菜食と飲尿健康法に凝っている。

 キートリーは魔術によって他者の精神を操作するのを得意とし、フェイトの幹部から幹部候補生への指示の伝達も彼が精神感応によって行う。彼は候補生の精神を短時間だけ支配することによって命令を書き取らせるが、その後に残るのは候補生自身の手によって書かれたメモだけである。このため、フェイトの中枢から命令があったという証拠が生じることはない。


6.幹部候補生

 フェイトの幹部候補生は「修練士」(the Neophytes)と呼ばれ、特定の幹部に仕える。入門してから数カ月以内に精神が崩壊して脱落するのが普通であり、そのような場合は最下級の雑用係に格下げされる。発狂の危機を乗り越え、厳しい試練に耐え抜いた一握りの者だけがアルジスとベリアルに認められて幹部に昇格するが、その後も破滅と隣り合わせの日々が続くことには変わりない。


7.雑用係

 雑用を担当する最下級の構成員は「達人」(the Adepts)と呼ばれる。彼らは精神を病んだ人々であり、自分たちがフェイトのために働いていることに気付いていない。組織の最下層にいる人間が組織の存在を知らないというのはデルタグリーン・マジェスティック・カロテキア・フェイトの共通点である。

 フェイトの「達人」が行うのは、メッセージの伝達や現金の運搬といった仕事である。アルジスは不可思議な方法で「達人」に指令を出し、彼らはその指令に唯々諾々と従う。彼らにとってフェイトからの命令は大いなる使命であり、それを遂行することは人生の不可欠な要素である。


8.系列企業

 アルジスはWEE(Whole Earth Enterprises)という企業を経営している。この企業はフェイトの犯罪的な活動とはまったく無縁であり、完全に合法的な存在である。しかし道徳的には大いに問題があり、開発途上国からの搾取と環境破壊によって利益を上げている。全株式をアルジスが所有しており、少なからぬ収益があるにもかかわらず世間の注目を浴びることがない。会長はオマー=シャクティで、ベリアルも取締役の一人である。

 カンニングが発覚して大学から追い出された人間を優先して雇うというのがWEEの雇用の方針である。徹底した成果主義を採用しており、その職場は殺伐とした空気に満ちている。なおWEEの子会社としてCWM(Conqueror Worm Music)がある。この音楽会社はベリアルが名目上の代表取締役を務め、「死夢」の活動に関する一切を引き受けている。


9.敵対者

 ニューヨークの暗黒街においてフェイトはもっとも怖れられている存在であるが、そのフェイトに敵対する人間が少数ながら存在する。

9.1.ヨハネス=ネピアー

 ネピアーはルイジアナでグラーキ教団の祭司をしていた人物で、ついには自らの意志でグラーキの従者となった。そして1980年代の前半にベリアルと知合い、10年ばかり彼の部下として働いた。ベリアルのためにシカゴ大学の図書館から『グラーキの黙示録』の第12巻を奪ったのはネピアーである。

 しかし『グラーキの黙示録』の第12巻に接したことにより、ネピアーはイゴーロナクの支配を受けるようになってしまった。ベリアルはグラーキの従者でありながらフェイトの大幹部としてナイアーラトテップ崇拝に耽り、グラーキを裏切っているとネピアーは考えるようになったが、それはイゴーロナクに精神を操られた結果に他ならなかった。自分がいつの間にかイゴーロナクの従者と化していることに気づかないまま、ネピアーはベリアルを斃して彼から『グラーキの黙示録』を奪うことを自らの使命と心得るようになった。イゴーロナクはネピアーを道具として用いることによって『グラーキの黙示録』の第12巻を手に入れ、それを使って自分自身への崇拝を人類の間に広めようとしているのである。

9.2.ジョージ=ラミレス警部補

 ニューヨーク市警の刑事。フェイトの関与する麻薬取引を捜査中にイゴーロナクの化身に襲われ、重傷を負った。その時からラミレスの精神はイゴーロナクの影響下にあり、彼はベリアルを逮捕することに執念を燃やしている。イゴーロナクはベリアルから『グラーキの黙示録』の第12巻を奪うためにラミレスを利用しているのである。イゴーロナクの化身がラミレスの胸にこしらえた傷は決して治らず、未だに出血し続けている。

 ベリアルの故郷であるドイツのトルガウに旅行したラミレスは、ベリアルの正体がSSのディーター=シェール上級曹長であることを突き止めた(6)。自分の得た情報をラミレスは報告書にまとめ、それをイスラエル大使館に送った。ラミレスの報告書は冗談もしくは妄想として笑いものになりながらも、トーマス=ローゼンブラット准将のもとまで辿り着いた。

9.3.トーマス=ローゼンブラット准将

 イスラエル軍の特殊部隊サエレト=マトカルの指揮官。イスラエルの国民的英雄で、著名なナチハンター。第二次世界大戦中にカロテキアと交戦し、その恐るべき力を目の当たりにした。ラミレス警部補がイスラエル大使館に送った報告書が自分のところに辿り着いたとき、それを冗談として一笑に付そうとはせず、カロテキアの残党がニューヨークにいるという情報に興味を抱くようになった。


  1. 今日に至るまでマダムAの正体は不明だが、エジプト第6王朝の女王ニトクリスの復活した姿ではなかったかという説がある。
  2. アルジスの服は非常に高価なものだが、彼は身なりに気を遣うわけではない。ベリアルはそのことを忌々しく思っており、アルジスに近寄ろうとしない。
  3. たとえばウィリアム=ティミンズ氏のサイトでは、アルジスの正体について独自の見解が発表されている。
    http://wtimmins.tripod.com/DG/endtime/
  4. クラブ=アポカリプスはフェイトの活動の最重要拠点だが、アルジスが所有しているわけではない。アポカリプスの真のオーナーが誰なのかはアルジスとベリアルしか知らないといわれている。
  5. 300余名といえば1個中隊を超える規模であり、将校が率いるのでなければおかしい。それに、ヒムラーと懇意だったシェールが最後まで下士官のままだったというのは妙である。あるいは上級曹長(Hauptscharführer)と大尉(Hauptsturmführer)を取り違えたものか。DGのルールブックはルドルフ=ヘスの肩書きを帝国元帥としたりしており、第三帝国に関しては信用がならない。
  6. 『フェイト』の設定に基づく。DGのルールブックではラミレスのドイツ旅行は何の成果も上げなかったということになっており、ルールブックと『フェイト』の記述には矛盾が見られる。