ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その６４

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅹⅹⅳ

　顔を赤らめ慌てる麻里をからかっていると、

元通りに服を着た青年が戻ってきた。

「？　何かあったのか？」

　青年は当たり前のように麻里の頭を触れる。

（キャー！　何あれ、何あれ！　新婚さんも真っ青じゃない）

　律子は食い入るように２人を見つめる。

そんなこちらの態度が余計に麻里の羞恥心を煽ったのだろう。

彼女は青年の手から逃れるように後ろへ下がった。

「な、何も。っていうか、頭なでるのやめてもらえませんか？」

「あ、わりー。無意識だった……」

　麻里の拒否がショックだったのか、

青年は眉を八の字にしてしょぼんと肩を落とす。

（あーあ、獣化してたら絶対尻尾と耳が垂れてるわね……

でも犬好きだったら絶対ほだされちゃいそうよね）

　容易に想像できる彼の獣姿に律子はくすりと肩を竦めた。

「え？　いえ、大丈夫ですけども……」

　どうやら麻里は犬好きのようだ。

青年の頭の上で垂れている幻の獣耳が見えているらしい。

赤面しながらも瞳をキラキラと輝かせ、

彼の頭部から視線を外そうとしない。

（あーダメよ。そんな態度じゃ立派な飼い主さんにはなれないわ）

　躾は最初が肝心なのだ。

甘く見られたら最後、調子に乗っていいように扱われてしまう。

それは飼い主と犬の関係だけではなく、

男女間でも同じことが言えるだろう。

「じゃ、じゃぁ、なでてもいいか？」

　案の定、青年は自分の要求を口にした。

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