ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その４２

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅱ

「言ったじゃない。今朝落ちてたのを拾ったって」

「はっ！　そういえばそうでしたね！」

　麻里は律子の言葉に頷きながら必死で邪念を追い払う。

今はとにかく鳥からあのどんぐりを奪い返すことが先決だ。

麻里が前を向くと、ちょうど鳥が寺の奥へと入っていくところだった。

「……あ、鳥がお寺へ入っていきますよ！　急ぎましょう、律子さん！」

　麻里は自転車を荒々しく停めて峰音寺の正門へ向かう。

「え、ええ。わかったわ。って待ってよ。

ちゃんと自転車の鍵はしめてくれないと困るじゃない」

もう片方の自転車の鍵を閉めつつ文句を言う律子の言葉を無視して、

先を急ぐ。

正門の左右には年代物らしき阿吽の像が厳然と佇んでいた。

「律子さん！　あっちです！　なんか森のほう！」

　髙い木々が鬱蒼と生い茂っている方角を指さすと、

はるか遠くのほうで律子が盛大な溜め息をついてくる。

「もうあんなほうまで行ってる。

よくこんな足が埋まるほどの砂利の中走れるわね。

やっぱり若いからかしら」

　よくは聞こえないが、

何やらブツブツと口の中で言いながらこちらへやってきた。

麻里は律子がやってくるのももどかしく、一足先に寺の裏へ回りこんだ。

「お墓だわ。んー、しかたがない。

みなさん騒がせてごめんなさーい！　ちょっと通りまーす！」

　宣言して構わず墓を突っ切る。

横手に黄梅市の古文書と同じ文字が刻まれた

青石の墓らしきものが２つ立ち並んでいるのが目に入った。

だが、そんなものにかまっている場合ではないと前を向く。

そこへ、後ろから息を切らしてやってきた律子が窘めてきた。

「はぁ、やっと追いつい……え、そっちはダメでしょう……」

　もっともな発言だがそんなことを聞いている暇はない。

麻里は律子の言葉が聞こえないふりをしてダッシュで墓地を抜ける。

「あー、もう！　すみません、お邪魔しまーす」

　律子のあきれ返った声を聴きながら森の中へ入ると、

奥に大きな銀杏の木にとまている鳥を見つけた。

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