ら
「テメー等何してんだ!!」



「!!」



「ああ?何だお前」
                                 い と こ
「あ、俺コイツ知ってる。二階堂センセの親戚だよな?従兄弟だっけ?」
 おい 
「甥だ。ぶぁか」
             かば
 舞が、千歳を背中に庇いつつ吐き捨てると、「ぶぁか(バカ)」に反応した一人が、眉間に

しわを寄せた。

「つーか、何コイツ。二階堂の親戚の癖に生意気じゃね?」



「…んだと、コラ」



 「二階堂の親戚の癖に」とは聞き捨てならないセリフだ。そもそも舞と同じ茶色のネクタイ
                                       いわ
をしている彼等は一年生で、同級生に「生意気」呼ばわりされる謂れは無いのだが、それよ

りも千歳をも馬鹿にした様なその言葉に何よりも腹が立った。

 しかし、ジャリッと一歩踏み出した舞の肩を、後ろから千歳が押さえた。

「まーくん…、ダメ」

「ちー…――」



「ブッ!『まーくん』だって!ダッセー!!」

「アハハッ!ひょっとして、『まーくん』も理事長のお手付きでしゅか〜?」


                      
 その瞬間、舞の全身の血が怒りに沸いた。

「っざけんな!!」

ゴッ!!

 舞が繰り出した右ストレートが、一人の左頬にクリーンヒットした。すかさず別の一人に標

的を移すが、三人目に、後ろから抱え込まれるように首と左腕を締め上げられ、動きを封じ

られる。



「テメェ!ゴラァ!!」

「ぶっ殺せ!!」



「やめなさい!!」

 殺気立つ三人組みの声に、危機感を感じた千歳が咄嗟に止め入るが、完全に頭に血が

上っている男子生徒たちは、千歳が教師である事すら失念しているかの様に、止める腕を

邪険に振り払った。

「やめなさいっ!!…まーくんっ!……誰かっ来て下さい!!」



何をしている



 突如聞こえた地に響くような声に、全員の動きが一瞬にして止まった。


 きさき
「后さん……」

 千歳は、后の出現に安心したようにホッと息をつく。后は「ハア…」と溜め息をつくと、

「このまま続けて停学もしくは退学処分になるか、やめて立ち去るか…。好きな方を選びな

さい」

 と、面倒くさそうに言い放った。



 それを聞いた三人は、一瞬顔を見合わせた後「チッ」と舌打ちし、地面に転がすように舞

を突き飛ばすと、逃げるようにその場を後にした。



「まーくんっ」
                              さら
 千歳が慌てて舞に駆け寄るが、結局無様な姿を曝してしまった舞は、情けなさと悔しさで

千歳の顔を見ることが出来なかった。

 后の姿を見た時の、千歳のホッとした表情……。自分が駆けつけた時には、むしろ不安

そうな顔をさせてしまった…。そして案の定、結果として舞はわざわざ事を荒立ててしまった

のだ。




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Fallin'