Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IIIE




「といっても僕だけかもしれませんね。涼介君はいい子だから

お兄さんには心配かけたくないってほうですよね、きっと」

「え? い、いえ、いい子なんかじゃ!」

 どちらにしろ抗うだけ無駄だと悟っただけで、

決して素直なわけではない。

力いっぱい否定すると、碧が盛大に首を横へ振る。

「いえいえ、涼介君は十分いい子ですよ」

「あ、ありがとうございます」

 碧の勢いに圧され、後退りがちに礼を言う。

褒められたことは嬉しいが少しだけ胸がちくりと痛んだ。

涼介は携帯の黒々とした液晶をしばし眺め、一つ頷く。

「……決めた。今日は連絡するのやめておきます」

 言うが早いか携帯をポケットへ滑り込ませる。

「いいんですか? 僕に遠慮せずに受けてもらって構いませんよ?」

 気遣わしげな碧の声にいえ、とかぶりを振った。

「いいんです。俺にだって俺の自由があってもいいはずだから」

 決意を込めて告げると、碧がにこりと微笑んだ。

「そうですね。

たまにはお兄さんを困らせてみるのもいいかもしれませんね」

「困ってくれる人だったらよかったんですけどね……」

 碧の答えに片頬だけで笑んでみせながら、

涼介は荷物を持ち脱衣所を後にした。










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