クローン病の「クローン」は、最近、有名になったクローン技術とかで作る複製生物とは違います。アルファベットで書くと、クローン技術の方は、「Clone」 、クローン病の方は「Crohn's Disease」で全く違うという事がわかって頂けると思います。ちなみに、 クローン病は、1932年に米国マウントサイナイ病院のBurrill Bernard Crohn(ブリル・ビー・クローン)医師らにより、「限局性回腸炎」として初めて報告され、この名前をとり、クローン病と呼ばれるようになりました。なお、完治させる方法がない病気という事で、日本では、希少な難治性疾患である「特定疾患」という枠組みに入れられ、一般的には、難病といわれています。

 クローン病は、10代から20代に発病する事が多く、日本では約2万人(2001年現在)がクローン病に登録されており、今でも、年間約1000人という急激な増加をしています。

 クローン病は、主に小腸・大腸を中心に病変が出ますので、「腸疾患」とされますが、口から肛門にいたる消化器全体に病変が出る可能性のある病気です。最初は、炎症がおき、それから潰瘍になります。更に、進行すると、狭窄(腸管等が狭くなる事)、瘻孔(腸管などに穴が開く事)等がおきます。そして、病気が悪化すると、下痢・発熱・腹痛・体重減少・下血・肛門部の痛み等の数多い症状が出ます。

 治療方法は、内科的治療と外科的治療に分けられます。内科的治療としましては、主に薬物療法と栄養療法があります。
 薬物療法は、クローン病は、完治させる薬はないので、薬により、炎症を抑え、病状を軽減させる目的で使われます。主な薬は、ステロイド剤・5-ASA製剤・サラゾピリン剤・免疫抑制剤・抗生物質・整腸剤などです。
 栄養療法は、食べない事により、腸を安静させる目的と、腸の炎症により、栄養の消化吸収力が低下して、栄養状態が悪化した状態を改善させる目的があります。方法としては、高カロリーの点滴を入れる完全静脈栄養療法と消化吸収のよい栄養剤をとる方法があります。更に、調子が良い時は、食事内容を気をつけて、食べる場合もあります。クローン食として望む食事は、低脂肪・低残査・刺激物を避けるという事を気をつけます。低脂肪では、肉などの脂身を避け、料理で、油を使わないようにするものです。低残査とは、便になる量を減らすという事で、繊維のきついごぼうや山菜等を避けるという事です。刺激物とは、わさびやからし等です。よく、これらを気をつけたクローン食と栄養剤を併用するパターンが多いです。

 外科的治療は、手術の事で、大量出血・狭窄・瘻孔等で、かなり重篤な症状になった場合に、狭窄形成術や部分切除術などを行いますが、手術でも治らなく、更には、何度も再燃し、手術を重ねるケースも多いので、できるだけ切除範囲を小さくするのが、最近の傾向です。


クローン病Q&A

質問1、クローン病の原因は?

 食事の欧米化やストレス・細菌感染・遺伝等、様々な要因が、とりざたされていますが、未だに明確な原因はわかっておりません。原因が、わからない為に、クローン病の治療法が見つからないという理由があります。

質問2、人に感染しますか?

 人には、感染しませんし、そのような報告はありません。

質問3、死ぬ病気ではないですか?

 一応、難病と言われていますが、余命何年というような死に至る病気ではありません。従って、癌のように死亡率が高くはないです。しかし、クローン病により合併症を引き起こし、死亡するケース(敗血症や出血死等)や、手術率は高いので、医療事故等に遭う可能性は否定できません。その分、病気とは無縁の人よりは、死ぬ可能性はありますが、それはかなり低い確率で、死亡率自体は、健康な方とほとんど一緒です。

質問4、どのような合併症がありますか?

 狭窄・閉塞・瘻孔・出血・栄養障害・成長障害等があり、腸以外では、関節炎・結節性紅斑・結膜炎・胆石症・尿路結石等があります。

質問5、クローン病の診断基準は?

 石畳のような敷石状の病変があり、また、縦に長く走る潰瘍である縦走潰瘍があり、更に、腸壁全体に病変があるので、非乾路性肉芽腫という炎症細胞の集まりを顕微鏡で確認します。

質問6、どんな検査があるのですか?

 注腸検査・小腸造影・大腸内視鏡・超音波検査・CTスキャン・X線単純撮影(レントゲン)・血液検査等があります。また、小腸内視鏡・カプセル内視鏡も今後、広まると思われます。

質問7、どのような栄養剤をどのようにとるのですか?

 栄養剤は、粉末のエレンタールが、栄養剤の中でも、消化吸収に優れ、一番脂肪の少ない栄養剤という事で、最も良いと言われるので、これを使うケースが多いです。他の栄養剤は、ラコール・エンシェアリキッド・ハーモニック等の栄養剤があり、これらを使っている人も多いです。

 栄養剤をとる方法は、主に2通りです。ひとつは、口から飲む方法。しかし、大量に飲む場合が多いので、飲む時間がかかる、下痢が多くなるというような理由で、夜間経腸と言いまして、鼻から、胃の辺までチューブを通し、寝ている間に、ポンプを使って少しずつ入れていくという方法をとられる方が多いです。また、鼻からチューブを通すのに抵抗感がある人や、時間的制約がある人は、胃瘻(いろう)と言いまして、お腹に穴を開け、直接、栄養剤を胃に入れる方法をとられている人も数は少ないですがいます。

質問8、運動をしてもいいですか?

 運動に関しては、プロの選手とかもいるくらいなので、調子が良い時は、気にしない方が良いです。しかし、体調が悪い時等は、少し控えた方が良いと思いますし、あまりお腹に衝撃がくるようなものは避けた方がいいです。