マーケットストリートのドン=キホーテ

クラーク=アシュトン=スミス


陰鬱なる騒音を絶えず立てつつ自動車が通り過ぎ
抑えることを知らぬ狂信者どもが
憤怒なる悪霊に駆り立てられているかの如く
人々が動き回るところ ロシナンテに跨りて
見よ! キホーテが征く 着古した鎖帷子を
痩躯にまとい その眼光は 高みの巣より彼方を
見つめる野生の鷹の如し 左右に注意を払いて
顔に軽蔑の光を閃かせ
戦場の陽光にて青銅の色に焼けたる
頬を引きつらせる そして籠手の下では
彼の手が槍を強く握りしめる さながら
彼に立ち向かう敵がいるかの如し はたまた
救済されざる過ちを見て苛立ちを募らせるが如し……

勇ましき幽霊よ いかなる幻想が汝の鞍に取り憑き
かかる場所へと汝を導きたるや? 汝の物語は終わった
あらゆる主義主張の 誇り高く高貴な伝説は失われた──
一本の消えざる松明が暗黒の時代を照らし出すのみ
ここより去られるがいい 狂乱の勇士よ
勝ち取るべき名誉など 栄光などない場所なれば
ラ=マンチャの騎士よ 過去へと引き返されよ
その華麗なる行進の直中 永久に騎乗の人であれ
雷にて駆動され 沈黙へと至るまで回り続ける
鉄の破砕機に挑むなかれ 煤煙が天空を汚す
その煤煙にも染まらぬ星々の彼方へと 騎士道は
飛び去った 騎士の物語もまた去りゆくもの
いずれ来る時代には取り壊されるであろう
塔の上に その旗印を翻して
無価値な戦いに汝の義侠心を空費するなかれ
なぜなら 汝の精神を苛立たせるものどもはすべて
時とその復讐の御使いが破壊するのだから そして
儚く朦朧たる廃墟へと変えられるは この伏魔殿の
立ち並びたる道 運の尽きたるものどもを モレクと
マンモンが飼うヒンノムは踏みにじられるのみ