ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その５７

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅹⅶ

「なぁ、あんたこのどんぐりどうしたんだ？」

　あっという間に木から降りてきた青年が眉をしかめ戻ってきた。

彼の大きな手だとずいぶんと小さく見える。

それでも普通のものよりは大きいどんぐりを青年は麻里へ渡さずに

揺らした。

（な、何、あのどんぐりってそんな大切なものなの？）

　そういえばどんぐりを見せたときも

彼女は目の色を変えて執着をしていた。

（もしかして魅了されちゃう呪いがかかってたりして……

アハー。そんなわけないか）

　律子は自分の妄想に自身で突っ込みを入れる。

「律子さんが持っていらしたんです。

……ええっと、私は梅の種から採ったこれを持ってるんですけど」

　なんのてらいもなく事情説明する麻里の言葉尻に、

律子は瞳を見開く。

（あの凶器が種から生えたですって？　あれって植物なの？）

　律子は麻里が持っている金物をまじまじと見つめた。

先端が丸みを帯びたペンチのような形をしているそれは胡桃割り器にしか

見えない。グリップ部分は木製かもしれないが、

どうみても木から生えるようなものではないだろう。

　律子は平然としている麻里の顔と胡桃割りを何度も往復させた。

だが、そんなこちらを青年の一言がさらに驚愕させる。

「やっぱり。お前、黄金梅を咲かせようとしてるのか？」

「へ？　あ、はい。

上司の命令なんでこれ以上は言えないんですけど……ごめんなさい」

（は？　え？

なんで普通に黄金梅を咲かせるなんて会話が進むのよ）

　この青年も麻里同様、夢見がちなのだろうか。

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