ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その４６

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅵ

「大丈夫です！　たぶん」

「大丈夫って、何を根拠に……」

「律子さんはここで見ててください！　危ないですから！」

　こちらの心配をよそに麻里は自信に満ちた笑みを浮かべ、

ヒールを履いたまま木を登り始める。

「え、ちょっと、やめなさいって。危ないから！　せめて梯子を！

ってそうよ梯子を借りましょう。って聞いてるの？」

　つたないながらもなんとか登っている麻里を止めようと律子は

必死になる。

言っても聞かないことはこの短時間の間に身にしみて

わかってはいたが、言わずにはいられなかった。

（絶対あの子失敗するわ。

ここぞっていうときにドジ踏みそうだもの）

　考え直してくれるかもしれないと代案を提案しても

麻里はやはり聞く耳を持ってくれなかった。

「大丈夫です」

「あ、危ない！」

　麻里が木からずり落ちる。

その拍子に彼女の足からヒールが四方へ飛んだ。

それでも彼女は幹に爪を立てながらしがみつき

意気揚々とこちらを振り返る。

「大丈夫です。テレビで観たことがありますから！」

「テレビで見たことあるって、木登りした経験はないってこと？

あー、見てられない」

　彼女の突飛な発言に頭が痛くなってきた。

律子は危なっかしい麻里の姿を見ていられず手で顔を覆う。

「だい……じょうぶです……くっ！」

　麻里の苦しげな声が辺りに響く。

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