ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その９１

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅹⅹⅳ

「梅の種に似てるのね」

　疲れたような笑みを浮かべながら律子が種を見つめる。

おそらく先ほどのレッスンのせいだろう。

麻里は申し訳なく思いながら、律子に首肯した。

「たぶん梅の種です」

「これで黄金梅が咲くの？」

　若干疑わしそうな声音で尋ねてくる律子へ頷く。

「はい。たぶん。前のもそうでしたから」

　さらに説明しようと口を開きかけるが、

そこへ携帯の着信音が鳴り響いた。

携帯を取り液晶を覗きこむと、高松室長の文字が踊っている。

「あ、ちょっとすみません！　失礼します！」

　麻里は慌てて満たちの傍を離れ着信ボタンを押した。

「なんでしょう？」

　麻里が尋ねると不愉快げな声が聞こえてくる。

『君はいつになったら定時連絡の意味を理解するのかな？』

「申し訳ありません。ちょっと立て込んでいたもので……」

『まあ、いい。言い訳は後で聞く。今から私もそちらへ向かうから』

　高松の言葉に麻里は目をまたたいた。

「へ？　黄梅にですか？　今から？」

　驚いて問うと、高松が肯定してくる。

『そうだ。君に任せていると一向に話が進まないしね。

果杷駅で降りるから駅で待っていてくれるかな？』

　どうやら今日も虫の居所が悪いらしい。

麻里は理由を問いたい衝動をこらえ素直に了承した。

「あ、はい、わかりました。今から向います」

『頼んだよ』

　切れた着信に溜め息をつき律子たちの元へ戻る。

「あの、すみません。上司がこれから果杷駅へくるそうなので、

行かなくちゃならなくなっちゃいました」

　できれば行きたくないがしかたがない。

憂鬱な気分のまま伝えるが、満たちは気づかず話を続けていた。

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