ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その１０６

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

七

ⅲ

「お義姉さん、すみませんでした……ってあら？」

　居間にいると思いきやそこに義姉の姿はなく律子は目を瞬いた。

と同時にキッチンからいい匂いが漂ってくる。

香ばしい香りに惹かれ台所へ足を進めると、

直実が野菜を炒めているのが見えた。

「お義姉さん」

「あ、律ちゃんおかえりなさい。

勝手に台所借りちゃってごめんなさいね。

かー君がお昼まだだって言ってたから……」

　眉を下げ、申し訳なさそうな顔をする義姉に、

律子は大袈裟なまでに顔と手を横に振った。

「いいんです、いいんです。こちらこそすみません。

なんか土とお野菜頂いたって」

「いいのよ。

律ちゃんたちが遊びに来てくれるのを待つつもりだったんだけど、

ちょっと家を出る用があったから。

それに土もお野菜も早いほうがいいと思ってね」

　律子は、ウィンクをするように微笑む直実に胸をなで下ろし、

頭を下げた。

「ありがとうございます」

「さっ、あとはご飯と一緒に炒めるだけだから

律ちゃんも手を洗ってきなさい」

「はーい」

　家に帰ってきてすぐにご飯が食べられるなんていつぶりだろうか。

律子は子供に戻った気分になりながら手洗いへ向かった。

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