Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IH




「愛ですよ。愛!」


 何も知らない涼介に対し、

言い返す必要はなかったのかもしれない。

それでも紅への気持ちをそんな言葉で片付けられることが

耐え切れず、はっきりと訂正を口にした。


「愛かー、深いなあー」


 みのり同様、

涼介も家族との仲が上手くいっていないのだろうか。

時折見せる寂しげな表情に碧は首を傾げた。


「涼介君にはそういった方はいないのですか?」

「俺にはいませんね。

兄貴たちとは今更どう接したらいいかわかりませんし……」


 変に血族意識が強く、

融通の利かないあの男が兄ならば仲の良い兄弟関係を築くのは

難しいのかもしれない。


「ふむ……そうですか。

まあ、男兄弟なんてものはそんなものなのかもしれませんね」


 碧は学生の頃からことあるごとに突っかかってきた

雅秋の姿を思い出し妙に納得した。


「お待たせしました! 行きましょうか」


 先ほどから何を探していたのかと思えば、

アメニティグッズを探していたらしい。

テレビの向かい側にある押し入れから

浴衣と一緒に置かれているアメニティグッズを手に、

すでに用意を終えていたこちらへ頭を下げてくる。


「いえいえ、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」


 碧がにこりと笑いかけ部屋を出ると、

後ろから涼介の弾んだ声がついてきた。










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