ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その１７

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

二

ⅳ

　庭の中へ入ると色とりどりの花たちが麻里を迎えてくれた。

「うわ、本当にきれい！」

　小さいとはいえ整然と整えられた庭だ。

メルヘンチックで温かなその雰囲気に麻里は目を細めてしばし浸る。

横にいた主婦が嬉しげに肩を揺らした。

「ふふふ。そうでしょう。自慢の子たちですもの。……って、あら？」

何かに気がついたらしい主婦が、まばたきをして近づいてくる。

「え？　な、なんですか？」

　驚いて身を引くと、主婦が不思議そうに小首をかしげた。

「あなたいい香りがするわ。香水か何かつけているの？」

　律子の問いに麻里はかぶりを振る。

「いいえ。じゃなくて、それを言うならあなたもなんですよ。

えっとだからつまり、種を植えませんでしたか？　梅の種みたいな」

　忘れていた本題にむりやり話を戻す。

主婦が驚いたように目を見開き頬に手をあてた。

「私も？　でも私は何もつけてないわよ。

お花ちゃんたちの移り香かしら。それって素敵よね」

　幸せそうに微笑む主婦に麻里は頷く。

「確かに素敵ですよねー。

……ってだからそうじゃなくって！　梅植えませんでしたか？　梅！」

　これ以上話を逸らされてはたまらない。

麻里は同調して和みそうになる自分に叱咤しつつ主婦を見据えた。

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