Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
IIIE
「といっても僕だけかもしれませんね。涼介君はいい子だから
お兄さんには心配かけたくないってほうですよね、きっと」
「え? い、いえ、いい子なんかじゃ!」
どちらにしろ抗うだけ無駄だと悟っただけで、
決して素直なわけではない。
力いっぱい否定すると、碧が盛大に首を横へ振る。
「いえいえ、涼介君は十分いい子ですよ」
「あ、ありがとうございます」
碧の勢いに圧され、後退りがちに礼を言う。
褒められたことは嬉しいが少しだけ胸がちくりと痛んだ。
涼介は携帯の黒々とした液晶をしばし眺め、一つ頷く。
「……決めた。今日は連絡するのやめておきます」
言うが早いか携帯をポケットへ滑り込ませる。
「いいんですか? 僕に遠慮せずに受けてもらって構いませんよ?」
気遣わしげな碧の声にいえ、とかぶりを振った。
「いいんです。俺にだって俺の自由があってもいいはずだから」
決意を込めて告げると、碧がにこりと微笑んだ。
「そうですね。
たまにはお兄さんを困らせてみるのもいいかもしれませんね」
「困ってくれる人だったらよかったんですけどね……」
碧の答えに片頬だけで笑んでみせながら、
涼介は荷物を持ち脱衣所を後にした。
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