熊野本宮大社から山間の道を抜けて峠を一つ越えた谷あいに、 硫黄の臭いがただよう小さな温泉街、湯の峰温泉があります。 湯の花の化石でできた薬師如来の胸からお湯が湧きだしたという伝説から 「湯の胸」転じて「湯の峰」になったという話が残る温泉の中心部には、 薬師如来を祭るお堂が建っています。
温泉街の中心を流れる川の底にあるのが「つぼ湯」。 一度に二人しか入れないぐらいの小さな穴が湯船で、前の人が出てくるまで 小屋の入口で順番待ちをします。お湯はたいてい白濁していますが、 七色に変化するとも言われており、小栗判官がこのお湯で病を癒したという伝承や、 子宝の湯としても知られています。
温泉街の中心に建つ老舗中の老舗旅館があづまや。 こじんまりした露天風呂は品の良さを感じさせます。 浴室は建物も床も湯船も木が使用されており、大きめの湯船(槙風呂)には 温泉に水を加えて適温にしたお湯が注がれ、小さい湯船(さまし湯)には 温泉を少しずつ注ぐことで水を加えずに適温にしたお湯が入っています。 また、浴室のすぐ横にある源泉を利用してむし風呂も作られており、 暗い中へと入ったとたんに猛烈な湯気と硫黄臭に圧倒されます。 日帰り入浴が可能な時間帯はたった2時間(13時〜15時)しかありませんが、 500円という料金は格安と言ってよいでしょう。是非のんびりと堪能してみてください。