ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その１１１

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

七

ⅷ

「あ、はい。長々と引き止めてしまってすみません。

しかもお昼までご馳走になってしまって……」

「いいのよ。今度はうちのほうにも遊びにきてね。

律ちゃんたちにしたら来にくいかもしれないけど……」

　笑顔が戻ったはずの直実の顔がかげる。

出かける予定があると言って土を持ってきてくれたが、

それはこちらが気を使わないようにと言ってくれた嘘なのだろう。

公には獣人たちを迫害する行為などは禁止されているが、

市民の獣人たちに対する差別視はまだ根強い。

律子は、自分たちのことを考えてくれる義姉の心遣いに感謝した。

「そんなことないです。

近いうちにみんなでお邪魔させていただきますね」

「ええ。待ってるわ」

　直実はニッコリ笑うと、クルリとこちらに背を向け歩き出す。

（これでなんとか目処がつきそうね）

　律子は振り返ることなく歩く義姉を見送りながら

小さく息をついた。

「持つべきものは獣人の関係者よね」

　律子は無意識に出てきた自身の言葉に驚き、

瞬間後くすりと笑う。

仲の良い友人に獣人の親族がいることを打ち上げられずにいるのに、

こんな好意的な言葉を吐ける日がくるとは思ってもみなかった。

「そうだ！

黄金梅を実らせたら獣人への差別をなくすと願えばいいんだわ！」

　そうすれば周りに気兼ねすることなく義姉の家に遊びに行けるし、

友人にも彼らを紹介できる。

「そうと決まれば黄金梅のことを調べなくっちゃ！」

　律子は両手で拳を作り闘志を漲らせながら家の中へと戻って行った。

（了）

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