「舞ちゃん、何してんの?」 なかつがわ とびと 舞が休み時間を利用して英語の試験勉強をしていると、クラスメイトの中津川飛鳥が珍し い物でも発見したように近寄ってきた。 「見りゃわかんだろ。テスト勉強だよ。ってか、『舞ちゃん』って言うな!」 「うわっ、真面目さんだな〜。何?テストで良い点取ると、なんかご褒美でももらえんの?」 するど … 鋭い。 まあ、若者の勤勉意欲なんて、そんな物なのかも知れないが。 舞は、フフンと鼻を鳴らすと、 「まあな。しかも、うまくいけば人生最大のご褒美になる予定だ」 ほこ と、勝ち誇った顔で口角を上げた。 「ほぉ〜、そりゃあ気合も入るってもんだな。ところで、ご褒美の条件は?学年トップ≠ネ ら、俺も譲れないぜ?」 とびと そうなのだ。この中津川飛鳥という男は、ちゃらちゃらした外見に見合わず入学試験を トップの成績で合格し、入学式では新入生代表として壇上で挨拶したのだった。管内一の 進学校である砂原北高に行く予定だった事はある…。 ……まあ、自分に好意を寄せる女生徒を集め、ハーレムを作るという野望を抱いていた はずが、入試の日に寝坊した…という話は結構有名なエピソードなのだが……。 「英語100点。別にお前がトップだろうと、ビリだろうと、俺にはカンケーねーよ」 「ふぅん、それで英語やってる訳だ。何なら、俺が教えてやろうか?俺のばーちゃん、イギリ ス人なのよ」 「へえ〜…」 それも良いかもな…と、気持ちが傾くが、次の瞬間固まった。 「んで、100点取れたら俺にもご褒美な?ん〜と…、キス一回でいいや」 「駄目だよ」 前の席で背中を向けていたはずの弘人が、いつの間にか笑顔でこちらを向いていた。 「中津川…。舞に手を出したら……、浅倉にも何かするよ」 えつし とびと 聞こえていたらしい悦司が、ギョッとした顔で振り返る。それじゃなくても普段から飛鳥の たま 過剰な愛情表現に疲労させられているというのに、こんなとばっちりは堪らない。 すご 「こわっ!悪魔!ここに悪魔がいるぞっ!笑顔で凄い事言いやがった!」 「別にひどい事をするとは、一言も言ってないけどね」 おまえ てゆーか、弘人も同じ事俺に要求したばっかじゃねーか…と舞は思ったが、弘人の笑顔 が怖かったので、言わずにおいた。 放課後、舞は校内の図書館で少し勉強してから参考になりそうな本を何冊か借りて帰ろう と、中庭へ足を踏み入れた所で、校舎の影によく見知った後姿を見つけた。 「ちーちゃん…」 しかし、様子がおかしい。千歳は3人の生徒に囲まれ、その生徒たちは一様に下卑た笑 いを浮かべている。 (…って、からまれてる!?) 「テメー等何してんだ!!」 |
Fallin'
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