ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その２２

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

二

ⅸ

「私これでも２３で、高校の国語講師です……」

　律子は紺色のパンツスーツを着た女性の全身を

下から上へと動かしていた目線をとめ、目を丸くした。

「えっ！　そうなの、てっきり高校卒業したばかりだと……

アハ、アハハハハ」

「あはははは……」

　律子と女性との間になんとも言えない空気が漂う。

（ど、どうしよう。

ここで若さの秘訣とか聞いたらやっぱりダメよね……）

　個人的には最近シワも出始めたことなので切実に聞いてみたい

ことなのだが、そこは自重するべきところだろう。

律子は脳を高速回転させ、

この重苦しい空気から脱却するべく話題を探した。

「えっと、それで梅でしたっけ？

梅なんて植えてないわよ。昨日植えたのはこの子たちだもの」

　律子は腕ごと動かし、ガーベラたちがあるほうを指し示す。

「きれい！　でもこれじゃあ梅とは違うし……。

でも奥さんから香りがするんです。

あの種を植えて鍵を手に入れないかぎり

こんな香りはしないはずなんですよ！」

　くんくんと鼻を鳴らすように近づいたかと思いきや、

突然律子の両腕を掴んできた。

律子が女性から逃れようとへっぴり腰で後ずさっても

なぜか動いた分だけ距離を縮めてくる。

「いや、だから近いし、顔怖いし、何よりごめんなさい。

あなたの言ってる意味が全然理解できないんですけど」

　鼻息を荒くして迫ってくる女性の気迫に困惑したまま、

律子はどうすればこの場から逃げ出せるか脳内でシミュレートした。

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