ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その７８

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅹⅰ

　麻里は満に倣って石碑を眺める。

傍に立っていた案内板をみると「青石卒塔婆」と書かれていた。

「へー石の卒塔婆なんて初めて見ました。それも青石ですって」

　驚きとともに改めて石でできた卒塔婆を見つめる。

青い石でできているというが、

どちらかというと灰色に近い色をしている気がした。

（ぜんぜん青くないけど……）

　こっそり呟き首をかしげていると、

律子が青石をためつすがめつした後頬へ手をあてた。

「青石って言うほど青くないわね」

「そうですよね。普通の石にしか見えないですよね」

　自分と同じ感想を述べてくる律子に同意する。

すると、後ろのほうを調べていた満が叫んだ。

「おい、ちょっと見てみろ」

裏側へ回るよう言われ、麻里は急ぎ満に近づく。

「見つかりましたか？」

　尋ねると、満が肯定してきた。

「ああ。文字が書かれてる」

　卒塔婆の右下にうっすらと刻まれた文字が見える。

「これが文字？　記号みたいね」

　律子が顔を近づけ眉を顰めた。

麻里も文字を手でなぞりながら満をふり仰ぐ。

「なんて書いてあるんでしょう？　黄梅文字はわからなくて……」

　獣人である満ならば黄梅の古い記述も読めるかもしれない。

望みを託して見つめると、満がゆっくりと口を開いた。

「『おおふみるきみひとおおのみまいをおみどらば

おおうんのおおぞうよりみかぎのおおしゅをみたまわらむ』」

　意味不明な言葉に一瞬声を詰まらせる。

「……何かの呪文ですか？」

「呪文か何か？」

　眉根を寄せて非難がましく満を見ると、

異口同音で律子も声をあげた。

満は渋面を作りそっぽを向いてしまう。

「書いてある文字をそのまま読んだだけだ」

　心外そうな声音に対しすまなく思っていると、

律子が溜め息とともに腕を組む。

「読んだだけって……まったく意味が分からないけど

この呪文がヒントなのかしら？」

　考えこむ律子に促され、麻里は改めて黄梅文字をたどる。

「何かもう少しわかるヒントが……あれ？　何か絵が描いてある」

　手で文字をたどったそのさらに下側に、小さな絵が刻まれていた。

一つ前を読む　　　 GPの部屋に戻る　　　次を読む