ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その９０

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅹⅹⅲ

　３人で一緒に踊り始めて、初めて後半パートまでたどり着いた。

あともう少しですべてが終わる。

律子はゴール目前で気が抜けそうになる自身の気を引き締めながら

踊り続けた。

「はい最後、手をチョチョンガチョン、

チョチョンガチョンンっと叩いてー」

　締めの１本を叩くと同時に口を開けている阿像から

けたたましい笑い声が聞こえてくる。

『あははははは！』

　激しい風と共に阿像の口から何かが吐き出された。

「うわわっ！　いったーい！」

　それは、運悪く麻里に当たってしまったようだ。

律子は彼女を慰めようと後ろを振り向いた。

「痛っ！　何か当たったわよ」

　時間差でもう１つ吐き出されたのだろうか。

律子はジンジンとする額をさすりながらぶつかってきたものを探す。

「種だ」

　額のど真ん中にあたった種は、

満のいるほうまで飛んでいったらしい。

風がおさまると青年は足元に転がる種を拾いこちらへ近づいてきた。

　前方にいる麻里のところで立ち止まり、

種を渡すと彼女は元気よく頭を下げる。

「あ、ありがとうございます！」

　ご褒美をもらった子供のように、

麻里は種を太陽にあてたりと嬉しそうに眺めていた。

（なんであんな元気なのよ）

　やはり若さなのか。

そこまで自分の年を気にしたことはなかったが、

こんなにも差が出てしまうものなのかと律子は悲しくなった。

そんなこちらの心情などまったく気づいていない麻里が

溌剌とした顔で満を伴い歩いてくる。

「やりました！　律子さん！」

「えぇ、本当良かったわー」

　千切れんばかりにしっぽを振る仔犬のような麻里の表情に、

律子は頬をひきつらせながら無理やり笑みを作った。

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