Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
IIB
雪姫を放り出した桶がカラカラと音を立てて転がっていく。
みのりは、桶を取りに行こうと湯船から立ち上がる。
波打つ湯に足を取られないように足を進めると、
一緒に立ち上がった紅が更に湯を揺らした。
「お嬢さま、私がする」
「そう? お願いねって、紅、手が猪になってるけど大丈夫?
湯だったんじゃない?」
みのりは顔を紅のほうへと向け、ギョッとする。
全身をほんのりとピンクに染めた紅の手先が
髪色と同じ毛に覆われていたのだ。
ハイヒールを履いたかのような焦げ茶色の蹄を触ると、
ジワッと手のひらに熱が伝わってくる。
「温泉、気持ち良かったから……」
「……さん? いの…し…手?」
うっとりと目を細める紅の猪化した手をなでてあると、
壁の向こう側から微かに声が漏れてきた。
(やだ。ここって男湯と繋がってるのね)
女湯には自分たちしかいなかったから気づかなかったが、
自分たち以外にも客がいたらしい。
変なことは言っていないかと、一抹の不安がよぎる。
だが首を傾け、上目使いをしてくる雪姫の姿に、
脳裏を掠めた不安は一瞬で霧散した。
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