ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その４７

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅶ

「どどどどどしよう。落ち着けー落ち着くのよ、律子。

こういうときは焦ったらダメなのよ」

　律子はじっとしてることもできなくなり、

その場で円を描くように動きながら深呼吸を繰り返す。

「いい。私はできる子よ、律子。大丈夫よ。私はできる子。

うん。よし」

　拳を作り、自身を奮い立たせようとしている律子の耳に

喜びに溢れた麻里の声が届いた。

「つ、着いた！　着きましたよ！！　律子さーん！」

　背を向けていた身体を麻里のほうへ向けると、

得意気な顔で手を振る彼女と目が合う。

「よ、良かった……」

　律子は足の力が抜けへたりこんだ。

「あとはあのトンビを捕まえて……」

　麻里が何やら呟いているところを、

地面にどっしりとお尻をつき見つめる。

よくあんな高いところまで登ったものだと感心していると、

今までおとなしかったトンビが突然羽を広げバサバサと動かした。

「ってあ！　きゃ！」

　鳥を避けようと身体をずらした麻里がバランスを崩し、

幹から足を滑らす。

「きゃー！」

　腕を左右に動かす麻里の姿を最後に、

律子はこれから起こる最悪の事態を直視できず手で目を覆った。

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