ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その８１

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅹⅳ

「読めませんよ。さっき満さんが言ってたじゃないですか。

私そういうの覚えるの得意なんです。要するに耳コピってやつですね」

　麻里はにっこり笑みを浮かべ、

少し得意げに胸を反らしながらこちらへ身体を向ける。

自分には到底できないことをやってのけた彼女を律子は心底感心した。

「へーすごいのねー」

「数少ない特技なんです」

「特技があるだけでもすごいじゃない。誇れることよ」

「ありがとうございます」

　麻里の肩をバシバシ叩きながらさらに褒めると、

彼女は頬を染めはにかんだ。

「それにしても、『古き人の舞』ってどんな踊りなんでしょう？

それをうんの像のところで踊るといいって言ってるんですよね？」

「吽の像なら寺の入り口のところに立っていたからそこのことを

言ってるんだろう」

「じゃあ『吽像』の前で踊りを踊ればいいんですね！」

　麻里と満の会話を聞きながら、

律子は入り口の両側に立っていた立派な阿吽像を思い出す。

（あの像の前で踊るってのはちょっと勇気がいりそうよね……）

　参拝者を品定めするような眼孔の鋭さを脳裏に蘇らせ身を震わせた。

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