ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その７９

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅹⅱ

「なんでしょう、これ。鳥？」

　顔を近づけて絵を見ていると、律子が割りこんでくる。

「え、どれどれ？　あら本当」

　頬に手をあててじっと絵を眺める。

「鳥の絵と、鳥が実を食べてる絵みたいですけど……」

「きっとトンビの絵よ。

銀杏の木に巣があるくらいだから昔からトンビがいたんだわ」

　掠れた絵に目をやりながら慎重に言葉を紡ぐと、

律子が自信たっぷりに告げてきた。

「それにトンビに実を盗まれたし」

　人差し指を左右に揺らしながらウィンクする律子の言葉に、

麻里は小さく頷いた。

確かにその線はある。

（さすが主婦。小さなことにも鋭いわ）

　ＴＶドラマはフィクションだというけれど、

主婦が鋭いというのはあながち間違っていないのかもしれない。

麻里は顎に拳をあてて考える。

もしこれが謎解きになっているのなら、暗号である可能性が高い。

「トンビ……実……。じゃあもしかして、『と』と『み』を

消してみたら読めるとか？」

　自信はないながらも口を開くと、満がすぐに実行してくれる。

「『おおふるきひおおのまいをおどらば

おおうんのおおぞうよりかぎのおおしゅをたまわらむ』」

「意味が分からないですね……」

　少し安易すぎただろうか。

溜め息をついていると、律子も頬に手をあてる。

「意味不明な感じは変わらないわね」

「どうやって読み解いたらいいんでしょう？」

　曲げていた腰を伸ばし律子に問いかけると、

律子が、でも、と答えてくる。

「この絵がヒントになりそうってのはあたってそうよね」

　律子の言葉に麻里は頷く。

確かにあたってはいないが、

正解に近いところまではきている気がする。

「トンビじゃないとしたら何の鳥なんでしょう？」

　あの大きな鳥がトンビでない可能性もあるかもしれない。

図書館に行って図鑑でも開くしかないか、と思っていると、

突然満が大声をあげてきた。

一つ前を読む　　　 GPの部屋に戻る　　　次を読む