クローン病は、再燃(悪化している状態)時には、入院治療や絶食にして栄養剤orTPN(完全静脈栄養法)だけにする事もありますが、緩解(良好な状態)時は、食べる物に気をつけて、食事をする事ができる場合もあります。


クローン病食の基本原則

(高エネルギー食)
 消化管に炎症がある時は、微熱、腹痛、下痢等が起こり、身体の代謝が亢進する為に、全身が消耗し、低栄養の状態になりがちで、病態の改善にも支障を及ぼします。そこで、高エネルギーが必要となります。
 1日のエネルギー量は、
標準体重×40kcal
という計算で、これを下回らないようにしましょう。ただし、クローン病食は、あっさりとした物が多く、食事だけで必要量を摂ろうとすると、腸管に負担になりますので、栄養剤と併用しながら、
エネルギー摂取されると良いと思います。

(低脂肪)
 脂肪は、腸管の病変を悪化させたり、炎症を引き起こしたりします。そこで、低脂肪食を基本とします。1日に脂肪摂取量は、20g以下に抑えます。食品には、元々、脂肪が含まれており、卵1個だけにも、約6g入っています。従って、調理には油を極力使用しない方がよいでしょう。テフロン加工のフライパンを使用したり、調理も、煮る・蒸す等のメニューが良いです。電子レンジ、トースター等もうまく使いながら、調理してみて下さい。
 また、脂肪もn-3系の多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA等)が、炎症を抑える報告もありますので、これらを主に摂った方が良いでしょう。主に、魚とかに多く含まれています。

(低残渣)
 簡単に言えば、便の量を減らす食事です。残渣が多いと、腸管運動を亢進し、腸管を安静に保てなくなります。特に、不溶性の食物繊維は、腸管を刺激し、発酵や腹痛、下痢を起こしやすくします。狭窄(腸管が狭くなる事)がある人は、通過障害にもなる可能性があるので、更に、注意を要します。1日の繊維摂取量は5g程度にします。野菜の重量に置き換えると、約100g程度です。食物繊維の中でも、水溶性のもので、腸管刺激の少ないペクチンを多く含むものが良いでしょう。

(乳糖に注意)
 牛乳に含まれている乳糖を分解する酵素が少ないと、乳製品は消化されません。これを乳糖不耐症と言います。クローンの人は、乳糖不耐症の人が多いので、注意が必要です。

(シュウ酸に注意)
 クローン病では、脂肪の吸収不良に、下痢や発熱に伴う脱水症が合併すると、シュウ酸の血中濃度が高くなり、腎臓に排出されて腎臓結石が生じやすくなります。シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草・チョコレート・ピーナッツ・ココア等)の摂取には注意が必要です。

(食事の食べ方)
 腸に適度の休息を与えるために、間食は控え、規則正しい時間に食事をします。消化を助ける為に、よく噛む事も大切です。また、安全食といえども、暴飲暴食は再燃の可能性が高まりますので注意しましょう。
 
(クローン病食品の選択)
 下記の表に、一般的な食品の分類を示します。しかし、人によって、NG食は様々です。この表をもとに、徐々に自分自身で試されるのが良いと思います。また、再燃などで、絶食を指導されている時は、安全食品でもダメですので、気をつけて下さい。また、狭窄等では、注意する食品でも詰まる可能性があるので注意してください。

分類
好ましい食品
注意する食品
避ける食品
穀類
粥、ごはん、胚芽米、餅、うどん、そうめん、冷麦、食パン、フランスパン、蒸しパン、コーンスターチ、ホットケーキ(バター無し) 赤飯、寿司、スパゲッティ、マカロニ、そば、ビーフン、あんぱん、ジャムパン、クリームパン、バターロール、餃子の皮、ワンタンの皮 玄米、中華麺、インスタントラーメン、調理パン、クロワッサン、デニッシュ、揚げパン、ライ麦パン、ポップコーン、コーンフレーク、レーズンパン、菓子パン
芋類
じゃがいも、里芋、春雨、長芋、はるさめ さつまいも(裏ごし) さつまいも、こんにゃく、しらたき
砂糖類
砂糖、水あめ、オリゴ糖 はちみつ  
果物類
果汁、缶詰(桃、りんご)、バナナ、桃、りんご すいか、ぶどう、メロン、いちご 酸味の強い柑橘類、キウイ、柿、梨、パイナップル、レーズン、干し柿、ドライフルーツ、レモン
野菜類
大根、人参、玉ねぎ、かぶ、キャベツ、白菜葉先、かぼちゃ(皮むき)、トマト(皮むき&種無し)、茄子(皮むき)、ほうれん草の葉先、ブロッコリー&カリフラワーの花部分、きゅうり(皮なし)、野菜ジュース さやえんどう、サラダ菜、レタス、ピーマン ごぼう、れんこん、山菜、竹の子、ふき、ぜんまい、セロリー、うど、もやし、にら、とうもろこし、かんぴょう、切干大根、ぜんまい、アスパラ、しなちく、ザーサイ、みょうが、オクラ、春菊、しょうが、チンゲン菜
油脂類
  しそ油、エゴマ油、菜種油、マクトンオイル バター、ラード、マーガリン、ごま油、サラダ油、コーン油、大豆油
種実類
  すりごま、練りごま、むき栗 ごま、ピーナッツ、ピーナッツバター、アーモンド、落花生、しその実
豆類
豆腐、焼き豆腐、高野豆腐、湯葉、緑豆春雨、豆乳、調整豆乳 ひきわり納豆、生揚げ&油揚げ(要油抜き)、がんもどき、枝豆(薄皮除く)、きな粉 納豆、煮豆類、つぶあん、おから、グリンピース、うずら豆、おたふく豆、そら豆、カシューナッツ
魚介類
白身魚(かれい、たい、たら、すずき、)、太刀魚、さわら、まぐろ(赤身)、はんぺん、ちくわ、青魚(サバ、いわし、アジ等)、白す干し、かまぼこ、かき、水煮缶、すりみ うなぎ、ブリ、まぐろ(トロ)、エビ、ホタテ、さつま揚げ類、魚卵類、干物類、刺身 たこ、いか、スルメ、くらげ、貝類、油漬け缶詰、めんたいこ
肉類
とりのささみ レバー(よく洗う)、とり肉の皮なし、ヒレ肉 脂肪の多い部位の肉、ひき肉、ベーコン、サラミ、ばら肉、ウインナー、ロースハム
卵類
鶏卵(1日に1〜2個)、うずら卵   生卵
乳製品
低脂肪乳、スキムミルク、ヨーグルト、乳酸菌飲料、カッテージチーズ 牛乳、ラクトアイス、アイスミルク、チーズ、練乳 アイスクリーム
きのこ類
だし汁は可 刻んだきのこ類 しいたけ、えのき茸、しめじ、マッシュルーム、きくらげ
海藻類
  あおのり、焼き海苔、のり佃煮、ところてん、わかめ、とろろ昆布 ひじき、もずく、昆布等
嗜好品
りんごジュース、ぶどうジュース、野菜ジュース、緑茶、番茶、麦茶、ほうじ茶、玄米茶、スポーツドリンク 紅茶、濃い緑茶、抹茶、オレンジジュース、グレープフルーツジュース ココア、アルコール、炭酸飲料、コーヒー、甘酒、梅酒
菓子類
あめ、ガム、ビスケット、煎餅、ゼリー、カステラ、プリン、ボーロ、白玉団子、みたらし団子、くずきり、ういろう こしあん饅頭、ようかん、あられ 洋菓子全般、スナック菓子、クッキー、チョコレート、豆菓子、スナック菓子、ドーナツ、パイ、揚げ煎餅、かりんとう、ババロア
香辛料
ハーブ類 わさび、からし、こしょう、カレー粉 唐辛子
調味料
しょう油、味噌、ソース、ケチャップ、コンソメ、みりん、スープの素(脂質の少ないもの)、トマトピューレ 焼肉のたれ、ごまだれ、パスタソース、酢、低脂肪マヨネーズ ルウ類、レトルトの調味料、ドレッシング、マヨネーズ

 

分類
注意点
穀類

玄米は、消化吸収が悪いので避ける。
ラーメンには、かんすいが入っている。
麺類は、柔らかく煮て、よく噛みながら食べると良い。
パンは、イースト菌とバター、牛乳が入っている。イーストがあまりよくないとも言われている。
わんたんの皮は、ラードが入っている。
調理パンは、バターを多く使用しているので、避けた方が良い。
パンには、マーガリンではなくジャムの方が良い。種・皮の含まれないジャムが良く、例えばりんごジャム等。
とうもろこしは、難水溶性で、繊維も固いので避けた方が良い。

芋類
芋類は、発酵しやすいので、一度に食べる量は、少量にした方が良い。
芋は、調理する時に、裏ごしすると良い。
長いもの、とろろ等の生食は避ける。
こんにゃくは、消化吸収が悪いので避ける。
砂糖類
はちみつは、ボツリヌス菌が入っているので注意する。
オリゴ糖は、使用量によっては、お腹が緩くなるので注意。
果物類
ペクチンの多い果物を摂取するようにする。
皮、種等は残すようにする。
柑橘類は避ける。
野菜類
調理する際は、繊維に直角に包丁を入れる等して、細かく切るように調理すると良い。ジュースにしたり、ミキサーを使うのも良い。
生野菜ではなく、火を通した物が良い。
茎は使わずに、葉先の部分だけを用いる。
軟らかく調理する。
野菜の皮は、比較的消化に悪いので、皮をむいて調理する。
もやしは、繊維が長いので避ける。
山菜は、繊維がきついので避ける。
繊維の少ない野菜でも、量に気をつける。
ほうれん草は、シュウ酸も多いので、大量摂取は控える。
油脂類
脂肪の全体量を減らす。
特に、動物性の脂肪、リノール酸系の油脂(n-6系)を減らす。
種実類
ピーナッツ、アーモンド、ごまなどは、n-6系の脂肪が多く、繊維も固いので避ける。
豆類
皮の部分が消化されないので、裏ごししたりする。
油揚げ等、油で揚げたものは、湯通しして油抜きしてから使用する。
納豆は、ひきわりの方が、皮をとってあるので、危険性が少ない。
緑豆春雨は、でんぷんから作られるので、繊維がないので良い。
豆乳は、合わない人も多いので注意。
魚介類
貝類は、消化に悪いので注意する。
貝の汁だけは良い。
かきは、亜鉛も補給でき良い。
小腸病変のある人は、青い魚の摂取量に注意する。
いか、たこ等は、脂肪は少ないが、消化に悪いので避ける。
するめ等は、しゃぶるだけに留める。
肉類
肉類は、食事性抗原として炎症を亢進させるので、量を控えめにする。
とりの皮をはいだり、脂の部分を切り落としたりして、できるだけ脂肪量を減らす。
レバーは、流水でよく洗ってから調理する事。
卵類
卵は、脂肪も多いので、1日に1〜2個にする。
乳製品
牛乳は、n-6系の脂肪が多いので、低脂肪牛乳やスキムミルクにする。
乳糖不耐症の人は、乳糖が分解されたアカディ牛乳にする。
きのこ類
きのこの繊維は、人間の消化酵素では、分解されないので避ける。
だし汁は良い。
海藻類
のり等も繊維があるので、少量に留める。
昆布のだし汁は良い。
嗜好品
アルコール、炭酸飲料、カフェインは、腸を刺激するので、避けた方が良い。
酸味が強い飲み物も避ける。
菓子類
豆類の皮を避ける為に、つぶあんよりもこしあんにする。
煎餅は、ゴマ等が入っていないもので、揚げたり、唐辛子等がついているものは避ける。
洋菓子は、脂肪が多いので避ける。
チョコレートは、脂肪が多く、シュウ酸も多く含んでいるので避ける。
糖分の取りすぎに注意。
香辛料
カレー、唐辛子など、腸管を刺激するので避ける。
調味料
味噌は、こしたものの方が良い。
酢は、腸を刺激する事があるので、量を控える。
ドレッシング・マヨネーズは脂肪が多いので、どうしても使用する場合は、ノンオイルや低脂肪のものにする。

 

外食でのメニューの選び方

 外食の場合、自宅で作る時と違い、具材や調理法に気をつけないといけません。自分で作る場合は、安全な食材ばかりで作ると思いますが、外食ですと食材はなかなか選べません。従って、ダメな具は、食べないように注意しないといけません。また、店によっては、魚を油をひいて焼くなど、同じ焼き魚でも、調理法は様々なので注意しましょう。
 どうしても、揚げ物を食べないといけない事態の時は、衣をはがすだけで、かなり脂肪を抑える事ができます。肉類も、脂身は、取り除いたりして食べないように注意しましょう。
 下記の表は、一般的なものです。前述したように、同じ料理名でも、店によって、材料・調理法は様々ですので、「比較的安心の欄だから」と鵜呑みにしないで下さい。また、それを食べて調子が悪くなった場合は、その料理は合わないという事ですので、食べるのを避けましょう。また、食べ過ぎず、食べ残す勇気を持つようにしましょう。

 
比較的安心
少し不安だけど、比較的マシ
麺類
かけうどん
そうめん
冷麦
月見うどん
煮込みうどん
ざるうどん
卵とじうどん
力うどん(餅を揚げてないもの)

きつねうどん
たぬきうどん
かけそば
月見そば
ざるそば

ご飯類
マグロのたたき丼
おにぎり(梅・鮭等)
卵丼
鉄火丼
寿司
中華丼
親子丼
お茶漬け
パン類
*** ミックスサンド
野菜サンド
卵サンド
おかず類

おでん(消化に良いもの選ぶ)
寄せ鍋
豆腐の田楽
味噌汁(具に注意)
かきたま汁
コンソメスープ
かぼちゃのスープ(裏ごし)
煮魚
魚の味噌煮
焼き魚
湯豆腐
卵豆腐
茶碗蒸し(具に注意)
冷奴
刺身(鮮度に注意)

シュウマイ(海鮮蒸しシュウマイ)
焼き鳥(皮は食べない)
魚の照り焼き
八宝菜(具を選んで食べれそうな物を)
マーボー豆腐(辛くないもの)
ポテトサラダ
マカロニサラダ
コーンスープ
肉じゃが(肉をのける)
卵焼き
オムレツ
デザート
シャーベット アイスクリーム
みつ豆
いちごショートケーキ
プリン