CREEP
19


「ねえ、悦司…」
「ん?」

 部屋でテレビを見ながら、ペットボトルのミネラルウォーターを飲んでいた悦司は、コソコソと声をひそめながら近付いてきた卓翔(たくと)に首をかしげた。
 ちなみに、竹御(たけみ)は机で本を読んでおり、飛鳥(とびと)はまだ帰っていない。多分また図書館だろう。

「悦司って、ひょっとして飛鳥とエッチしちゃった?」

「ブッ!!」

 卓翔の言葉を聞き、悦司は口に含んでいたミネラルウォーターを盛大に噴出した。
 …水で良かった。

「うわっ、大丈夫?!悦司」
「な…な……」
「だってさぁ〜、なんか最近二人の間が自然っていうか…。ほら、サカリのついた犬だって、一回交尾しちゃえば落ち着くじゃない?だから、もしかしていつの間にか、なんかシちゃったのかなぁ〜って」

 するかー―――!!

「そんな訳ないだろっ……」
 サ…サカリって、こっ…交……!!ぉお前っ、可愛い顔してなんて事をっっ!!

「な〜んだ、違うのかぁ」
 つまんな〜い、と言って竹御の傍に行ってしまった卓翔を、悦司は口元にたれた水を拭いながら、呆然と見つめた。
 確かに、手をつないで帰って以来、飛鳥の言動は随分と落ち着いていた。過剰なスキンシップも以前に比べて少なくなったし、変態M発言も減った。
 あの日、胸の内を語ったことで、少しスッキリしたのかも知れない。

(だからって、何で『なんかシちゃった』とかいう事にっ!?)

 …もしかして、口には出さないだけで、他にもそう思っている人達がいるんじゃ……。

(嫌だっ!恥ずかしすぎるっ!!)

「悦司〜、ただいま〜〜!」
 悦司が一人、恥ずかしい想像に悶絶していると、タイミングが良いのか悪いのか、帰宅した飛鳥が悦司に思い切り抱きついた。

「触るなー!」
「うおっ」
 突然悦司に振り払われた飛鳥は、一瞬キョトンとした顔をしたが、次の瞬間ニヤリと笑った。
「そんな抵抗は無駄だぜ悦司〜。なんたって俺は、悦司の蹴りもパンチも大好きだからな!好きだ!悦司が好きだ。さあ、殴れ、蹴れ」
「う、うるさい!この変態っ!寄るなっ触るなっっ」

(ああ…、そっか……)
 じゃれ合う二人を眺めながら、卓翔は思った。
 この数日は、
飛鳥が落ち着いたのではなく、悦司が抵抗していなかったのだ――と。

(とっとと、くっ付いちゃえばいいのにね〜)


 それには、もうちょっと時間がかかりそうだった…。

◆END◆


とりあえずは飛鳥の事情に重点を置いて書き上げました。漫画として『君猫』に登場させてから、5年もただの女タラシ≠ニして放置していたんですよね…;反省。
飛鳥の名前は読みづらいかも知れませんが、クォーターで美形で長身で名前が『アスカ』なんて、キレイにまとまり過ぎてて面白くなかったので『トビト』と読ませることにしました。どうでしょうヾ
年月と共に髪色が変わるのは、自分の経験でもあります。小さい頃すっごい茶髪だったんですけど、小学校に上がったくらいから黒くなって、ハタチ過ぎた頃からまたちょっとだけ茶色くなり始めています。混血だとよくある事らしいのでネタとして取り入れてみたんですが、自分は関西人と東北人の血が混ざっているだけの純日本人なんですけどね…;この前なんて、光の当たり具合によっては紫がかってすら見えるほどの、赤い髪まで見つけてしまいました;何が起こっているんでしょう…。

さてっ、次は何を書きましょうかね…。本当はまだ、一年生の中で重要なキャラが登場させられていないので、そろそろ書かなければいけないと思うのですが…。先に椎名vs后っぽいのを、ちょこっと入れた方が良いですかね?

2006.11.2 途倉幹久


進  小説 TOP