かつてポオの歩みしところ

ハワード=フィリップス=ラヴクラフト

この地を永久に覆うのは影
過去の世紀を夢見る影
墳墓の傍ら 楡の巨木は厳かに聳え
過去の秘められし世界の上 高々と穹窿を成す
あらゆる景色の周り 記憶なる光明が揺蕩い
枯葉は囁く 過ぎ去りし日々のことを
逝きて帰らざる音と景色を思う

独り物悲しく 亡霊は逍遙す
かつて生きたる彼が足跡を印せし路を
凡庸の人は彼を眼にも留めぬ 彼の歌は
神秘なる魅力と共に時を経て鳴り響きたれども
ただ僅かに魔法の秘密を知る者のみが
墓石の直中にポオの影を認む


聖ヨハネ墓地

ロバート=H=バーロウ

暗く銘じられし墓石が果てしなく立ち並ぶ
今 朧なる夕陽がその周りに降り注ぐ
黄金に蒼白に 小道に墓に枝に
墓石は密かに見つめる 物憂げな眼で
流れる月日に埋もれし時代を偲ぶ

闘争も愛も涙も 今や一切が静まり返り
さながら落葉の如し そを通じて聞こえるは秋の溜息
ひとつの世紀が落葉より儚くなりうるとは
眼を凝らせば 物語と記憶が混じり合う
もはや失われざる 半ば忘れ去られし日々よ……

あるいは影が蠢き あるいは影が姿を見せる
生にも死にも見捨てられし 孤独なる姿
流謫の詩人ポオ 夜と嵐の人よ