ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その７

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

一

ⅶ

「一つお分けしましょうか？」

「いえいえ、私には無理ですから」

「そうですか？

何事も挑戦だと現ご当主様もよくおっしゃいますけどねえ」

　多島の言葉に麻里は大切なことを思いだす。

「そうだ、先生。今日は梅宮みのりさんを見ませんでしたか？」

「いや、見ませんが。……そういえば、昨日やたら急いで

高等部の階段を梅田のお嬢様と降りていってたなあ」

「そ、そうですか」

　それなら自分も追いかけたので知っている。

落胆して肩を落としていると、多島が問いかけてきた。

「みのり様に何がご用でも？」

「実は、どうしても彼女に取り組んでほしい課題がありまして」

「課題、ですか？」

　みのりにそんなものは必要ないだろう、と言った風情で眉を顰める多島に

麻里は慌てて理由をこじつける。

「あ、実は私まだここら辺の伝承とかにくわしくなくってですね。

で、勉強ついでにクラス内で班を作って発表してもらおうかと……」

　右口角を引きつらせながらなんとか告げると、

多島がなるほど、と微笑んできた。

「それはよい心がけですな。

……では、勉強熱心な先生にこれをさしあげましょう」

「土、ですか？」

　ビニール袋に渡されたものはなんの変哲もない黒々とした土だった。

「久万野神社の御土です。これで植物を育てると、

どんな人間でもきれいな花を咲かせることができるんですよ」

「はあ……。あ、ありがとうございます」

「なんのなんの」

　満面の笑みで手渡された土をおずおずと受けとっていると、

ふいに携帯の着信音が鳴った。

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