ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その３３

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

三

ⅷ

「なんだかよくわからないけど、

とりあえずその人の言う通りにしてあげれば？」

　母親が必死で逃れようとしているのに何を言い出すのか。

律子はこちらを見捨てるような口ぶりの翔へ目を吊り上げた。

しかし、年上の女性に対してかわいそうな子を見るような

眼差しを向けている息子の姿を見て律子は気が逸れる。

「そんなこと言ったって……」

　息子が同情したからといって、じゃあ行きます、と

合意する気にもなれず。

律子が女性のほうへ視線を戻し困り果てていると、

彼女はこちらを掴んでいた手を外し瞳を輝かせながら

振り返ってきた。

「翔君。あなたいい子ね！

さあ、じゃあ奥さん！　行きましょう！」

　味方を得たとばかりに張り切る女性に

律子はあんぐりと口を開けたまま放心する。

「ここでうだうだ言っててもしかたないからさ」

　後ろからぽんぽんと翔に肩を叩かれる。

息子の言い分ももっともだ。

なにより自分自身がこれ以上押し問答を続けることに

嫌気がさしていたところだった。

「もうしょうがないわね。

じゃあ、お母さんの上着と財布と携帯持ってきて」

　律子はなんとなく釈然としない気持ちを胸に抱きつつも、

翔へ出かける準備を頼んだ。

「りょうかーい」

「それぐらいは待っててもらえるわよね？」

「は、はい。まあ、それくらいなら……」

　門扉へ向かいながらため息まじりに問うと

女性が渋々といった表情で同意する。

そんな彼女の態度に苦笑しながらも、律子は女性を促し門扉を開けた。

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