ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その１９

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

二

ⅵ

「いいえ、その子はうちの子の友達と虫を追いかけていたわよ。

ってやだ梅畑君って、梅八家の子だったのかしら？

私結構ひどい扱いしちゃったけど大丈夫かな」

　主婦の答えに麻里はほっとする。

（虫？　虫を追いかけてるって、どんだけ子供なのよ）

　あまり気にする事態でもないのかもしれない。

麻里は内心の揺れを悟られないよう人差し指を顎へあてた。

「う、うーん。たぶん平気じゃないでしょうか。次期当主なら別ですけど」

　考えるふりをしながら話を逸らす。

気づいているのかいないのか、主婦が目を剥いてきた。

「次期当主って市長さん？

えっ、あの子ってそんな偉い人の家の子なの！　

やだ、写真一緒に撮っておけばよかったかしら」

　どうやら彼女は案外ミーハーらしい。　

主婦の勢いに圧されつつ話をみのりのほうへ誘導する。

「あ、当たってますけど彼は次期じゃなくて当主です。

私が言っているのは梅宮みのりさんのことですよ」

「あ、ご本家のことを言ってたの。もうやだ、

最初からそう言ってよ」

　これでなんらかの情報が得られれば、と思って告げた言葉だったが、

主婦には通用しなかったらしい。

照れたようにバシンと背中を叩いてくる。

「い、痛いです痛いです。

でもそうかあ、ご本家っていうんですねえ」

　麻里は痛い背中をさすりながら、

みのりたちの呼称について話を促した。

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