(98番通り)

 

<注>新しいのが上にきています。

 98年12月31日 木曜日 今年も終わり
 今日で、今年も終わりだね。今年もいろいろあったけど、何とか新年を迎えられそうだね。不況の風が吹き、普通の人も生きていくのが大変な世の中。クローンの人だと、もっと大変かもしれないけど、頑張って生きていきたいね。来年は、良い事がありますように。クローン病の人は、特にそのように願うよね。


 98年12月24日 木曜日 メニー 苦しみます
 今日は、クリスマスだね。世間は、浮かれ気分だね。でも、クローンにとってのクリスマスは、あまりうれしくない。番組を見ると、クリスマスに過ごすレストラン特集や、料理特集ばかりだ。特に、僕は今、在宅IVHで、エレンタールでさえも飲んでないからね。

 世間では、「メリークリスマス」と祝うけど、僕にとっては、「メニー(many) 苦しみます」だね。だって、多くの苦しみに堪えないといけないからね。12月24日は、祝う日ではなく、精神修養の日だね。


 98年12月23日 水曜日 クローン魂の値段
 とうとう世紀末である1999年が迫ってきた。1999年と言えば、「ノストラダムスの大予言」だね。テレビでも、よく特集をするようになった。本当に、地球は滅亡するのだろうか。

 でも、滅亡前には、トンカツを食べてやるぞと楽しみにしている。そして、滅亡前の1ヶ月前から食べようと考えているんだよね。それは、僕の症状は、無理して食べると、1ヶ月目で下痢が始まって、2ヶ月目で腹痛が始まって、3ヶ月目に入院だからなんだ。だから、下痢が始まると最後の生活が快適に暮らせないからね。トンカツを食べるのは、楽しみだな〜。

 でも、心の片隅でも、地球が滅ぶ事を望んでいる自分に、恐ろしさを感じるね。まさしく、「トンカツ」で悪魔に魂を売っているんだね。僕の魂は安いんだな〜。でも、クローンにとっての「トンカツ」は、お金に換えられないものがあるよね。


 98年12月21日 月曜日 クローンに接待!?
 年末も差し迫ってくると、今年を振り返った番組がやり始めた。今年起こった事件の特集の番組を見ると、こんな事があったなと思い出してしまう。その中でも、「大蔵官僚のノーパンしゃぶしゃぶの接待」が、目に入ったんだ。

 クローンだと、しゃぶしゃぶや高級料理店での接待をされても、不機嫌になるだけだから大丈夫だよね。働いている時に、研修で、「取引先から、コーヒーとかをおごってもらってはいけない」と教えられたけど、僕は、心の中で、「コーヒーなんか飲まないから大丈夫」と思っていたもんね。クローン病の人を接待するとなったら、普通の人はどうするのだろうね。


 98年12月9日 水曜日 クローンの増加
 最近、ネット上でも新しいクローンの人が出てきた。もちろん全員が、病気になったばかりの人ではなく、パソコンを新しく始めた為に、出てきた人もいるけどね。それにしても、最近のクローン病の増加は、著しい。

 僕が病気になった頃は、8千人くらいだったけど、今は2倍以上だからね。西暦2000年には、2万人になると言われているしね。クローン病になって、苦しむ人が増える事は嘆かわしい事だよね。でも、心の中では、仲間が増えてうれしい気持ちもある。複雑な「クローン心」なんだよね。


 98年11月26日 木曜日 退院
 今日は、僕の退院日だ。大安だし、天気も良いし、絶好の退院日よりだね。看護婦さんや、同室の患者さんに挨拶をして、昼過ぎに退院した。でも、いざ退院すると、あれだけ嫌だった入院生活だったけど、寂しい感じがするんだよね。まあ、話し相手は、たくさんいたからね。

 でも、またいつかは入院しないといけないんだろうな。ここで、目標を掲げる事にしたんだ。「僕がいた病棟の看護婦さんが、全て替わるまで入院しない」とね。看護婦さんが、嫌だったという事ではなくて、それだけ簡単には、入院しないように努めようとね。話によると、一新するまでに、3年くらいというからね。

 でも、何だか退院した時は、いつも家族がよそよそしいね。2ヶ月の入院の間に、他人になっちゃうんだね。まあ、数日で元に戻るだろうけどね。


 98年11月22日 日曜日 クローンに敵はなし!
 今日は、日曜日で病院も休診日なので、暇な1日なんだ。看護婦さんも、日曜日は少ないしね。こういう時は、談話室にでも行って、話し相手を見つけようと思ったんだよね。行ってみると、おじいちゃん達が話しをしている。そして、僕も隣に座ったんだよね。

 話しの内容を聞くと、「明日、検査があるから、何も食べられんから腹減った」と言った人に対して、「それなら良いわ。俺は、1週間も食べとらんのやぞ」とおじさんが誇らしげに言った。周りの人が、「ほー」とビックリしているんだよね。そうすると、1週間絶食しているおじさんは、ますます誇らしげな態度を取る。よくいるんだよね。病気の「ひどさ自慢」をする人が。しょうもないことだよね。

 でも、あまりにも誇らしげにしているので、横から「僕は、6月から食べてないんよ」と言ってやったんだ。すると、みんなの視線が、僕に注目して、1週間絶食のおじさんは、ほったらかしになった。見事に、このおじさんを撃破した。自由に歩ける患者の中で、絶食自慢では、クローンに敵はないよね。しかし、いつのまにか、僕の病気の説明をしていると、「ひどさ自慢」になっていたんだ。思わず、反省!


 98年11月19日 木曜日 発病して5年
 今日は、僕の誕生日なんだ。前もって、宣伝して回ったので、看護婦さんや患者さんに、「おめでとう」と言ってもらえたんだよね。こういう面では、家にいるより、病院で誕生日を迎えた方が、祝福されて良いかな。

 しかし、誕生日が来て思い出すのは、発病の時なんだよね。正直、発病当時は、病名も分らなくて、治るものだと思っていたから、いつから入院したかとか、最初の血液検査の結果とかは、覚えていない。ただ、病名が判って、今後の治療方針の説明を受け、失意のどん底にある時に、病院のベッドで迎えた誕生日は、忘れられないんだよね。ケーキもなく、誰も祝ってくれずに、22歳という時を迎え、今後をどのように生きていけば良いか分らなくて。

 でも、何だかんだといっても、今まで生きてきたんだね。これからも、そうやっていけるだろう。とりあえず、11月19日は、僕にとっての発病記念日にしているんだ。


 98年11月17日 火曜日 副作用
 入院して、プレドニンを大量投与してきたけど、ようやく1日70mgから、25mgにまで減量できたんだよね。でも、プレドニンの副作用も出ているんだよね。1つは、胸や背中にすごい湿疹ができたんだよね。僕は、意気地がないので、しばらくはプールとかにいけないね。でも、珍しくひどいムーンフェイスにならなかったのはよかったけど。

 もう1つは骨密度で、検査の結果、55歳の女性と同じくらいだって。これには、参ったね。簡単に骨が折れるという事でしょう。4月に、右手の骨を折る訳だ(詳しくは、98年4月15日の所を)。筋力と骨の強度が、釣り合っていないのだから。でも、薬物療法は辛いよね。クローンの病状を抑える事と、薬を服用する事による副作用を天秤にかけなければいけないから。


 98年11月16日 月曜日 看護婦さんと倦怠期
 
 入院して、1ヶ月半。その間、容態の悪化もなく順調そのもので、たいした検査もないまま時が過ぎているんだよね。すでに、僕の体は、病棟の景色の一部と化しているみたい。僕自身も、やる事がないから、ゴロゴロしているだけだけどね。
 しかしここにくると、先生や看護婦さんとも、病状の事で話す事がなくなるよね。看護婦さんも、「体調は、どうですか?」と聞くときには、看護婦さんの視線は、次の質問事項の所に向いているし。僕も「変わりありません」と答えながら、「次の質問は、トイレの回数だな」と予想したりしているんだ。本当に、先生や看護婦さんと話しても、新鮮味がなく、倦怠(けんたい)期になっているんだよね。まあ、クローンでは、変わりない事は良い事だけど、心の何処かでは、体調が悪くなって、看護婦さんに話している患者さんの姿を羨ましく思ったりしているんだよね。


 98年11月10日 火曜日 クローンの生命保険
 ワイドショーでは、和歌山の毒物混入カレーの事ばかりやっている。ここにきて、容疑者は決まってきたみたいだ。まあ、松本サリンの時のような間違いをしないように、捜査は慎重にやって欲しい。だけど、容疑をかけられたせいで、いろいろな疑惑がでてきたんだよね。生命保険の詐欺事件とかね。

 でもクローンの人は、生命保険に入れないから、入院とかすると大変だよね。もちろん、生命保険に入ってから、病気になった人は別だけど。1日1万円くらいでる保険に入っていたら、2ヶ月で60万円だからね。これなら、少しは入院も堪えられるのだけどね。

 クローンは、見た目が健康体だし、ほとんどのクローンの人は、緩解期ならば、簡単な健康診断では引っ掛からないので、保険詐欺をやろうとすればできるよね。安い保険をいくつか入れば。でも、やっぱりこれは、犯罪行為だから、人間としてはやれないよね。人間としての誇りがなくなってしまう。だから、僕はこのような保険詐欺はやらないね。だけど、このまま苦しい生活が続くと、人間としてではなく、1個の生き物として、生き残る手段を取るかも・・・・・・。


 98年11月5日 木曜日 クローンの歯磨き
 入院をしていると、規則正しい生活になるよね。夜更かしはせずに、早く起きるといった健康生活だね。そして僕は、毎朝起きると、顔を洗って、髭を剃って、歯を磨くんだ。

 でも何か、虚しくなるんだよね。何をかっていうと、「歯磨き」が。何で、何も食べないのに、歯を磨かないといけないんだろう?今僕は、薬も大量投与の為、点滴だし、喉も渇かないので、入院してから、1滴も口から水分を摂ってないから、単純に考えれば汚れる要素がないんだよね。歯を磨くという行為は、人間としてのエチケットとしてやるだけだけど、本来の目的である、「汚れた歯をきれいにする」というものではないからね。早く、本来の目的である、歯が汚れて歯を磨くというものにしたいよね。


 98年11月4日 水曜日 クローンは、ムキムキ
 今年の秋は、海の向こうのアメリカの大リーグで盛り上がった。もちろん、大リーガーのマグワイアのホームランの新記録達成の事。今までの記録を大幅に更新したのだからスゴイ!だけどその後、筋力増強剤を使っていたという事も、少し話題になったよね。まあ、野球では、オリンピックのように、筋肉増強剤の使用を禁止されてはいないみたいだけどね。

 でも、その筋肉増強剤というのが、「ステロイド」。ステロイドといえば、炎症性腸疾患に多く用いられるものだよね。僕も、ステロイドの一種であるプレドニンを4年以上飲み続けているんだよね。しかも、今回の入院では、当初1日に70mgを大量投与するという方法を取っているんだよね。

 という事は、僕も筋力トレーニングをすれば、体がムキムキになるのではないかと思ったんだよね。それで「タクム」から、「タクワイア」に変身する為に、病院でトレーニングを開始したんだよね。ステロイドは、副作用があるから、今まで悪いイメージしかなかったんだよ。まさに、「禍(わざわい)転じて福となす」で、考え方を換えれば、炎症を抑えて、筋力を付けるのなら、「一石二鳥」とも捉えれるよね。

 しかし、病院の薬剤師が来たので、この辺の事を聞いてみると、どうもステロイドの種類が違うらしい。筋力増強剤は、「同化ホルモン」というもので、プレドニンは、「副腎皮質ホルモン」で、プレドニンは、筋力減退の副作用もあるそうだ。薬剤師の人が、部屋から出ていった後、本をみると確かにそう書いてある。思わず「ガックリ!」ときちゃった。これじゃあ、全くダメだね。そういえば、今までクローンの人で、筋肉ムキムキの人を見た事ないものね。「二兎追う者は一兎も得ず」にならないように、病気治療に専念しようかな。


 98年11月1日 日曜日 クローンは、愛嬌!?
 昨日、僕より2日前に入院した、胃潰瘍の患者さんが退院しちゃった。これで、僕がいる6人部屋の中では、一番入院期間が長い患者になったんだね。病棟を見ても、男性患者では、一番長くなってしまった。病棟では、2番目に若いんだけどね。でも、これで部屋長になってしまった。これからは、ビシッと仕切っていかないとね。

 それにしても、クローン病患者は、一般の糖尿病患者のように、2〜3週間で退院できないから、自分より後に入院した人に、「はじめまして」と挨拶をするのに、その人を「お大事に」と見送らないといけないよね。知らず知らずの内に、かなりの人と挨拶をしている事になっちゃう。そして、挨拶をする事になれて、挨拶上手になっていくんだよね。クローンで、人見知りの人は、大変だ。クローンは、ニコニコと愛嬌(あいきょう)を良くしないと。

<補足>
 結局、退院するまでに、6人部屋で、20人の人と出会い、その都度挨拶をしました。


 98年10月27日 火曜日 特疾制度に感謝!
 昨日、出張に行っていた先生も帰ってきて、安心感が湧く。やっぱり、発病以来の担当医だからね。これで、僕も治療に専念できるというものだ。ということで、そろそろ入院費の請求書がくる頃である。僕の病院は、1〜15日までと、16日〜月末までの2回に分けて、請求書がくる。

 早速婦長さんが、請求書を持ってきた。ちゃんと僕は、この日の為に、14000円を準備していたんだね。しかし、請求書を見てビックリ!「108,900円」になっているんだ。医療費が、一部負担になってから、入院した事がないので、14000円というのは僕の勘違いかと思った。とりあえず、1階に降りて、会計に行って、事情を話すと、勘違いだという事がわかった。どうも僕が、クローン以外で入院していると勘違いして、計算したみたいだ。

 それにしても、半月で10万ちょっとということは、1ヶ月で、22万円くらい払わなければいけないという事になるよね。これは、一部負担になったとはいえ、特定疾患制度に感謝しなければいけないね。22万というお金は、今の僕には、払えないから。


 98年10月23日 金曜日 若い先生
 10月10日より、僕の担当医が、高知に救急医療の研修という事で、出張に行っている。代わりに診てくれる事になったのが、消化器では一番若い先生である。感じは、良い先生ですけどね。

 看護婦さんに、その先生の年齢を聞くと、なんと同い年だった。なんかショックだったね。僕の価値観の中では、先生というものは、年上の存在だったから。まるで、小学校の頃、アイドルは年上と思っていたのが、同年になり、そして、年下になっていったような気持ちで。僕も、若くして発病したけど、クローンは、今のところ一生の病気だから、先生もいつかは年下になってしまうんだね。久しぶりに、「センチメンタル タクム」になってしまった日だった。


 98年10月13日 火曜日 聴覚が働く
 入院していて辛いのは、食事の時間だね。というか、今回の入院で、こんなにも辛い事を改めて感じたよ。僕は、病気になってから、まず鍛え上げたのが、視覚だよね。料理の写真を見ても、我慢できるようになった。次は、嗅覚。買い物に行って、「焼きたてのパン屋」の前を歩いても、堪えられるようになった。これで、クローン病人間としてのタクムは、完璧に、試練を克服したんだと思っていたんだ。

 しかし、今回の入院で、聴覚が弱点という事が、はじめて分ったんだよね。静まりかえった病室で、カーテンの向こうから、匂いと共に、噛む音、汁物をすする音、そして箸の音。これらを聞くと、「美味そうに食べているなー」と想像してしまう。入院する前は、食事の時は、話しをしながら食べていたので、このような音は気にならなかったんだけど、こんなにも静かな病室だと気になってしょうがないね。完璧なタクムに、意外な弱点が見つかったものだ。

 
 98年10月6日 火曜日 いつかは特等席!
 今日は、窓際のベッドの人の退院日である。本当に、心から祝福したいね。退院した人よりも、窓際が空くという事を。まさしく人間なんて、自分勝手なものだ。ちょうど、いびきがうるさい人だったしね。そこで、朝から、看護婦さんに言って、窓際に移りたい旨をお願いしたんだね。

 窓際の人が、午後に退院すると、早速、窓際のベッドに移動。やっぱり、窓から景色が見れると気分も安らぐね。真中のベッドは、両側から、プレッシャーを感じるけど、窓際は、片方だけを気にすれば良いし。でも、クローン病の入院患者は、はじめ真中のベッドでも、入院期間が長いから、いつかは窓際という特等席になれるね。そして、その部屋の牢名主になっていくんだね。


 98年10月1日 木曜日 IVHは、クローン?
 今日から、いよいよ入院である。約5年ぶりの入院だね。ちょっと、不安な気持ちがある。「看護婦さんは、優しいか」「同室の人で、変な人はいないか」等だけど。自分の体の事より、何故かこの辺が気になる所がおかしいよね。

 部屋に入って、同室の人にあいさつをした。ベッドは、一番嫌な6人部屋の真中のベッド。まあしょうがない。そして、早速IVHをやる為に、ナースステーションに行って、管を鎖骨下から入れて、ここからIVHの生活が始まった。長くなりそうだな〜。

 そして、院内を点滴台を引きながら、散策した。同病の人はいないかってね。やっぱり、入院中に同病の人に会うと、まるで漂着した無人島で、人に会ったかのような気持ちを抱くもんね。そしたら、僕よりちょっと年下ぽい女の子が、IVHをして、点滴台を引いて歩いているのが目に入った。これこそ、無人島で出会ったみたいだ。年齢的にも、いかにもっていう感じ。しかも痩せている。クローンの入院患者である要素が、バッチリあったんだね。

 そこで、話しかけて見ると、クローンではなかった。何か、胃が悪いらしい。急に無人島で出会った人が、先に死んで、1人ぽっちになったような気になっちゃった。

 でも、確かにIVHだからといって、クローンとは限らないよね。なんだか、自分がクローン患者だと、IVHをしていると、クローン病と決めつけているね。まあ、僕の病院自体に、クローンが5人くらいしかいないので、よく考えたら、一緒に入院する可能性は少ないんだね。

<補足>
 結局、退院まで、同病の人はもちろんのこと、潰瘍性大腸炎の人でさえ入院してきませんでした。


 98年9月17日 木曜日 入院決定
 今日の病院の外来で、10月1日からの入院が決定しちゃった。まあ、入院するとなったら、特定疾患の制度上、9月の末から入院して、14000円払うのも嫌なので、10月のはじめからということにしたんだ。

 しかし、入院という事をまた友達に、伝えずらいよね。周りの友人では、入院した事がないのに、僕だけが入院ばかりして。「またか!」という感じなんだろうな。まあ、年賀状のやりとりだけの子や、あまり交流がなくなった子には、知らせないつもりだけど、電話がよくかかってくる友人には、前もって電話をしといた方がいいかもね。そうしないと、かえって大袈裟になるかもしれないから。


 98年9月13日 月曜日 忘れる味・・・・
 僕は発病して、5年が経とうとしているんだね。こうやってみると早かったけど、でも苦しかった事も多かったなー。もちろん、嬉しかった事もあったけどね。

 しかし、未だに昔食べたハンバーガーの味を懐かしがったりしてしまうね。でも、何かちょっとずつ、いろんな食べ物の味が、自分の想像の中で神格化してしまって、実際よりおいしく思っているんじゃないかと考えるようになったんだ。つまり、ハンバーガーとかの本当の味を忘れてきたのかなって思っちゃう。この先、10年とか経ったらどれくらい覚えているんだろうね。


 98年9月7日 月曜日 皮肉にも、生き残る?
 和歌山県で、毒カレー事件が起こって、最近のニュースは、その事ばかりやっている。それにしても、ひどい事をする人もいるもんだね。完全な無差別殺人だからね。

 しかし、クローンの人がいたとしたら、皮肉だけど、生き残っただろうね。クローンのほとんどの人が無理して、カレーなんか食べないだろうから。しかし、このカレー事件以降、類似事件が多くて、それも困るよね。ウーロン茶への毒物混入は、クローンの人は要注意だね。スーパーで売っている飲み物の内、ウーロン茶は、クローンが選ぶ数少ない飲み物だから。


 98年8月28日 金曜日 エレンタールは薬?
 いつも僕は、エレンタールは、経管経腸療法でやっているので飲まないんだけど、さすがに1日8パックだと、2〜3パックは経口で飲まなくてはね。それにしても、この飲み物を毎日は、堪らない。たまになら、我慢できるんだけどね。

 今まで、僕は、エレンタールは栄養剤と思い込んできた。中には、薬と考えている人もいるけど、「薬で生きている」というよりは、「栄養剤で生きている」と思った方が、自分自身が人間だという感じがするからなんだ。薬で生きているというと、いかにも人間からかけ離れているような感じが・・・・・。

 しかし、ここまでくると、エレンタールを薬と思わない限り、飲み続ける事ができないね。いつも、ヨーグルトフレーバーを基本として飲んでいるけど、やっぱり、固形物が食べたいね。といっても、エレンタールのゼリーは別だけどね。エレンタールのフレーバーを新しく作るより、栄養剤の新製品が出て欲しいよね。


 98年8月12日 水曜日 いけない下痢対策
 絶食が始まって、エレンタールだけの日々が、すでに2ヶ月以上。相変わらず、下痢に悩まされている毎日。やりきれないな〜。今年も、鮎釣りが解禁になって、体がうずいてしょうがない。そこで、思いきって、鮎釣りに行ってきたんだ。

 しかし、川になんて、トイレは絶対に無い。そこで、トイレに行かなくても良いように、下痢対策をしたんだ。いわゆる、エレンタールや水分を摂ると、下痢がひどくなるので、釣りに行く前日から、エレンタールを飲まずに、当日も水を飲まないようにして、釣りに行った。6時間くらい、釣りを楽しんだが、トイレに行かなくても済んだ。でも、これは、クローン病にとっては、本当はいけない下痢対策なんだけどね。でも、まあ気分がリフレッシュできたので、プラスマイナス0という事で、許してもらおうっと。

 98年7月20日 月曜日 エレンタリアン!?
 現代の人は、肉を食べるのが好きだね。という僕も、病気になる前は、肉好きの魚・野菜嫌いだった。それが、何の因果か、好きな肉を食べれずに、食わないよりましの魚・野菜も、量は食べられないし、再燃中だったら、それさえも食べるのを諦めなければいけない。

 再燃中は、エレンタールだけになる事が多いけど、この行動は、世間の人から見ると、不思議な光景みたいだね。やっぱり、エレンタールだけを飲み続けるというのは、普通の人の常識から考えると、とんでもない事なんだろうね。でも、肉を食べずに、野菜だけを食べる「ベジタリアン」は、世間的に存在が認められているんだね。それに比べると、肉も野菜も断って、エレンタールだけ飲む、「エレンタリアン」は世間に認められていないな〜。もう少し世間的に、エレンタールを飲みやすい環境になると良いね。


 98年7月14日 火曜日 人を傷つけている?
 今日は、ちょっと風邪気味で、ドッラグストアに風邪薬を買いに行ってきた。本当は、クローン病でも大丈夫な薬を病院で処方してもらった方が良いのだろうけど、面倒なので、不良患者の僕は、病院には行かなかったんだよね。

 ドッラグストアの中に入ると、入り口の側で、「ファイブミニ」の試飲をしていた。そして、僕にも、一口どうかと薦めてきたんだよね。でも、「ファイブミニ」は、「飲む繊維」をうたっているので、健康な人には良いかもしれないけど、僕達クローン病にとっては、悪いものだよね。そこで、ここでは模範患者を振舞って断った。すると、薦めてきた女性は、「ムッ!」とした顔になったんだ。

 このような顔をされると、こちらもむかつくけど、よく考えると、向こうはこっちが、普通の健康な人間と思っているんだから、断る方がおかしいと思うのかもしれないね。意外と、僕達は、他人が親切な事をしてくれているのを断って、人を傷をつけているのかもしれないな〜。僕達は、罪な人間なのかもね。


 98年7月1日 水曜日 外出先のトイレ
 外出先のトイレの問題は、ほとんどのクローン患者にとっては頭が痛いところだろうね。僕は男なので、「小」の方は何とかなるけど、「大」の方は本当に困るな〜。

 外出先では、コンビニでは「大」はしずらいし、パチンコ屋も、トイレ使用料として、少し打たないといけない気分になっちゃう。駅や公園のトイレは、紙が無い事も多いし。やっぱり、ショッピングセンターのトイレが、一番良いかもしれないね。

 
 98年6月30日 火曜日 ウルトラクローンマン!?
 とうとう再燃してしまった。採血の結果が悪く、6月の中旬から、エレンタールだけの絶食になった。本当に僕は、再燃しやすいタイプだな〜。

 しかし、エレンタールだけにすると、下痢の回数が多くなって困るんだ。きっと、繊維をとらないことも理由の1つだと思うけど。外出しても、トイレがちかくて、すぐ帰ってこないといけないし。ぎりぎりまで粘っても、3時間ぐらいの外出が精一杯だね。3時間ぐらい経つと、お腹が「ゴロゴロ」と鳴るんだよね。

 まるでウルトラマンが3分経つと、胸の所が「ピコピコ」なって、宇宙に帰らないといけないのと似ているよね。ウルトラマンが、地球に3分しかいられないのに対して、3時間しか外出できない僕は、ウルトラクローンマンというところかな。


 98年6月4日 木曜日 クローンにとってのコンビニ
 病気になってから、コンビニエンスストアに行かなくなってしまったね。病気になる前は、コンビニの無い生活は想像できないくらい、利用していたんだけどね。この前も、久しぶりにコンビニの中に入ったのだけど、買うものが無くて困っちゃった。

 こうやってみるとコンビニは、お弁当とかの食べ物を買わないと、あまり利用することはないね。「コンビニエンス」とは、「便利」という意味だそうだけど、クローンにとってのコンビニは、それほど便利でもないね。クローンにとっての、便利な店は、食べ物の誘惑がない店かな。


 98年6月1日 月曜日 人は、それぞれ
 5月の末に、衛生放送でクローンの番組がやった。みんなも見たんだろうね。僕は、用事があったので、録画して、今日見たんだ。内容は、僕等にとっては、知っている事かな。家族とかが見るといいような感じだね。

 でもその中で、クローンの人の食事風景が出て、イワシや大根おろしを食べていたんだよね。そしたら、母親が「タクムもイワシを食べなさい。」と、うるさく言うようになった。こういう所が、困るよね。あまりもしつこいので「人、それぞれなんや!」と言ってしまった。でも、本当にクローン病は、人それぞれに違うんだもんね。ここも、周りに理解されない事の1つだよね。


 98年5月23日 土曜日 クローン道
 僕は、食べ物は自分で買ってくるんだ。偉いでしょう。スーパーで、買い物に来る男なんて、単身赴任の人か、下宿の学生くらいのもので、目立つからちょっと恥ずかしい。病気になる前は、外食ばかりだったしね。

 でも、スーパーで歩くコースというのは、決まってしまっているよね。精肉コーナーの前なんか、絶対歩かないし、買う物も決まっているからね。動物の通り道である「けもの道」のように、クローン患者が歩く「クローン道」というのが、スーパーの中にはあるよね。買い物で、寄り道をしないから、買い物も早く終わるんだ。


 98年5月17日 日曜日 クローンの鉄人?
 毎週、フ○テレビで、「料理○鉄人」という番組がやっていて、放送開始当初は、すごい視聴率をとった。僕も、料理人が対決するという、マンガの世界でしかなかった事を実現したので、その迫力に魅せられていて、よく見ているんだよね。

 でも最近は、何だか腹が立ってきた。だって、食材が使い放題で、あれだけ使えば、おいしいのができて当たり前だもん。だから一度、食材を制限している勝負をして欲しいよね。クローン病の為の料理とかね。それだったら、僕でも勝てそうな気がするね。クローンの鉄人として出ようかな。バターをたくさん使うフレンチの鉄人と油とトウバンジャンをたくさん使う中華の鉄人になら、勝てるかも。でも絶対、芸能人のゲストを満足させれないだろうね。


 98年5月6日 水曜日 迷惑サービス
 今日は、非常に暇なので、久しぶりに「マンガ喫茶」に行って、読書に更けてみようということになった。混んで席がなくなるのを避ける為、開店に間に合うように家を出て、予定通り着いて、早速本を読み始めた。そして、注文をとりにきたので、「レモンティー」を注文した。本当に、模範患者だな〜。自分で、自分を誉めたくなるよ。

 しかし、レモンティーを持ってきたと思ったら、他にもトースト・サラダ・ゆで卵が付いていたんだよ。「あれー、モーニングサービスを始めたの?」とウエイターに聞いたら、自慢げに「最近、サービス強化ということで、始めました」だって。

 でも困った。トーストも、バターがたっぷりと塗ってあるし、サラダも生野菜だし、クローンにとってはよくないものばかりだ。しかし、僕の性格からいくと、はじめから注文しなくて食べないのならいいのだけど、出されれてしまったものは食べないといけないと思っちゃうんだよね。もちろん、バイキング形式ならいいのだけどね、1人分が決まっていないから。

 まあ、残せば良いという人も多いけど、小さい頃から「アフリカの飢餓で苦しむ人のことを考えなさい」と給食で食べられないのがあると、掃除の時間や放課後まで残って食べさせられた教育を受けたので、どうも気が進まない。そして、いつまでも食べずにいると、店員も変に思うかもと、サラダは半分残して、他は食べてしまっちゃった。これでは、模範患者ではないね。

 でも、世の中では、このようなサービスは、良い事だという風潮が強いよね。もちろん僕も、病気になる前は、このようなサービスを喜んでいたし、このようなサービスがある店を選んでいた。しかし、今となっては、このようなサービスを迷惑に感じ始めたし、そのような店を避けるようになった。やっぱり、普通の健康な人と、「食べられない」というだけで、感覚が違ってくるんだね。


 98年4月24日 金曜日 胃カメラなんて屁!
 最近、胃の辺りが痛いので、先生に言うと、うれしそうに「胃カメラをやりましょう」だって。そこで今日、久しぶりの胃カメラをやってきた。前回の胃カメラは、クローン病と診断される前の検査入院の時で、まだ検査といえば、レントゲンしか知らない頃の、汚れを知らない時で、非常に苦しかった思い出があるんだよね。

 しかしやってみると、最初に麻酔を口に含むのが辛いだけで、あとは何て事はない。こんなにも楽な検査とは思わなかったよ。というか、小腸造影や大腸カメラ、注腸に比べると、胃カメラなんて屁みたいなものだね。下剤も飲まなくていいし。僕達は、知らない内に、検査の強者になっているんだね。


 98年4月15日 水曜日 骨が、「ポキッ!」
 先週、学生時代の部活の勧誘の手伝いに行ってきた。最近は、部活に入らずに、ダラダラとその時々を自由に過ごす傾向があり、僕がいた武道系の部活も、部員不足に泣いており、僕のときは40人くらいいたのに、今では、7人という寂しさで、このままでは廃部なんだよね。そこで、無職で暇こいている僕と、同じく無職の同期の友人で、出撃してきた。実は、僕とこの友人は、学生時代は、勧誘のbPと2を争っていたほどで、僕達が入部した頃は、10人そこそこだった部を40人にまでしたんだ。

 そして、1年生に説明をする為に、後輩に防具である胴を持たせて突いたら、右手に激痛がはしった。でもその時は、ただの腫れかなと思っていたんだけど、1週間経っても、まだ痛い。そこで、いつも行く病院の整形外科で、レントゲンを撮ると、骨が、ポキッと折れていたんだよね。

 それで、監督に言うと、「胴を突いて、折れたなんて初めてや」と言われちゃった。やっぱり、プレドニンを4年間、飲み続けているからかなー。結構、見えないところで、弱っているかもね。副作用は、怖いな〜。意外と、比較的安全と言われているペンタサも、30年くらい飲み続けていると、何かあるような気もするしね。薬なんて、飲まないほうがいいもんな。

<補足>
 努力のかいがあって、部員が8人入りました。


 98年4月6日 月曜日 お腹が「グ〜〜!」
 今日は、ちょっとショッピングに出かけた。4階建ての「総合ショッピングセンター」で、僕の住んでいる近辺では、最も大きいショッピングセンターの1つである。だから人も多い。今日も、非常に混んでいるエレベーターに乗らなければいけなかった。

 エレベーターで僕がいる場所は、一番ドア側で、ドアの方を見て立っている。つまり他の人達は、僕の背中の方にいることになる。そして、目的の階である3階に着くまで、ボーとしていると、急にお腹が
「グ〜〜!」
と鳴っちゃった。

 そういえば、お昼は、体の事を考えて抜いてきたんだよね。でも、僕自身は、空腹に慣れているから、あまり気にしないようになったけど、お腹の方は、我慢できないみたいだね。やっぱり、精神力では、空腹時のお腹の音までは、消せれなかったみたいだね。それにしても、恥ずかしかったな。みんなの視線をすごく背中に感じたよ。


 98年4月4日 土曜日 やはり祭りは、出店
 今日は、僕の家の近くで祭りがあった。僕も久しぶりに祭りに行ってみた。大変な人出で、すごく賑やかで、うるさいくらいだな。でも、何か周りの人と、私とは違う感じに見える。そこで、よく違いを考えてみると、周りの人の手には、「わたがし」「とうもろこし」「クレープ」といった屋台で買った食べ物を持っており、それを食べながら楽しそうに歩いているんだよね。

 こうやってみると、何か僕は、手持ち無沙汰で、手が寂しい。そして、昔ほど祭りが楽しくない。やっぱり、祭りは出店で、いろいろ選びながら、買って、食べて楽しむというのが、今の祭りの楽しみ方で、これがないと、楽しみは半減してしまうんだよね。やっぱり、「食」は、重要な事なんだな〜。


 98年4月3日 金曜日 クローン流挨拶術
 ネット上で、全国に散らばるクローン患者が、一同に会する事が可能になって、そこで交流できるという便利な世の中になった。今、この文章を読んでくれている人も、その恩恵を身にしみて感じているだろうな〜。

 だけど、何人か集まると、絶対誰かは体調を崩していたり、入院しているというクローン病の厳しい現実に直面しちゃう。悲しいなー。

 そんな現実だから、同病の人と会う時の挨拶も違ってくるんだよ。普通の挨拶なら

「こんにちは。今日も良いお天気で」
「本当に、そうですね。」
という感じで、これが大阪商人なら

「儲かりまっか」
「ボチボチでんな」
という感じ。そして、クローン病同士なら開口一番

「体調はどうですか?」
「まあまあですよ。」
になっちゃうよね。まあ、これがクローン流挨拶術になっちゃっているよね。


 98年3月22日 日曜日 クローン株式会社?
 インターネットをやるようになってから、同病の人の存在が近く感じるようになった。今までだと、数少ない同じ病院のクローンの人と外来の時に顔をあわせるか、年、何回かの患者会の時に会えるくらいのもので、時々「孤独感」というものに、襲われていたりしたんだよね。こうやってみると、やっぱり同病の人と会うと、落ち着く感じだね。

 そう考えると、クローン病の人達だけで住む「クローン会館」というのがあると面白いかもね。食事も、「クローン食」1人前を作るといった面倒な事をやらなくてもいいし。気持ちも解かりあえるだろうからね。

 その前に、クローン病の人達で経営する、「クローン株式会社」みたいなのがあればいいと思うんだよね。前の職場では、身体の事を解かってくれなかったからね。どうしても、無理をするか、辞めるしかなかったんだよね。でもやっぱり、社会から隔離されるという感じでよくないかもね。しかし、時々ふっと、このような事を思ってしまうんだ。


 98年3月13日 金曜日 クローンピック?
 今年の大イベントである「冬季長野オリンピック」も終わり、今、「パラリンピック」が同じ場所でおこなわれている。こちらは、障害者の人のオリンピックである。

 しかし、実のところ、僕はあまり「パラリンピック」の仕組みが解からない。クローン病でも、障害者手帳を持っている人もおり、そのような人達は出られないのだろうか?やっぱり、内部障害ではなく、外部障害しか出られないのかな〜。

 僕達難病者も、そのような大会があると、「生きがい」というのが見つけられて、良いかもしれないね。クローン病の人達の「クローンピック」とかね。世界のクローン病の人達が、1箇所に集まって、競技したりするんだ。選手村とかでは、必然的に交流会になるね。食堂も、「クローン食」が用意されていて。そうなったら、僕も「クローンピック」目指して、トレーニングに励むんだけどね。

 だけど、僕達は人々に、あまり感動を与える事はできないだろうね。障害者の人達は、「障害者というような目で見てほしくない」とよく言うけど、やっぱりパラリンピックを見ていると、片足でスキーをやっていたりして、「すごい!」と感動する。だって、記録的には普通の「オリンピック」に出る人の方が、はるかにいいのだから。だから、どうしても「見た目」で感動してしてしまう。

 僕達のような「内部疾患」だと、スキーをやっても、普通の人が滑っているようにしか見えない。前節で、「只今、絶食中です」と言っても、競技を見ている内は、忘れているだろうからね。やっぱり、感動は、与えられないだろうね。


 98年3月9日 月曜日 ボクシングは、天職?
 昨日、ボクシングの辰吉丈一郎の防衛戦があって、何とか王座を守ってよかった。同じ日本人としては、嬉しいもんだ。辰吉も、今までの厳しい練習が報われて本当によかった。

 しかし、ボクサーに辛い事を聞くと、その中には、たいてい「減量」というのが辛い事の1つに挙げられる。食事を減らして、水分を絶って、汗をかいて、目標のウエイトまで落とさなければいけない。僕の学生時代の知り合いで、ボクシング部の子がいたんだけど、試合1週間前で、1日オレンジを1個とかって言っていたな〜。空腹と脱水症状と戦いながら、一生懸命トレーニングをしていた。

 空腹と言えば、僕達「クローン患者」は、空腹にはめっぽう強い。何と言っても、再燃する度に絶食をするのだから。入院すると、IVHで2〜3ヶ月以上だし、エレンタールばかりの人もいる。食事といっても、腹一杯食べる事は叶わず、1日1〜2食という人も結構いる。こうやって考えると、「クローン患者」は、ボクシングが「天職」という感じに思えるね。

 でもやっぱり、水分も絶つと、エレンタールが飲めないし、それを我慢すると、身体の栄養状態が悪くなって、病気にもよくないし。それに、ボディブローで、お腹を殴られつづけると、お腹が痛いし、やっぱり無理かな。

<補足>
 タクムは、学生時代に一応、武道系の部活に入っていました。しかし、ある時から、防具を装着しているにもかかわらず、お腹を蹴られるとすごく痛い。どんな軽量のパワーのない子に蹴られても痛い。これは腹筋を鍛えるどうこうといった話ではなく、お腹の表面ではなく、中から痛くて・・・・。その2ヶ月後に下痢が始まって、クローン病と診断されました。すると、この時の痛みは、お腹の中にすごい炎症があったからなんだね。だから怪我の上から蹴られれば、痛い訳だ。


 98年3月6日 金曜日 患者のモラル!?
 僕も、病歴5年目を迎えて、いろんな同病の人と話をしてきたけど、やっぱり患者の不平不満を聞く事も多いね。病院や行政の対応がよくない等・・・・・。でも結構、患者側のモラルを考えちゃう事もあるんだ。例えば、栄養剤が貯まって、捨ててしまう人。栄養剤って、高価なんだよ。しかも、保険適応品なので、国民の税金を無駄に使っている事になるから、政治家の汚職並みの事なんだよね。5月からの医療費増大による、医療費の一部負担も、自分で自分の首を絞めてる感じだから。

 このように言う僕も、実は、この前まで、エレンタールが貯まっていたんだ。ダンボールで11箱も。ダンボールには、14パックのエレンタールの小箱が4箱入っているから、11×4×14で、何と616パックもなっていたんだ。これは、これまでやっていた仕事が忙しくて、寝る時間もあまりなかったので、できなかったんだよね。

 でも、先生に余っている事を言うと、今までやっていなかった事に対して、不愉快になってしまうかもと思って、言えなかったんだ。しかし、捨てるのも国民の血税を使っているんだし・・・・。そこで、先生に勇気を出して「実は、仕事が忙しく、貯まっちゃいましたので、今日はエレンタールはいらないです」と言ったら、先生も、そのように正直に言ってくれた方が良いと言ってくれたから、本当に自己申告してよかったと思っちゃった。ただ、11箱という膨大な量には、呆れ果てていたけど。でもこれは、貯めた事より、今まで黙っていた事に関してなんだよね。

 今、ここを読んでいる同病の人で、栄養剤や薬を捨てている人がいたら、勇気を出して、先生に言って、処方をストップしてもらいましょう。身体は病んでも、心までは病まないようにね。


 98年3月5日 木曜日 難病助成金!?
 インターネットをやっているといろんな事を知る事ができるね。僕が住んでいるところは、たいした街ではないので、クローン病患者自体が少ないし、クローン治療における有名な病院があるわけでもないので、情報不足というのがつきまとちゃうから。

 さて、今回は、同じくネットから、「難病助成金」が出る地域があることを知った。僕が住んでいる所では、そんなのは全くない。保健所に問い合わせても、やっていないとの事。給付される所は、主に関東を中心とした都会が多く、金額も地域によってまちまちだが、多いところは月に1万5千円もでる所があるんだって。

 どうも地方行政に委ねられているので、裕福な自治体と貧しい自治体で明暗が別れてしまっているみたいだ。でも、同じ日本なのに、福祉に関して差があるのはおかしい感じがするんだよなー。税金だって、同じように納めているし、物価も同じ日本だから、土地の値段以外は変らないし。やっぱり、こういう事は、全国共通であって欲しいね。