ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その８９

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅹⅹⅱ

「歩かないで踊りだけやってみろ」

　そうだ。最初から一気にやろうとするからいけなかったのだ。

律子は満の助言に手を叩きながら賛同する。

「そうね。ちょっと麻里さん１人で踊ってみてくれる？」

「はい。ええっと大きく円を描いて、横向きのハの字を描きながら

回って……」

「そうそうその調子」

　今は動作さえあっていればいいだろう。

律子は、ロボットのようなカクカクとした動きをする麻里のやる気を損なわないよう

ひと際明るめの声を出した。

＊＊＊

「こうやって、こう！　……ですか？」

　どのくらい経っただろうか。

ぎこちなさは残っているものの大分様になってきた。

これなら大丈夫だろう。

「これでおしまいよ。

それじゃ、今度こそ三人合わせて踊ってみましょう」

　長かった。まさか盆踊りを教えることがこんなにも難しいとは。

（私、人に教えるの向いてないんだわ）

　今までの練習で精も魂も尽き果ててしまったかのような疲労感で

いっぱいになっているこちらとは反対に、

麻里が生気みなぎる顔を見せてくる。

「今度こそ踊れるような気がします！」

「お前ならできる」

　満が、朗らかに笑う麻里を満足げに見つめながら頷いた。

「がんばります！」

（てか、教えたの私なんですけど……）

　どこぞのスポーツマンガか、と突っ込みを入れたくなるような

２人の会話に、律子は疲労感が増した気がした。

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