Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
IH
「愛ですよ。愛!」
何も知らない涼介に対し、
言い返す必要はなかったのかもしれない。
それでも紅への気持ちをそんな言葉で片付けられることが
耐え切れず、はっきりと訂正を口にした。
「愛かー、深いなあー」
みのり同様、
涼介も家族との仲が上手くいっていないのだろうか。
時折見せる寂しげな表情に碧は首を傾げた。
「涼介君にはそういった方はいないのですか?」
「俺にはいませんね。
兄貴たちとは今更どう接したらいいかわかりませんし……」
変に血族意識が強く、
融通の利かないあの男が兄ならば仲の良い兄弟関係を築くのは
難しいのかもしれない。
「ふむ……そうですか。
まあ、男兄弟なんてものはそんなものなのかもしれませんね」
碧は学生の頃からことあるごとに突っかかってきた
雅秋の姿を思い出し妙に納得した。
「お待たせしました! 行きましょうか」
先ほどから何を探していたのかと思えば、
アメニティグッズを探していたらしい。
テレビの向かい側にある押し入れから
浴衣と一緒に置かれているアメニティグッズを手に、
すでに用意を終えていたこちらへ頭を下げてくる。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
碧がにこりと笑いかけ部屋を出ると、
後ろから涼介の弾んだ声がついてきた。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|