ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その６２

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅹⅹⅱ

　人が狼になったというのになぜ冷静なのだろう。

目をしばたたいていると、律子が小さく微笑んだ。

「あら、あなた獣人だったのね」

「獣人？　そ、そうだったんですか！　はあ、驚いた……」

　獣人が獣に変身するという話は学園でも聞いていたが、

本当にそんな姿になった人物を見たのは初めてである。

どくどくと脈打つ心臓を押さえ深く息をついていると、

狼姿の男性がこちらを向いてきた。

「これくらいでいいか？」

　両足で掘った穴を見せてくる。

麻里は穴を覗き込み歓喜した。

「はい！　あっという間に掘っちゃうなんてすごいですね！」

　感心して男性を見おろすと、彼が軽く四肢を震わせる。

「これくらいなんてことない」

　軽い口調で答えつつ服を咥えると、木の裏へと移動してしまった。

「どこへ行かれるんですか？」

「人間に戻ってくる」

　なんでもないことのように告げる男性の言葉に、麻里は目を見開く。

「あ……」

　彼が言わんとしている意味に気づき、恥ずかしさに頬を熱くした。

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