水色になっているのは、バーロウが執筆した部分である。
ダム=ボルは六つの眼をそれぞれ望遠鏡に押し当てていた。彼の鼻から伸びている触手は恐怖のあまり橙色に染まり、彼が背後のオペレーターに報告を口述している間、その触角はブンブンとかすれた音を立てていた。「来たぞ!」と彼は叫んだ。「あの虚空の染みは、我々の知っている時空連続体の外からやってきた艦隊に他ならない。こんなものが現れたことは未だかつてない。敵に違いないぞ。星間通商会議に警報を発してくれ。一刻の猶予もならない──この調子だと、奴らは600年以内に我々に襲いかかるはずだ。ハク=ニなら、あの艦隊とすぐに交戦を始めてくれるかもしれん」
超銀河警備隊の怠惰な平時の楽しみである『ウィンディーシティ=グラブ=バグ』から私は眼を上げて一瞥した。同じ釜の毛虫カスタードを幼少の頃から食べてきた若いハンサムな植物と一緒に私はカストル=ヤの内次元都市の混乱の直中に放り込まれたのだが、彼はまことに心配そうな表情を薄紫の顔に浮かべていた。彼から警報が伝わると私たちは宇宙バイクに飛び乗り、外惑星カストル=ヤへと急いだ。そこでは星間通商会議が開会中だった。
28平方フィートの広さがある(そして非常に天井が高い)大会堂では、近辺の宇宙にある37の銀河系すべてから派遣された使節たちが集合していた。通商会議の議長にしてミリナー=ソビエトの代表であるオル=ストフは威厳をこめて、眼のない鼻をもたげ、大勢の聴衆に話しかけるのに備えた。彼はノヴ=コス出身の高度に進化した原生動物であり、熱波と寒波を交互に放射することによって話すのだった。
「紳士諸君」と彼は放射した。「恐るべき災厄が迫りつつあり、そのことに諸君の注意を集中していただく必要があるように思われる」
様々な種からなる聴衆の間を興奮が波の如く伝わっていき、誰もが熱狂的に喝采した。手のないものは触手をこすり合わせた。
彼は言葉を続けた。「ハク=ニ、登壇していただきたい!」
雷に打たれたかのような沈黙が下りた。その間、微かな誘導の言葉が目もくらむばかりの高みにある演壇から聞こえてきた。黄色い毛皮の勇士ハク=ニは我が軍の司令官であるが、無数の器具を伝って、床から何インチも上にそびえている演壇まで登っていった。
「同志諸君──」後部から生えている肢を表情豊かにこすり合わせながら彼は話しはじめた。「この高貴なる壁や柱が我が弁舌を嘆かぬよう……」彼のおびただしい親類の一人が拍手した。「私が思い出すには……」
オル=ストフが彼の話を遮った。「私の考えていることや命令は予期しておられるな。出撃し、懐かしの星間世界のために勝利していただきたい」
2段落の後、我々は無数の星々を通り過ぎて上昇していった。長さ50万光年に及ぶ微かな染みが星空に見られ、憎むべき敵の存在を示していたが、我々はまだその姿を眼にしていなかった。いかなる醜悪な怪物が無限の衛星の直中で蠢動しているのか我々は実際には知らなかったが、全天を覆い尽くすまで着実に増大していった輝きには、悪意に満ちた脅威があった。すぐさま染みの中に点々と物体が見分けられるようになった。恐怖のあまり硬直した私の眼前には、はさみの形をした宇宙船の果てしない列が広がっていた。まったく馴染みのない形の宇宙船だった。
そのとき、敵のいる方角から恐るべき音が聞こえた。それが歓声そして挑戦の叫びであることがすぐにわかった。触角を直立させ、未知なる外宇宙の深淵から我々の清澄なる世界へと侵入してきた怪物どもとの戦いに備えると、私は敵の叫喚に応じて体がぞくぞくした。
その音はさびたミシンの立てる音に似ていたが、もっと怖ろしいものであった。ハク=ニもまた挑むような態度で鼻をもたげ、艦隊の艦長たちに傲然と指令を放射した。即座に巨大戦艦が戦闘態勢に入ったが、戦列から幾光年も離れたところにいる艦は100隻か200隻に過ぎなかった。
(未完)