ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その５３

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅹⅲ

　バシンッといい音に押されるように

彼女はそのまま青年の元へ歩き出す。

（本当に大丈夫かしら、あの子……）

　木から落ちた麻里を助けたくらいだから、引き受けてくれるだろう。

そうは思いつつも、

律子はそわそわしながら麻里の後ろ姿を固唾をのんで見守る。

「あ、あのぅ……？」

　青年の元へたどりついた麻里の躊躇いを含んだ小さな声が

聞こえてきた。

「うっ、な、なんだ」

　顔を赤く染めた青年が、声を若干上擦らせている。

律子は、こちらの思惑通りな青年の態度にほくそ笑んだ。

（ちゃんと言った通りにできたみたいね）

　これならきっと成功するだろう。

気づかぬうちに固くなっていた肩の力を抜き、ほぅっと息を吐き出す。

その間にも麻里の声は続いていた。

「実は、トンビに大事な物を取られてしまいまして。

あの銀杏の木の上にある巣に置いてあるみたいなんですけど……。

大きなどんぐりみたいなやつで……」

「ああ」

　律子は、先ほど登った木を指さしながら話す麻里と

彼女をじっと見つめたまま相槌を打つ青年を、

テレビを観ているような気分で観察した。

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