「別に、理事長から「いつまでに答えを出せ」とかは言われてないんだろ?…どっちを選ぶ

にしても、ゆっくり考えて決めた方が良いよ」

 安心させるように弘人が優しく微笑んだのを見て、舞にも笑顔が戻った。

「うん……。そうだな」





「ところで、舞?」

 突如、話を変えるように明るいトーンで声を出した弘人に、舞は首を傾げる。

「ん?」



「俺は今回も、結構重要な役目を果たしたよね?」

「へ?あ、…うん。ちゃんと英語のテスト受けられたのも、弘人のおかげだもんな」

「俺もご褒美ほしいな?」

 カワイコぶって小首を傾げながら自分の唇を指差している弘人に、舞は目をむ開いた。



「はっ!?」

「俺達の間でご褒美≠チて言ったら、チュウに決まってるよね?」

(いつ決まった!?)

「……ね…、ねずみのモノマネ?チューチュー、…なんつって」
    まぎ    ご ま か
 苦し紛れに誤魔化してみると、無言のままで弘人の笑顔が深まり、なぜか恐怖で背中が
あわ 
粟立った。



「わっ、わかったよ!目ぇつぶれっ」

「あ、今回は逆ね?俺からするから、舞が目つぶってて」

「う……、なんで…」
                                  そこ                  もん
 どっちでも一緒だろ、と舞は思ったが、これ以上機嫌を損ねるのは恐ろしい気がして、文
 
句を言いつつも素直に従った。


            ほほ
 目をつぶった舞の頬にそっと触れ、優しく撫ぜる。舞の体がビクリと震えたのを見て、いと

おしさに胸が高鳴る。
                                       もら
(俺だって損な役回りで頑張ってるんだから、これくらいの報酬は貰っても良いよね?)

 弘人は、舞の男にしては綺麗な唇に、思いを込めて自分の唇を重ねた。



(な……な…、長くないかっ?てゆーか…、うわっ口動かすなっつの!こそばゆい!!)
                がゆ                        たま
 弘人が動くたびに、むず痒いような感覚が唇に広がり、なんとも居た堪れない。

(俺たち何やってんの?大丈夫なのか?俺と弘人は友達だよな?なんか変な方向に進ん

でないか!?)



 一瞬で終わると思っていたはずが、異常に長い弘人のキスに、舞の頭はパニック寸前だ
         とつじょ
った。しかし、突如響いた教室前方の扉が開けられる音に、ガガッと座っていた椅子ごと後

方へ引き、反射的に弘人から離れた。



「っ!!」
                  なな                 い か
 恐る々々、視線を扉のある斜め前方へ移すと、そこには如何にも可愛い甥っ子の衝撃

シーンに固まってます≠ニいう雰囲気で立ち尽くす千歳の姿があった。



「……まー…くん…」



ギャアアアァァァァ!!




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Fallin'

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