ヘッド・テールライトの高輝度LED化




電気機関車編

 Spur Z Roomに出入りするようになって間もなく、高輝度LEDによるヘッドライト照度の向上に興味を持ち始めた技術部長。さらに低速運転に有効なPWM制御から副次的に得られるLEDの常点灯効果を試したくなり、機関車の改造を決意します。習作として4個、さらに技術向上と不良電球の交換とを兼ねて2個を製作し、当時の主力機関車3両分になりました。


試作1号



 記念すべき?試作1号です。抵抗を使用したSpur Z Roomの作例に倣って、CRD(定電流ダイオード)を枕木方向に配置しています。抵抗よりも小さいのだから十分収まるはず、と気楽に作業したのですが、実は試験に供したE40の導光材がかなり大きく、見事に引っかかってしまいました。そのままでは車体をはめることができず、CRDを基盤側に押し込んだり、リード線部分を曲げなおしたり、余分を切り詰めるなどの作業をしますが、どうやっても干渉してしまいます。とうとう溶着してあった導光材が外れてしまいます。まあ、おかげでどこが干渉するのかわかるようになりましたが。とりあえず、殆ど干渉しなくなりました。
 チップLEDは3020サイズの日亜NSCW100を、CRDは15mAを使用しました。出力半開で定格電圧に達し、輝度がやや高めですが、ライト部分が小さいので丁度良いくらいです。以後もこの部品構成で製作します。

 後の試作品では部品配置を変更しますが、これについては着脱の不便さ以外は問題が無いため、修正されずほったらかしです。
 BR85での結果をフィードバックし、電球色になるよう塗装しました。




試作2号



 続いて製作した試作2号です。試作1号の配置では車体をまっすぐに被せることができないので、配置を変更しました。CRDが標準の電球よりもやや短く、LEDを組み合わせても導光材の中に収まることが分かりましたので、CRDを線路方向に配置してみました。接点端子の接触面積を増やそうと、CRDのリード線を?形に曲げたため、全長が伸びてしまい、そのままでは導光材に干渉してしまいます。無理やり押し下げて何とか収まっています。電球色表現を試すためにタミヤ・アクリルカラーのクリヤーオレンジを塗っています。当初は正面のみを塗装したのですが、ケーシング全体が光るため全面塗装としました。また、塗装を薄くすると素子の持つ青い発光色と干渉して紫色に光ってしまうため、厚塗りせざるをえなくなり、電球色というより麦球色といった感じでしょうか。輝度は純正電球と同程度に落ち着きました。
 BR85での結果をフィードバックし、一旦正面の塗膜を剥離した上で、電球色になるよう塗装しました。ケーシング周囲は元のままなので、他のものに比べると少し濃いようです。




試作3号



 試作2号製作の余勢をかって、試作3、4号を製作し、BR151に装着することにします。試作3号はリード線の曲げ方を少し変えています。?の頭の部分を上向きに曲げています。これによって全長が過大となるのを抑えることができました。問題は工作がとんでもなく難しいことでしょうか。左右の突出量の調節がしづらかったのでした。
 BR85での結果をフィードバックし、電球色になるよう塗装しました。




試作4号



 試作3号では工作が複雑化してしまったので、試作4号では思い切って単純なL字曲げにしてしまいました。工作は単純になりましたが、端子接触面積がやや減ってしまったようです。この程度で光量に目立った変化は出ませんでした。工作の容易性から、この構成が以後の標準工法として採用されました。
 BR85での結果をフィードバックし、電球色になるよう塗装しました。




試作5号



 試作5号は、4号と同じ仕様です。電球に不具合のあったBR103.1に施工しました。リード線の曲げ方の関係で、端子接触面積は半分程度になってしまいました。
 BR85での結果をフィードバックし、電球色になるよう塗装しました。




試作6.1号



 試作6.1号です。訳あって特製品です。納入の時点で、車体側基板先端に内蔵されるダイオードセレンが損傷して極性がなくなっていました。そのため、これまでの試作品でリード線を使用していた下側の配線を整流ダイオードにした試作6.0号を用意しました。ダイオードが付いた分、LEDの角度調節がやや困難でした。ゴタゴタの後、試作6.1号が搭載されました。
 6.0号はどうしたのかって? こうなりました…。
 BR85での結果をフィードバックし、電球色になるよう塗装しました。








制御客車編




試作1号



 機関車の次は制御客車も用意しましょう。電球色の表現に課題が残っているので、とりあえず白色のままで使えそうなSilberlinge更新車(Mint-Green)に施工することにします。
 機関車用の試作品から遅れること約10ヶ月(2007.6.19)、Silberlinge用のユニットが完成しました。チップLEDは機関車と同じ3020サイズですが、豊田合成E1S35-AW0C7-01を使用しています。CRDは両方とも15mAを使用しました。ヘッドライト用LEDが斜め上方を向いていますが、これは屋根側ヘッドライトや行先表示板へ導光しなけらばならないためです。当初はテールライト用とともに真正面を向けていたのですが、位置が道光材よりもかなり前進していたうえに、LEDの指向性の関係もあってうまく光らせることができなかったためです。NSCW100はケーシングの透過性が高いために全体が光ってしまうのに対して、E1S35-AW0C7-01は真正面しか光らないのです。テールライト用LEDは、左右の明るさにばらつきが出る傾向があったため、やや右に向けて取り付けてみました。こちらの場合は、LEDの指向性のおかげで屋根側ヘッドライトや行先表示板に殆ど影響が出なかったのは幸いでした。
 機関車に比べてライトが大きいため、明るすぎるのではという懸念があったのですが、ヘッドライトは斜め上方に向けため、同程度の明るさに落ち着いています。LEDを搭載するメルクリン製品では、テールライトはヘッドライトに比して明るく感じられることが多いのですが、今作ではクリヤーレッドをかなり厚く塗ったたためか、LEDの角度が異なるにもかかわらずほぼ同じ明るさに揃ってくれました。
 他の制御客車もこの仕様で製作します。(実はその後施工していない…)
 BR85での結果をフィードバックし、電球色になるよう塗装する計画が出されたのですが、このヘッドライトはHIDに改修してあるんだと主張して白色のままにしています。








蒸気機関車編




BR85編



 社長の道楽でBR85が納車されました(2009.2.20)。元々ヘッドライトにLEDを採用しているので、加工の必要は無いはずだったのですが、どうも前位側がやたらと暗いのです。後位は十分明るいのですが…。前所有者からそういうものであるという前提で買い受けたものの、やはり何とかしたいところです。


 早速調査に取り掛かります。後位がチップLEDから直接照射しているのに対して、前位は煙室内のLEDからフロントデッキ下を長い導光材で複雑に屈折しながらデッキ上のヘッドライトまで引き出していることが原因のようです。損失を補うためにLEDの輝度を高める必要がありそうです。
 翌日は早速製作に取り掛かろうと思っていたのですが、ちょっと気になることがあったのでLEDの最大輝度を確認することにします。どう考えても一般的なLEDに比べて輝度が低いのです。調整用の抵抗を強めに掛けてある可能性もあります。LEDにパワーパックの出力を直接掛けてみると、やはり途中で抑えてありました。照度が低い根本の原因はこっちかもしれません。どうやら出力が上がるごとに赤みが強くなってしまう特性を持っているようです。自然な色を保つための苦肉の策だったのかもしれません。とはいえ、暗いまま放っておいては安全に差し障ります。導光材に至近距離から高輝度チップLEDの光を当てる方法を検討します。ライトケースが元々かなり広いので、3020サイズの豊田合成E1S35-AW0C7-01を使うことにします。お気に入りは日亜NSCW100ですが、ケーシング全体が光るため、元のLEDと同様にライトケースの隙間から光漏れを起こしかねません。E1S35-AW0C7-01なら正面しか光らないので都合がよいのです。プラ板から台座兼絶縁版を切り出し、リード線の足を付けたチップLEDと共にケース内へ押し込みます。


 やはり効果は絶大で、導光材付近の隙間からも光漏れが起きるほどです。側面の抵抗をバイパスしてCRDに置き換えるのも良いのですが、十分な輝度に達しているので、このまま塗装による電球色化の試験に移ることにします。

 一日空けて色味の調整に取り掛かります。E40の時(試作2号)はクリヤーオレンジの原液を塗布したために濃くなりすぎたので、今回は色の濃度を下げてみることにします。まずはクリヤーで半割り位にして試してみます。LEDの発光面にさっと一塗り。乾燥するまでしばし休憩…。
 触れても大丈夫なくらいになったところで、点灯試験です。結果は…、


 このとおり、幸いにも丁度良い色に仕上がりました。今後の電球色表現はクリヤーオレンジの半割りで進めることにします。

 残るは導光材の光漏れ対策なのですが、その前に、余っている半割りクリヤーオレンジを使い切ってしまうことにします。せっかくいい色が出せる塗料があるので、白色のままほったらかしの電気機関車用LEDに塗っておきましょう。

 電気機関車も全車がいい電球色になったので、BR85の作業に戻ります。光漏れ対策として、導光材に銀塗装を施してみようと思います。光ファイバーだったら塗装してはいけないと聞くのですが、ファイバーじゃないからと気にせずアクリルラッカーのシルバーでささっと一塗り。


 このように塗り上げたところで点灯試験を。あれ、暗くなっちゃった。これはな、ちゃうねん。すぐにうすめ液で剥離です。綺麗に剥がすと元通りに点灯します。銀の粒子が粗いのがいけないのでしょうか。光漏れも止まらなかったし…。
 ならばと、つや消し黒に替えてみます。あれ、暗くなっちゃった。これもな、ちゃうねん。ちゃうねん、ちゃうねん…。やはり導光材への直接塗装は良くないのでしょうか。

 塗装は失敗だったので、遮光シートを巻きつける方法にしてみます。黒塗りの薄紙で、と思ったのですが、丁度いい厚みの紙が無かったのと、紙程度ではやはり透ける気がします。ふと思い出したのが、遮光といえばアルミホイル! 早速控室のキッチンへ。
 ありませんでした…。どうやら今の拠点に移転した際に、もう使わないだろうと放棄してしまったみたいなのです。どうするか…。おや、コンピュータから外した基盤が転がっています。ホイル包みで! これ幸いと、端のほうを少し分けてもらいます。で、しっかり包んだのがこれ。


 いきなり巻こうとしたら滑って巻き付けるどころではなかったので、微量のゴム系接着剤を使用しています。余り大量に塗布してしまうと、塗装したときのように失敗してしまいます。左側が実際そうなってしまい、肝を冷やしました。アクリルラッカーうすめ液で綺麗に除去してやり直します。細かく屈折した部分も丁寧に巻いておきました。巻いては点灯試験を繰り返して仕上げていきます。アルミホイル外面が鏡のように光を反射しているようでもあるので、根元の部分をつや消し黒で塗ってみました。全て巻き終わってみると…、


 このとおり、光漏れはなくなりました。正確には完全ではなく、デッキの奥のほうで漏れているようなのですが、きっちり真正面から覗かない限り見えるものではないので、特に対処はしないことにしました。工程5日(実作業4日)で完了です。

 実は、この直前に側面の抵抗が接触不良となってしまい、点灯しなくなるという事故がありました。当初は原因がはっきりせず、あちこち弄っているうちにLEDの配線が外れ、それを修復しようとハンダ付けしたらLEDが熱損傷を起こして再起不能になり、結局新製する羽目になり、というわけで、修復に翌朝までかかってしまいました…。LEDを替えたので、電球色の色身も少し変わってしまったようです。