海の循環

クラーク=アシュトン=スミス


断崖の下 御影石の階の前で
波の飛沫は渦巻き 蒼天に舞い上がる
無数の羽根飾りのように限りなく
幾星霜を閲した入江より甦る
海草と磯巾着をまとった大波は
人魚の四阿より陸へと押し寄せる
水に浸りし浜辺から引き離された貝殻と小石は
虹の出でし砂上で空しく揺蕩う
緩やかなる潮は黒き海原の直中で
財宝を積みしスペインのガレオン船を揺り動かす
そして間違いなく しばし待って眼を凝らせば
セイレーンの島で難破した はたまた
サトゥルヌスの鉄鍵にて打ち砕かれたガレー船の円材が
回帰する海より現れ我らの眼前で渦巻くだろう……

愛しい人よ 深淵の大神ノーデンスに祈ろうか?
君と私に今一度 我らが留めておけなかった
愛に充ち満ちた時間をもたらしたまえと
その時はあまりにも早く西風に吹かれて波間へと消え
糸杉と草の間で渦巻いているのだ
祈りが空しくとも 願いは叶うはず
なぜなら荘厳なる周期は今なお引いては満ち
悠久の昔に失われしものを再びもたらすのだから
海が奪いしものを すべて海は返す
いかにしてか どこか大洋に選び出された岸辺で
我ら二人は再び逍遙する そして留まりはするまい
金色に輝く昔日という漂着物を見出したれば